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6話 悪夢のスイッチ

「こっちだと思ったんだが・・・・・・・・」


いまだ左腕から流れる血を押さえながら走っているがいまだ血はあふれてくる

しかも先ほどより激痛が走っているようにさえ思う

もしかすれば先ほどの銃弾は異族用に作りだされた呪殺式七型魔弾。通常の拳銃弾のような形をしているがその威力は異族であるならばかすっただけで死ぬ耐える危険な魔弾だ

なので人間である御影には全く効かないはずだ。もしかすると銃弾など浴びたことがないせいか脳が過剰に反応しているせいかもしれない

呪殺式は人間に撃てば多少なり変化はあり、脳にその呪殺の術式が行き何らかの反応を起こすこともある。ならば今の状態も解らないわけではない


「俺は人間だ・・・・・・」


なぜか御影はそんな当たり前のことをうわ言のように呟いていた

視界にあるものが入るまでは――――――


「――――いた!!」


ようやくの思いで見つけた時には既に黒服の奴らが辺りを囲んでいた

御影は音を立てぬように全速力で走って女?の腕をつかんでいた黒服の男の手をひねり上げ、一人の黒服の男が苦悶の声を上げた隙をついて彼女の腹部に腕を入れてそのまま黒服達から距離を取ろうとした、が――――――

それは数メートル先で終わってしまった

すでに御影達は追い詰められていることを目の当たりにする

御影の目の前には虚空の闇が覆い、あとは五百メートルほど下にある漆黒の海だけだった

後ろからは黒服達の足音が徐々に近づいてくる

御影は振り返り、背に女?を隠した


「さて、鬼ごっこはここまでだ。さっさと戻れ」


黒服の一人、リーダー格の人間がそう後ろの人物に声をかける

御影は一瞬でも飛びかかれるように腰を落としてリーダー格の男を見据えた


「この人数でやる気か?小僧」


後ろから一人の黒服の男が嘲笑の笑みでこちらを見てくる

それにつられて数人の男たちが面白ろおかしそうに笑いだす

しかしリーダー格の男は笑わずに後ろに手で指示した


「やめておけ。お前達十人がかりでもこの子はおそらく倒せまい」


「し、しかし、相手は子供ですよ?」


いきなりのことで先ほどまで笑っていた何か呆然とするように言った


「銃を使わなければ俺達よりもこの子の方が武術の面ではるかに上だ」


すでにあの気絶した奴を見たのか、と御影の頭ではそう思考を終える

リーダー格の男は後ろの数十人の黒服を収めるとこちらに一歩踏み出てきた


「さて、後ろの子を渡してもらおうか?」


「防神省がこの子を一体どうするつもりだ?」


一瞬驚いたように眉を上げて、しかし一瞬で普通の表情に戻った


「言ったはずだ、戻るだけと。それ以外に言いようがない」


戻る。その単語自体には様々な意味が含まれている。前の主語によってさまざまな意味合いがあるが普通一般人が考えるのは家に戻れとかそういう類の意味だろう。だがこいつらが言っている〝戻れ″というのはそういう意味ではない。まるですべて元に戻れというかのように・・・・


「仕方がない。こっちとしても時間が惜しいんだ。さっさと終わらせるとしよう」


そう言った瞬間、何かの光に照らし出されリーダー格の背後の建物が光った

御影はそれに気付いたと同時にすでに動きだしていた

御影の背後にいた人物をかばうようにして

その弾道は御影の背後にいる人物の顔の付け根の首の近くを通る様ないたって危ないものではなかった

しかし危ないと悟った御影が行動したことによってそれは危ないものへと昇華したのだ

彼女の顔の付け根の首の位置、つまり御影の胸の位置に相当する場所に弾丸はめり込んだのだ

御影は喉から押し上げてくる鉄のような味の物を漆黒の海の方に吐きだした

そしてそのまま銃弾の勢いで御影達は虚空の闇、漆黒の海へと投げ出されたのだった

しかし御影は自分の守りたい人物だけは最後に生き残ってほしいと願い、その人物をほとんど力の入らない腕で力いっぱい抱きしめた


「任務は失敗だ。翌日、またあらためて捜索隊を編成したうえで人工島付近の海を探索してくれ。ここら辺は波が穏やかだし、その上人工島の周りには結界がはってある。まず流れ出るということはない」


そう言ってリーダー格の男は携帯をしまって他の黒服達に撤収させた



◆◇◆◇◆◇



心地いい風が俺の身体を撫でて行く

かすかに解る頭もとのぬくもり、それは感じたことのないものだった

御影は闇夜の中で目を覚ました

空には敷き詰めるほどの星が輝いていた


「俺は――――――」


「気がついたか?」


頭の上から顔が出てきた

それは先ほどまでかぶっていたマントを剥がした素顔だった


「――――――ッ!?」


それは息をするのを忘れてしまうようなそんな美貌を持った女だった

闇夜に溶けるかのような黒髪のロングヘア、真紅の双眸が目尻をたらして御影を見ていた

あんまり真紅の瞳だったせいで解らなかったが、彼女の目は腫れていた

一体あの後どうなったんだ?と思い体を起こすと


「ぐっ――――!!」


胸の中心が焼けつくような痛みが走る。


「大丈夫か!?まだ安静にしていろ」


そうだ、俺は背から銃弾を受けてそのまま、と思いだしたところで背に手を当てる

確かに制服は穴があいているがそれ以上の穴は見受けられない

ならばそれは―――――


「一体何が起こった?」


御影は真剣な表情で聞いた

しかし彼女はそんな真剣な表情から目をそむけ、伏せると


「力を使ったんだ。私の中にいる怪物の力をな」


「どういう―――――」


意味だ、と続けようとしたがそれをさえぎるように自分の右手に焼けるような激痛が走る

何だ!?と思いそれを見た御影は呆然とする

そこには御影でも見たことがある降神契約をしたものが刻まれる紋章だった

セフィロトの樹のような形をした紋章だった

それが物語る意味はただ一つしかない


「つまり俺はお前の契約者となり、お前は俺の使者となった。そういうことか?」


つまりこいつが神か悪魔か天使、または英雄の類だろう


「ああ、端的に言えばそういうことになる」


はぁ~、胸にため込んでいた重い息を一気にはいた

それを見た彼女は何かと勘違いするように申し訳なさそうな顔をして


「すまない。いざとなれば私を殺して契約を切ってくれ」


その言葉に、何言ってんだ?と反論したかったがその前に彼女はこちらに身を乗り出してきて


「ただ一つだけ知りたいことがあるんだ!!」


「お、おう・・・・・・」


彼女のその勢いに負けながら一様、その知りたいことに関して聞く


「で、何だ?その知りたいことって?」


「鳳欧――――――鳳欧・茜についてだ」


その言葉を聞いた瞬間、背筋に悪寒が走った。

嫌悪感、憎悪感、悲哀感がすべてあの時の様にこみ上げて一瞬吐きそうになった

あの悪夢が、すべてを失ったあの出来事が今脳内に鮮明に映し出される

御影は顔から血の気が引き全身の力が抜けるようなそんな意味知れぬ感覚に襲われた


「おい、大丈夫か!!おい!!」


「ああ、大丈夫だ。問題はない」


肩で息をしながら彼女を片手で制す。あまり平気な状態ではないがこの話を早く切り上げて家に帰りたい衝動の方が大きかった


「鳳欧・茜は――――――この世にはもういない」


「――――――は?」


流石に思考処理が追い付いていなかったらしい。御影は言葉を濁さず今度は


「鳳欧・茜はもう死んだ!!それ以上言うことはない!!」


御影は膝に手をついて一気に立ち上がろうとした、が―――――

先ほどの気分の悪さからまだ立ち直っていなかった御影は平衡感覚を失っていた

まともに立っていることができなくなり御影はそのまま地面に何の受け身を取らずに倒れ込んだ

そばにいた彼女が何かを叫んでいるようにも思ったが気を失いつつあった御影にはただの一言も届かなかった

ただ御影が頭に浮かんだのは

―――――――姉さん―――――――


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