6話 魔動霊装
銀色のポニーテールをなびかせながらスコープバイザー越しに全体の状況をみる女――――カリルナ・アリシュナは後続の部隊を一瞥する
近接格闘用の1個小隊と後方支援射撃用の1個小隊、計1個中隊ほどの人数がいる
1個小隊に5人配備されるので人数は10人ほどだ
・・・・これで得体のしれないやつを相手に戦えと言うのか?
カリルナはそう考えつつ目の前にできている霧を見る
・・・・・これで奴の言っていることがあっていたら釈然としないな
カリルナは右手を上げて合図を送る
「支援射撃部隊!!対宝器ミサイル、全弾発射!!」
後続にいた支援射撃部隊の魔動霊装の方から長方形のミサイルコンテナがせり上がる
そして暴発防止口を突き破り――――30発のミサイルが霧に飛来する
それは霧に向かって一直線で進む
ミサイルは霧に当たる直前、直視では見られないような光を放ち爆発した
カリルナはスコープバイザーを暗視用に切り替えて状況をみる
「ちっ!あいつの言う通りか」
爆煙がはれ、そこにあったのはいつも通りの街並みだった
しかしそこに一つだけ場違いなものが映り込んでいた
それを視認したカリルナはさらに声を上げる
「全機。目標補足。突撃に、入れぇ――――!!」
カリルナは背にある大剣を手につかみ、両腰部にあるスラスターを吹かせて場違いなものに対して切り込んだ
カリルナの視界には中性時代の帽子をかぶりマントを着た男だった
カリルナの持っている大剣は持ち手部分まで刃に覆われているものだ
対異族用に作られた破壊兵装なのだ
もちろんそんなものを人間に振りおろせばミンチになるのは当たり前だ
しかしそれでもカリルナはそのマントを着た男めがけて本気で振り下ろした
だが男は帽子とそれによってできる影の間からそれを見つめると口端を浮かべてマントを後ろへと翻す
その右手に持っている物はカリルナの大剣とは比べ物にならない小さな短剣だった
そして二人の大きさの違う剣がぶつかり合った時、そこから半径数メートルほど地面をえぐり取った
カリルナは歯を食いしばりながらゴリ押しで短剣を押し込んで行こうとするが短剣は全くびくともしない
カリルナが短剣に気取られているとマントを着た男は開いている左手でカリルナの首を狙った
「なめるなッ!?」
カリルナは少しだけ右足を引いて構えた後、爪先から魔力で生成されたビームソードが出現する
マントを着た男もそれを見て一息飲み込んだ
カリルナは腰部のスラスターを噴射させて後方宙返り男の左腕を切りにかかったがそれよりも速く男は後方へと跳躍していた
それと同時にカリルナの足元に短剣を投げた
追い打ちをかけようとしたカリルナは一瞬ひるみ、男との距離を開けてしまう
それでもカリルナは追撃の手を休めず、両肩部に収納してあるブレードアンカーを射出した。勿論、先には魔力で生成された小さなブレードがついていた
しかし男はそれを確認せずとも態勢を低くして簡単によける
男の身長は170から180ほどだろうが魔動霊装を乗っている人間は女性であろうと2メートルは超えるのだ
よって態勢さえ低くすればブレードアンカーは避けられるのも無理はない
後方の支援射撃部隊が男を追って呪殺式八型魔弾を入れた突撃銃を撃ち、男を追跡する。
ちなみに八型は英霊と悪魔に、九型は神と天使に効く代物だ
そんな中、後方の支援射撃部隊の隊長格らしき金髪の女がカリルナの隣に降りてくる
『もう少し態勢を整えた方が良かったと思うが?』
「相手は私達を補足していた。逃げられる可能性があるから突っ込んだまでだ。むしろついてこれなかった他の奴の方が悪いだろ」
『確かに視認されていたがこうも攻撃的でなければもう少し安全に解決できたはずだが?』
カリルナは隣にいる金髪の自分と同じくらいの年の女をスコープバイザー越しに睨みつけ、そして怒鳴った
「私に指図をするな!!この檻に自ら逃げ込んだ犬が!!」
そう言うと、男が逃げて行った方へとスラスターを吹かせて滑るように加速して行った
『お前だって解っているはずだ。この檻こそが最も安全であり危険なものだと』
金髪の女はそうさびしげにつぶやいた




