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魔術と科学 使者と契約者そして監視者  作者: アンライク
第二章 正体不明の殺人鬼
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5話 立たされる位置

「これ以上広げるわけにはいかない」


ローブを着た男は右の手の平ぐらいの大きさの風の球を一気に放り投げる

それは途中で縦に長細く変形しそのまま霧へと走る

しかし、霧へと到達するや否やそのまま霧は覆い隠すようにして変形した風の球を受け止め男の方へゆっくりと進んで行く


「くそ!!」


男は再び風の球を作り出そうとしたが、その腕を後ろにいたやつにつかまれる


「誰だ!?」


後ろからつかんできた奴に対して腕を振りほどくことと裏拳をかますように腕をふるった


「お前、何しようとしてやがる!?」


そこには御影がいた


「分からないか?この霧を止めようとしているだ」


そう言った瞬間、男の両手にサッカーボールよりもはるかに大きい風の球が出来上がった


「風の大精霊よ。全てを灰燼とせしめ。我ゆく道を、開きたまえ!!」


男は言葉を言いきると同時に両手の風の球を交差するように霧に投げつける

御影は暴風の中で輝く文字を見つめていた


・・・・ルーン文字!


ルーン文字は欧州に存在するもっとも有名な魔術用の文字であり、もっとも簡単な魔術の類でもある

御影は目の前の男の考察に写った

そして御影は視線を少し下に落とし、そしてハッと気づいたように顔を上げた


・・・・まさか、この男は


御影は風夜が言っていた首飾り、そして使っている欧州で最も有名な魔術


・・・だがどうしてこんな極東の地に?この霧と何か関係があるのか?


御影がそう思案していると男がいきなり空を見上げて舌打ちをした


「ずらかるぞ」


そう言いながら男は御影を肩に軽々と抱えた


「お、おい!ちょっと待て!すぐに離せ!!」


「わかった、離してやる。飛んでいる最中にな」


そう言った瞬間、御影を抱えた男の周りに風がまとわりついた


「やぁめてぇ―――――――――――!!」


御影の絶叫がまるでドップラー効果のようにどんどん小さくなっていった



◇◆◇◆◇◆



「こちらバレッド1、目標を視認した行動に移る」


そう鋭い女の声が通信器を介して相手へと送り届けられる


『バレッドC2、了解。ご武運を』


対照的に通信器から聞こえる声はとても明るい声だった


「五体満足で帰れたら儲けもんだな」


そう呟くように鋭い女の声が聞こえた後、周りから幾つものスラスター音が響き渡る

そして一息吸い込み、呼吸を整え、周りにスラスターを吹かせながらついてくる仲間たちに


「総員!!突撃に、移れ!!」


その言葉と同時に周りが一気にスラスター音で充満した



◇◆◇◆◇◆



御影はどこかのビルの屋上に下ろされ、その隣にローブを着た男も着地する


「何だってんだよ?さっきから・・・・・」


「今君達の住んでいる人工島は危険な状況下にさらされている。俺はそれを解決しに来た使者の様なものだ」


「やっぱりお前は・・・・・・・」


「フラリス王国、王室直属魔術騎士団『ミーミルナイト』。ギルス・ガルディアだ」


・・・・・俺の思考した結果は一致していたというわけか


風夜がどこかで見た首飾りとはフラリスの魔術騎士団だけがつけている一種の部隊章みたいなものだ。その首飾りには加護もかかっていて並みの魔術ではこの加護は打ち破れないと記録で見たことがある

だが御影は引っ掛かることを言われ眉間にしわを寄せた


「危険な状況ってどういうことだ?」


「もうすぐだ。見れば理解するだろう。お前でもな」


「何のことだよ!?」


しかしその言葉は辺りの轟音によってかき消された

なんだよ、と不機嫌そうに轟音の発生源を探し、辺りを見渡すと


「ほら、来た」


とギルスは少し楽しげに、しかし目は鬱陶しそうなものを見るような目をしながら御影に聞こえる声量で言った


「霊装機甲部隊!?」


何で!?と思い御影は上空をもの凄い速さで通過して行くのを目でしか追えなかった


・・・・魔動霊装の出撃時にはこっちにも連絡が来るはず


だが目の前の光景はその言葉を裏切る形となっている

しかも周りに他の魔動霊装がいないのを見ると独断で出撃してきたわけではなさそうだ


「これが、この人工島を危険な状況下においてある原因だ」


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