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魔術と科学 使者と契約者そして監視者  作者: アンライク
第二章 正体不明の殺人鬼
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3話 作戦会議

御影が学校に着くと電光掲示場の前に人だかりができていた


「何だあれ?」


「あれはだな。今日の朝でやっていたニュースのことだろう」


「うわぁあ!!」


いきなり後ろから声が聞こえ、仰け反りながら後ろの人物を確認した


「よっ!」


と御影の後ろにいた戸浦はさわやか顔でこっちに手を上げてきた

これで顔がかっこよく、しかも女子にだったら影響はあったかも知れんが戸浦では・・・・・


「朝から変にさわやかな顔を向けるな。気持ちワリー」


「お前!それは友としてどうなんだ!?」


「今日から俺とおまえは赤の他人だ。あまり馴れ馴れしくしゃべらないでくれ」


「ひぃでー・・・・・」


戸浦が本気で泣きそうな顔をするが特に気にする様子もなく御影は電光掲示板へと向かう

朝のニュースでやってたとすればあの惨殺死体が発見された事件か・・・・・・

だがあれは高等区のはず、と顎に手を与えながら考えると戸浦が指で御影の肩を叩いてきた


「何だ?戸浦君」


「マジでやめて。その他人行儀な呼び方。そろそろ俺の心折れて廃人化するよ?」


「すればいいだろう」


そう言われた戸浦は地面に倒れながら身体の周りを涙の水たまりで覆っていた


・・・どこにそれだけの涙があるんだ?


と御影は怪訝そうに見ながらも電光掲示板を見た


・・・時刻は7時半ごろか。そりゃニュースには流れないよな


7時半ごろなら部活動の朝練など行っている所はもう登校している時間帯だ

だが、それに会社へ勤務する人だってそのぐらいには出るだろう

じゃあ犯人は何故そんな時間帯に行動を起こした?

御影は深い思考の海に飲み込まれかかった時、復活していた戸浦が電光掲示板の方を顎でさしながら答える


「この時間帯は一部の学制区では霧が発生していたんだ」


「・・・・霧?」


「ああ、ラジエーターを冷やすためにな」


「成程・・・・ってなんでお前は俺の考えていることが解った?」


「以心伝心!」


戸浦はウインクをしながら親指を上げてこっちを向いてきた

そして御影は反射的に戸浦の顔面を穿つ覚悟で殴った


「ふげらっ!?」


戸浦は奇妙な声を上げながら校門まで飛んで行った


「しまった。まちがえてつい・・・・・・」


まるで感情のこもっていない棒読みでそう言った

自分には悪気はないぞ?悪いのは全部戸浦だ、と責任をなすりつけ電光掲示板を視界の端で見た


・・・・・呼びだされた理由が解ったな


その時、御影の後ろを数十人の生徒たちが歩いて行った

いきなり大勢の生徒が一斉に校門まで来たため電光掲示板を見ていた生徒たちは皆そっちの方を向いた

戸浦はその生徒たちに絶賛踏まれ中である。そしてそれを誰も気に留めようとしない。哀れな、戸浦よ

ここに御影の思考を読む人物がいたならばその元凶はあんただろう!?と突っ込まれていただろう

そんな生徒群の中一番前に出て校門を背に立つ人物がいた

女性にしては長身であるブロンドヘアをポニーテールにしたが毛先の方はあまり整っていない少し乱暴そうに見える人物は


「私は第3学制区風紀委員長。神崎・碧だ。これより君達にはこの学制区内で起こった事件の調査を手伝ってもらう」


神崎は大声で生徒群に向かう

この人工島は学制区だけ学生の警察の様なものがある

それが風紀委員だ

他の普通校の風紀委員とは違いこのように学制区内で起きた事件の調査を手伝ったり催し物の時などの警備も彼らの役目である


・・・しかしここまで生徒たちを呼ぶとはかなり危険な状態なんだな


御影は目の前にいる生徒群を見渡す


・・・まあ、相手は何も情報のない殺人鬼だからな


御影は嘆息のような息を吐きつつ携帯が震えているのを確認した

ポケットからスマートフォンを出して電光掲示板の裏側へと回った

通知用のディスプレイにはエリラと書いてあった

御影はすぐに通話を押して耳に当てた

しかし彼女の声はすぐには聞こえず数秒してから声が聞こえた

これは通常回線から秘匿回線に代わる時のタイムラグの様なものだ

御影の仕事柄、通常回線で傍受されればかなり厄介だからだ


「どうした。エリラ?」


「緊急招集。時間が早まったわ」


「了解」


そう言って通話を切って携帯をポケットにしまい走りだした



◆◇◆◇◆◇



御影は高等区に位置するいびつなビルに入った

中に入ると目の前にこのビルの模型があった

真ん中に支柱のように高いビルがひとつありその左右と後方に支えるようにしてビルが三つ立ってつながっている、そんなビルだ

御影はその横を通り広いロビーを一気に駆け抜ける

左側には応接用の机とソファーがいくつかあり右側には受付に二人の女性が座っていた

御影は受付の女性二人の動きを見てまだ何も始まっていないことを確認した

もし何らかの作戦が始まっていたらあそこには人はいないだろう

そして御影はエレベーターで目的地へと向かった


「遅れました」


「別にかまわん。まだ会議は始まっていないからな」


前方にある大型ディスプレイの左端にいる目つきの鋭い厳つい男が御影にそう言った

御影はその言葉を受けて開いている席に座った

周りにはここの会社の制服を着た人たちが座っている

赤黒い色を基調として黒色の線が入っている制服だ


「遅かったな。デートでもキャンセルしてたか?」


目の前の席の男が振り返ってそう聞いてきた


「残念ながら彼女はいないしこれから作るつもりはない。さっさと前向いてろ」


手で追い払いながら肘をついた

御影の目の前に座っている茶髪に翡翠色の目を持つ男は朝角(あさかど)風夜(ふうや)と言う

職場で比較的歳が近い人物で御影とよくつるんでいたりする

御影は数分待っていると先ほどの目つきの鋭い厳つい男が立ちあがった


「これより連続惨殺事件についての作戦会議を行う。これは人工島特別治安局と我ら民間保安局の合同捜査となる。くれぐれも問題は起こすなよ」


と厳つい男はそう釘をさしておく

そう、ここは天垣が作りだした民間保安局だった

人工島特別治安局がやるようなことではない小さなことを処理するのが民間保安局の仕事だ

だが、天垣がそれだけの目的のために作ったとは考えにくい

なにせあんな性格だが何を考えているかさっぱり分からない


・・・・掴みづらい男だったな、会ったときから


御影は目の前で厳つい男がディスプレイに表示している情報を伝えつつ今後の作戦の方針を固めていく


「今回に関してはまだ犯人の姿形すらつかめていない。よってまずはそれをどうにかしなければならない」


厳つい男は声を張り上げてそう会議室に響き渡るように言う


「今回の任務は何らかの証言があるわけでもなく、証拠もない。魔術師が絡んでいる可能性も考慮しろ、と言うか魔術師が絡んでいる方が可能性は高い。心してかかれ!!」


その会議室内が了解、と言う言葉で響き渡り全員敬礼した


「鳳欧、朝角。お前たちは残れ。別任務をやる」


「うへぇ~」


「嫌そうな顔をするな、風夜。お前のせいで変なとばっちりをくらうのは俺だ」


そう言って皆が出て行くのを確認した後、風夜と共に厳つい男の元へと行った



◆◇◆◇◆◇



「何でしょうか?摩霧作戦指揮監督」


御影は厳つい男―――――摩霧(まぎり)(くれない)の前に風夜とともにいた


「まあ、そう畏まるな。二人だけと言うのに空気が窮屈すぎる」


そう言って手をひらひらと動かした

これは彼がゆっくりしてもいい時の合図で御影と風夜は近くにあったパイプいすを出して座った


「それで別任務とは?」


風夜が頭の後ろで手を組んでそう言った


「どうやらこの人工島に不法侵入者が発見された。先日取られた映像だ」


そう言って小型の空中投影用端末をこっちに向けてきた

そこにはどこかの監視カメラから取られた映像があり、御影や風夜でさえもその映像を見て一目で不法侵入者と言うのが解った


「このローブを着た男か・・・・・」


「ああ、顔は隠しているせいか。きっちりとした判断はできないが人工島のデータベースに照らし合わせても一つもヒットしなかった」


人工島のデータベースには優秀な人工知能(AI)が全ての情報を管理しておりその中にはこの人工島に訪れた数億と言う人間の情報が詰まっている

しかしその数億の情報の中からヒットしないとなるとかなり怪しいものだろう


「でもよくこのローブかぶって不審に思われないな?」


「おそらく気配遮断系の魔術か結界系の魔術を使っているのだろう。この映像自体も元々は荒くて見れたものじゃなかったがどうにかここまで見れるようにしたんだ。ま、ここまで言ったらわかるな?」


「この男をひっとらえて来いっていうことですか?」


「そう言うことだ。こいつは魔術師である可能性が高いから人工島特別治安局もこっちに仕事をよこしたんだろうな」


「ははぁーん。成程ね。流石いるだけで役立たずな治安局だ」


と風夜は悪そうな笑みを浮かべている


「もし聞かれていたら名誉棄損ものだな」


御影はため息を吐きながらその言葉を紡ぐ

しかし風夜の言い分も全てを否定できるわけじゃない

事実、人間以外の種族に対しては人工島特別治安局は強力な武器を持っているが人間に対しての武器は以前から全く変わっていない

もっとも人間を殺して止めると言う概念自体日本はあまり持たないため一撃必殺の様な武器はない

なのでそれは魔術師たる人間に対しては有効な武器をもてないと言うことに起因する

よって魔術師相手に関しては多数の魔術師や異能者で構成された民間保安局が受け持っている。こういった理由もあるのでこの会社は保っていると言ってもいい


「ほら、お前たちもこれを持って行け」


と渡されたのは通信型のHMDだった


「お前たちのHМDにはさっきの男の情報も入れてある。任務を速やかに遂行しろ。もしかするとそいつが捕まることによって今回の事件が大きく傾く可能性もある」


「「了解!!」」


そう言って敬礼した


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