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4話  バシレウス

「で、結局何だったの?」


弥生がメロンソーダをストローですすりながら聞いてきた


「降神しろっていう催促だったよ」


「随分と大変そうだな。お前も」


「そう言うお前はガウェインと一緒じゃなかったんだな?」


「ああ、あいつは笑顔でちょっと街見回ってくるわ!とか言って平気でどっかに消えた」


「それって使者として問題ないの?」


亜希奈がジト目になりながらそう聞く


「まあ、誰かに襲われる心配もないしあいつには街を見回っていろいろと知ってから俺と街に出かけて話をしようって決めてんだ。わからないことなんかも自分で調べてそれでもわからなかったら俺に聞けとも言ってる」


「万が一襲われても知らないわよ?まあ、あたしには関係ないけど」


「そう言うお前はどうするんだよ?やっぱヴァルキュリアシステムか?」


「うーん。それもできたらいいけど、三年になったら真剣に考えるわ」


亜希奈はてに顎をのせながら天井を見て考える


「就職だったら遅くないか?別にヴァルキュリアシステムの適用は使者を持っていようが関係ないんだから」


「そうなんだけど・・・・・・」


そう言いつつ亜希奈は弥生の方を向く


「ん?どうしたかしたの?亜希奈ちゃん」


まるで自分は関係ないかの如くメロンソーダをすすっていた弥生が急に質問され驚いた表情をする


「弥生。あんた一体誰とヴァルキュリアシステム構築する気?」


その瞬間、ストローを介して一気に吐かれた空気がそのままメロンソーダの中に入り内側から泡立たせた


「な、なななな何言ってるの!?亜希奈ちゃん」


だれがどう見ても動揺しているようにしか見えないがそれでも弥生は平静を保とうとする

まあ、ヴァルキュリアシステムというのは力の強化以外で見ればただの側室のようなものだ

遠くにいればいるほど繋がりは薄くなり、力の強化は限られ失っていく。

そのため、より近くにはいるが決して正妻とかではない。そのことから高校生の御影たちの共通認識としては側室というのが妥当だったのだ


「まあ、何にせよ。さっさと降神契約してしまえばすべては丸く収まるわけだ」


「お前は俺に教師に屈しろと言うのか?」


「それ以外、どうしろって?退学でもする?」


「それができたら苦労しねーよ。でも俺の養親がゆるさねーよ」


「それはもう・・・・やっぱり契約するしかないんじゃないかな」


と弥生が控えめそうに呟いた

その後、四人でかなり食べた挙句、亜希奈と戸浦は財布が空っぽ寸前であり弥生が「払おうか?」と言った視線でこっちを向いてきたがさすがに女子に払わせるのは気がひけたので御影が全額支払ったのだ


「じゃあな、また明日」


そう言って三人とは正反対の方へと御影は歩を進める

御影はそのままこの広大な人工島を簡単に行き来するモノレールに乗り込んだ



◆◇◆◇◆◇



先ほどまで弥生たちといた場所は学校がたくさんある学制区と呼ばれる場所で御影たちが通っている学制区は数多あるその学制区の中では最も大きい場所である。そのため学校の周りにはゲーセンやショッピングモールなどが多く点在している。

そして今御影が向かおうとしているのはこの人工島でも中央部に位置する所〝中枢区″に行こうとしている。

中枢区にはこの人工島の大手企業や異族の研究など行われている。

そして周りを囲むようにして高等区が設置されている。財閥やお金持ちなんかが集まる場所で中枢区と高等区は一般人があまり入る場所ではないとされている

なので高等区の近くの駅を通るときにはほとんどモノレールには人がいなくなってしまう

御影は欠伸をしながらドアの窓から外の景色を見る

外は黄昏色に包まれ、大きな高層ビルの間から時折沈んでいく夕日が垣間見える

御影は中枢区前の駅で降りてすぐに目的の場所に歩を向ける

面倒なことは先にすましてしまった方が良い、と思いながらスマートフォンをいじると


「捕獲対象使者。なんだこりゃ」


それは時折あることで、契約した異能者が死亡または契約を破棄すると異能者から魔力を受け取り計異物に還元するそれがこの世界のシステムとなっている。

そして聖遺物に戻った使者はその前の記憶をすべて忘れ、前の異能者との接点の一切を断ち切られるのだ。勿論絆やそれまで会得した力なんかも。そして再びそれ相応の人物に召喚されるのを待つという仕組みでもある。

ちなみに聖遺代替品というのはここの機関からの情報をもとに聖遺物に似たものを作り出している

本物の神の力を掌握した者など一人としていない。そんな強大な力を内に秘めることなど人間であれ、異族にも不可能であるからだ。なので一つの聖遺物を何十人と分けて使うため作り出されたのだ。そして時たま、前の異能者との仲がよければその記憶を忘れるのが嫌で魔力を受け取らず、そのまま現実世界に居続けることや悪しきことを考え異能者を殺して世界で生き続けることなどもある

それらの捕獲または捕獲後の凍結その他に管理と言った仕事をするところを防神省対神管理局である


「俺にはなんも関係ない話しか・・・・・・」


スマートフォンの電源を切り、御影は全面ガラス張りのビルの前まで来た

ここが御影の到着地点である。高校生が来るにしてはいささか不相応な場所だが御影は気にすることなく自動扉をくぐり中に入った

そして受付に名前とここで発行されたキーパスを提示してそのまま奥に四基ほど稼働しているエレベーターに乗った

そしてガラス張りのエレベーターから景色を見ながら目的地に着くと


「やあ!!」


「なんで俺が来てることが解るんだよ?」


「いやー、だってここに来る人なんてたかが知れてるし、この時間に来るとすれば君ぐらいだろうと・・・・・・・」


「その無駄な発想をもっと霊具に注いだらどうですか?」


俺は右手にはめてあったガントレットを外して渡した

御影がガントレットを渡したのはこの魔術霊具の大手産業であるライアンクリエイター社の社長にして流体因果理論という理論を書きあげた天才社長。弱冠二十歳でこの会社を設立した天垣(あまがき)司朗(しろう)である


「性能は?」


「いい方だと思いますけどアカシックレコードを元とした虚空を作り上げる魔術霊具。でも犯罪に悪用されやすい点。あまり商品にはならないし、いろいろと問題が摘発される要素が大きい」


「そうか・・・さて、次は一体何を作ろうかな・・・・・・」


御影は天垣の後ろをついて行き社長室まで来た

その後天垣が入った後に続いて御影も入り豪華そうにL字に連ねているソファーに腰を下ろした。その時に置く部屋からお盆の上にお茶を乗せてやってきたスーツを着た女性が御影の隣につくとお茶を置いてそのまま一礼し、すぐに立ち去った


「あれが貴方の使者ですか?」


「うん。どうやら僕も変わり種の用でね・・・・・・」


はは、と天垣は笑いながら元々、仕事用の席に置いてあった少しぬるめのコーヒーをすすった

たびたびこの会社には出入りしていたが天垣の使者を見るのはこれが初めてだ

その時、元々カップの端についていたコーヒーの一滴が、彼がすすった瞬間に垂れ落ちたのだ


「おおっと・・・・」


彼は対して何もしなかったが、コーヒーのしずくは一瞬でその場に停止した。

普通の人間が見れば驚くだろうが御影は見慣れているせいで驚きも感じない


「それが流体因果理論か?」


「まあ、そういうことだね」


因果性。この言葉は御影でも知っており何かある物事を生み出したり引き起こしたりすると言う結びつきのことであるが、この社長はその結びつきは流体によって補われているとされているという理論を作り出したのだ。簡単に言ってしまえばこれが魔術の原点であり根源でもある。もう自然の摂理だけで因果性が行われることはないというのだ。全て自然に感じる者はどこかしらに魔術によって流体に干渉すると言われてさえいる

この世界の流体は気体、液体そして魔力からなっている

しかしそれはあくまで術式によって編みだされた魔術でありこの世界に魔法というものはない。簡単に言ってしまえば魔術というものはこの世界に存在するものによって構築されている。しかし魔法は違う、魔法はこの世界以外つまり過去や未来、地獄や天国さえ干渉してしまうようなそんな力のことを言う。簡単に言えば魔術は現在あるものを簡単に生み出すためのもの。魔法はそれ以外のものと考えてほしい


「まあ、この論文が成功したおかげで僕はここまで大きな会社を設立することができたんだしね」


「流石、バシレウスにはふさわしい未来だったんじゃないですか?」


御影はお茶をすすりながらそう言った

天垣はハハハ、と苦笑を浮かべていた

そう、この男は御影の所属している高校のOBなのである

しかも学園内で行われる降神魔術対抗戦で常に負けなしの王者に君臨していた

ちなみにバシレウスとは王者の意味のことである

その上成績も上位でこのように見た目だけは人あたりが良い性格なのでそりゃ女にはもてて苦労がしたことがないらしい

しかし今も独り身というのはどういうことなのだろうか?と不思議にさえ思う


「そう言えば結婚はしないんですね?貴方は」


「ハハ、僕にはまだ早すぎるよ。それに目処はもうついている」


「は、どういう・・・・・・」

とメールが来たようなので天垣はすぐに仕事机に戻る

その視界の端に御影は奇妙なものを見つけた

それは先ほどの天垣の使者である女性の頬が赤く染まってそれを隠すように手を添えていた


「まさか・・・・!!」


「うん。そのまさかだよ」


「無茶な!条例を忘れたんですか!?使者と恋愛をしてはいけないということを!!」


「分かっているよ。それにあれは肉体的接触がなければ可能だし、それによって流入する魔力を抑えればいい。それにあれはほとんどがふしだらな学生にあてられたものだよ?」


「それでも使者と恋愛して精神崩壊になる人だっている。それだけならまだいいもし一歩間違えれば―――――――!!」


「分かっているよ」


しかし彼は優しくもしっかりとした声でそう言った


「それも承知の上だ。だから僕達は試すのさ」


「試す?・・・・・・」


その言葉に御影は頭の中に疑問だらけとなってしまいただ言葉を復唱するかのように問い返していた


「使者と恋愛ができるように力を抑制する魔術霊具をね・・・・・・」


そう言うと天垣のそばに女の使者が行って二人で仲睦ましそうにしていた

御影はその場にいると邪魔になりそうなうえ、いれば目も当てられないような状況になり砂糖を吐きそうだったので早々に立ち去った


「あ、妹のことをよろしくね」


「はいはい」


俺は社長室のドアを開けて出て行った

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