2話 変わった日常風景
御影はノックしてから数分間ロキの部屋前にいたが反応が全くない
「何があったんだ?」
御影が三度目のノックをするがもちろん反応はない
御影は不審に思いながらロキの部屋のドアノブをひねった
「入るぞ・・・・」
開いているドアを押しながら御影は中に入った
中はまだ殺風景でものがあまりなかった
・・・当たり前か、あいつは何も持たずに逃げてきたんだからな
そんなつい最近のことを随分昔のことのように思い出しながらロキのベッドに向かう
ロキは今だに健やかな顔をしながら寝ている
「随分とよく眠っているようで・・・・・」
ここ最近、ロキの眠りが深くなったようにさえ思った
多分、今まではいろいろなことがありすぎて安らかに眠る時間が少なかったせいだろう
今でも監視と言うものはついているがそれでも命が狙われている時より随分とましになったはずだ
だがそれで遅刻すると言うのはいささかどうかと思うので最近夕奈かときたま御影が起こしに行っている
そして今日は御影の番だったらしい
いくら眠りが深くなったとはいえ御影がノックしてドアを開けるころには起きるはずなのだが
「今日はとうとう俺がベッドに来ても起きなかったか・・・・・」
御影は腰に手をつきながらロキの肩をゆすった
「さっさと起きろ。朝だぞ」
「んぅっ・・・・?」
ロキは薄目を開けながらこちらを向く
ようやく起きてくれたと思い、御影はロキに声をかける
「ようやく起きたか・・・・・」
「何でいるんだ?」
まだ寝ぼけた眼差しで御影をいぶかしげに見る
「時計見ろ。さっさと起きて支度する時間だぞ」
そう言って御影は顎でロキにデジタルの置時計を示す
ロキも寝転がりながらその時計を見ると
「もうこんな時間!?」
「支度する時間だって言ったは―――――」
御影はそこで言葉を止めてしまった
何故ならロキの下半身の肌率が高かったからだ
すべすべで瑞々しそうな太ももがあられもなく露出している
しかも昨日は少し暑かったのか太ももには数滴の汗が着いていてそれが余計にロキを妖艶に見せてしまう
男子にも女子にも興味がない御影にとってもその光景は生唾を飲むに匹敵する光景だった
・・・・俺って最近女子に興味でも出てきたのか?
小学生じゃあるまいし、と顔を振ってその思考をとばす
そんな光景を見ているロキはまるで遠ざかるようにベッドの端に移動した
その遠ざかって御影を見ているロキの態勢に御影は何も含んでいない口から何かを吹き出しそうになった
・・・・M字開脚!?
ロキは浅く両ひざを立ててその脚の隙間からロキの穿いているピンク色の刺繍に凝った逆三角状のものが見え、それがあるものを強調させていた。あるものとは察してくれ!!
ロキは御影の行動の一つ一つに不審に思い、御影の視線を追って行くと
「「あっ」」
二人して声を上げた
御影は汗をだらだらと流し、ロキは顔を真っ赤にさせながら肩を震わせていた
「俺のせいじゃない!おまえが勝手に――――」
「さっさと出て行けー!!」
既視感を覚えるその台詞を聞きながら御影は顔面にロキの強烈なパンチをくらった
◆◇◆◇◆◇
「影兄ってわざとやってる?」
「誰が痛い目見ながら他人のパンツなんか見るか・・・・・」
御影は赤くなった鼻をさすりながら朝食を食べている
由利やメルヴィアもいるせいか普段より冷ややかな目がさらに強くなっている気がする
・・・別にいつもこんなことをやってるわけじゃないからな!?今日はたまたまだ
誰に言い訳しているんだ、と思いながらご飯をちびちびと食べて行く
「私は先に行くからちゃんと来るんだぞ」
そう言って由利は先に朝食を食べ終わり食器を洗い場まで持って行ってそのまま椅子の近くに置いてあった学生鞄を持って出て行った
・・・・なんで今俺を見て言ったんだ?別にさぼるようなことは・・・・時々あるけど俺はそこまで悪い子ではないぞ?
ちなみに由利が監視せずに大丈夫な理由は俺の身体に印が刻みこまれたせいだ
どうやら天垣経由で夕凪局長と言う人が来て俺が怪我で寝ている間に勝手に刻み込んだらしい
どうやらはぐれ神との契約による魔力変動や質の変化を直で確認したいから刻み込んだと聞いた。そしてその中には緊急時には由利の方へと連絡が行くようになっているらしい。何と便利な術式だ。それはメルヴィアの方も同じらしく、一日中周りに監視が着くと言うことはないらしい。こういうところに時代の変化が感じるがメルヴィアは今朝の一件や今まで起きたロキのとの不幸な出来事(裸などを見てしまったこと)を知ってしまい、御影が女子に対していらぬことをしないように身近にいるようにしたらしい
・・・これでは時代の変化なんて関係ないな
「あ、そう言えば、言うの忘れてたけどメルちゃんと一緒のクラスになったから」
同じ学年にはなれずとも知り合いが近くにいるように監視員をつける流石、防神省だな
「―――――ってメルちゃんと言うのはマキナのことか?」
流石に許可も取っていないのに名前で呼ぶのはなれなれしい上失礼かと思い御影は今までファミリーネーム―――――日本では姓や名字のこと―――――を呼んでいる
だが目の前にいる天垣の妹はいきなり初対面の相手にニックネームをつけ始めた
さすが天垣の妹と言うべきか、だが遺伝子で性格は必ず決まらないとも聞いたことがあるがこれを見る限り遺伝子で性格は決まっていそうに感じる
特にお気楽そうな感じが・・・・・
「俺達も行かないと遅刻するぞ」
そう言って御影は立ち上がり、自室へと行った
◆◇◆◇◆◇
御影が自室で用意をしていると備え付けの埋め込み式ワークステーション――――――パソコンよりも性能のいいパソコン――――――がメールを受信していた
「――――ったく朝は時間がないってのに」
実を言うと昨日用意するのを忘れていて御影だけ一人遅れているのだ
なのでこういったメールは正直腹が立つがこれで仕事場のメールだったら目も当てられない大失敗を犯すこととなるだろう
御影はディスプレイをタッチしてそのメールを開いた
そして御影はそのメールを見てしかめっ面を浮かべた
それは仕事場にあるメインフレームから全員に送られる緊急徴集時のメールだった
「学校終わってからか。エリラはこのこと知ってるだろうしあいつと直接行けばいいか」
そう言いながら御影はカバンを持って部屋を出た




