1話 霧の夜
その日は霧が濃く辺りは街灯だけがあわく辺りを照らし出していた
そしてそんな中を一人の女性は歩いていた
スーツをきっちりと着こなし眼鏡をかけたいかにも仕事ができそうな女性だった
女性は左側を建物伝いに歩いて行く
この霧の中ではあまりむやみに歩けば道路に出てもおかしくはないのだから当然と言えば当然である
この人工島では霧自体不思議なことではない
人工島を支えるために魔力のほかに電力が必要になり電力を作るラジエーターを冷やすため海水につける
もちろん塩分などで劣化しないように魔術を施されている
人工島では電力を作るタービンは常に動きっぱなしなのでラジエーターで冷やさなければいずれは壊れる
そしてラジエーターも一瞬で冷却しなければならないので常温から一気に高熱へと変化する、その熱による変形を止めるために海水につけるのだ
そしてそう言った時に一気に海水が温められ蒸気が吹きあがり人工島を覆うような霧が出来上がるのだ
しかし今日の霧はそんな人工島特有の霧にしては濃かった
女性はそのことを不審に思いながら歩いていると目の前から影がこちらに歩いていた
その人物は中世時代の帽子をかぶりマントを着た人物だった
女性は訝しげにその人物を視界の端で見ながら横を通り過ぎた
しかし次に女性が見たのは赤い鮮血がたまる地面だった
そしてそのまま女性は息絶えた
◆◇◆◇◆◇
『では続いてのニュースです。今日未明、高等区にて一人の女性の刺殺体が発見されました。人工島特別治安局の調査によると遺体の子宮と膀胱と取り除かれた状態で発見されたようです』
「朝から気の滅入るニュースやってるな」
御影は寝癖がつきまくっている頭を掻きながらテレビを見る
「全く、これで何件目だ?この事件って」
「んー?多分2、3件目じゃないかな?」
夕奈は台所で考えながらそんなことを言う
「もうすぐでゴールデンウィークだって言うのにこれじゃ誰も出歩かないぞ?」
「だね。どうにかしてほしいけど。今だに犯人像も解らなんでしょ?」
「そう言えばそんなこと言ってたな。なにせ全部犯行を行っている時間帯は未明ぐらいだからな起きてなくて当然だよ」
「それじゃどうしようもないね。あ、影兄。ロキちゃん呼んできて」
「了解」
そう言って御影はロキの部屋へと向かった
意外に広いこのマンションの一室は御影や夕奈、そして司朗、ロキが使っても部屋が余っている
そもそも御影達がいる階層の半分は自分たちの一室であるのでそれだけの広さがあってもおかしくはない
ダイニングを出た御影はまっすぐ行って女性側のロビーに当たる部分に入る
もちろんダイニングを出て右側には男性側のロビーもあるが家にいるのは御影だけなのでほとんど使っていないに等しい
御影はロビーに入りそのままロキの部屋をノックした
しかし出てきたのはロキの向かいの部屋の住人で
「おはようございます。鳳欧先輩」
メルヴィアだった
メルヴィアもこの部屋に一緒にすむことになったのだ
もちろん監視と言う意味ではこれほどの適所はないだろう
天垣のほうも夕凪と言う研究者に頼まれ二人とも住まわせているのだ
「朝から大変だな。鳳欧」
そんなことを思っているとロキの隣の部屋から由利も出てきた
二人ともちゃんと制服を着こなし、いつでも学園へといける準備をしている
もちろん傍らにはキーボードケースと竹刀袋を忘れていない
・・・あれらさえなければグラマラスなお姉さんと・・・・スレンダーな少女で通るのに。まあ俺の意見ではないが、
「鳳欧先輩。今なにか失礼なことを考えませんでしたか?」
「イヤ、カンガエテナイヨ?」
なぜか外国人が無理に日本語をしゃべったような口調になってしまった
しかしメルヴィアはそれが気に入らなかったのかキーボードケースを開けようとし、御影はそれを大急ぎで止めた
「わー、やめろ!別に何も考えてない!ホントに!」
「本当ですか?」
疑惑の視線を御影は全身で受け止めながら二度ほど頷く
「早くしなければ学校に送れるぞ」
そう言って由利は御影達のやり取りをスルーした
・・・案外スルースキルが高かったりして
メルヴィアは由利の後について行きリビングへと向かった
「さて、ロキを起こして俺も着替えるか」
今だジャージにシャツだけの姿を見て苦笑しながらもロキの部屋をもう一度ノックした




