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37話 魔術と科学 使者と契約者そして監視者

「まさか、入学してひと月もたたないうちに学校を休むことになろうとは」


「お前があんなことをするからだろう」


御影はモノレールに乗りながら外を眺めため息交じりに言った言葉をロキに反論されてしまった

あの一件以来、御影はロキに頭が上がらなくなった

自分を無視して解決させようとしたこと、勝手に血を呑んで神霊化したこと、そして


キスしたことも


あれをキスと言うのか定かではないが彼女の中でそう決まったらしい

退院後、そのことを夕奈に話され御影はあの家では一番弱い立場となってしまった


・・・くそ、女同士で意気投合しやがって


御影はそう考えると家に帰るのがとても苦痛に思えてしまった

一層、戸浦の家でもお邪魔して遅れた勉強でもするか、とさえ思ってしまう

5月には全学校共通の中間テストが待ち受けている

だが、御影は入院で4月の半分くらいは休んでしまっている

去年、全くテスト勉強をせずに痛い目を見た

簡単に言えば、普通の学校に通うよりきつかった

何せ休日も学校に行かなければならない地獄が待っていたからだ


「はぁ・・・・・」


「相変わらず辛気臭い顔をするな」


既視感を感じながら苦笑する

俺はこの日常を守れたんだな。少し変わって、居心地のいいこの日常を

御影は学園前の駅についたのでロキと共に降りて校門に向かった


「よっ、親友!!」


と言って御影は後ろから肩を組んできた張本人を睨んだ


「戸浦。朝から元気だな」


「お前の方こそ元気がなさすぎだ」


戸浦はそう言いながらこっちに満面の笑みを浮かべた

そこで気付いた彼の傍らにもう一人誰かがいたことを

戸浦もそれに気づいたらしくその人物に目を向ける


「こいつは天城(あまぎ)優斗(ゆうと)


天城は戸浦が紹介してから一礼する

見ると優男のようだが見た目は整った顔立ちをしていて茶色の髪と優しげな青色の眼が優しさを醸し出している

そして来ている制服は無能者のもので胸の校章には一般科のシルエットが入っている


「お前にこんな友達がいたんだな・・・・・」


「ちょっと待て!それはどういう意味だ!?」


「まんまの意味だが?」


そう言いながら戸浦を外しつつ御影は改めて自己紹介する


「鳳欧・御影だ。こっち俺の使者のロキだ。使者ともどもよろしく」


彼は御影とロキを交互に一瞥した後に人懐っこそうな笑みを浮かべた


「こちらこそよろしく」


そう言って四人で校門に向かうと


「やけに人だかりができてないか?」


戸浦が目の上に手を当ててみているがそんなもので見えるはずがない


「ああ、今日って何か会ったか?」


「さあ?もしかすると何か事件でもあったのかもしれないね・・・・・」


天城の言葉に御影はうっ、と唸るような表情を浮かべてしまった

学制区の全ての学校は学制区内で起きた事件を学生に知らせるように電光掲示板などが備え付けられ事件が起こった時など時折人だかりができるのだ

そして学制区以外で大規模な事件が起こった場合も知らされるのだ。

それは御影達が戦闘を行ったことも


「でも、電光掲示板よりも少し前の位置にあるぞ?」


戸浦のその言葉に少し安堵をおぼえながらさらに疑問がわく


「そんなところに何かあったか?」


「大抵は舗装された道と回りは草原風の庭だけのはずです」


優斗がそう答える


「だったら一体・・・・・」


そう言って近づくと今度はその人だかりがこちらに向けて割れた

それに御影達は首をかしげながらそこにいた二人の人物に御影とロキは目を見開いた

ポニーテールを白いリボンでくくっている少女は自分たちよりも一つ上の学年を示すリボンの色をしていた

その少女は学生鞄と竹刀袋を手にしていた

彼女の傍らには銀髪の一部を後ろでまとめ、髪の色とは正反対の黒色のリボンでくくっている少女がいた

その少女は神約学園の中等部の制服を着ていた


「おはようございます」


銀髪少女が一礼して挨拶をしてきた


「おい、何だよこれ?」


戸浦が肘で御影をつつきながら聞いてくる


「しらねーよ。俺だって今困惑しているんだから」


「詳しいことはあとで話す」


そう言って由利はそのまま学園の方へと歩いて行った


「では私も、失礼します」


そう言って彼女は高等部の校舎の右側に位置する中等部の校舎へ向かった

御影はなんだか今後も嫌な予感がすると思いため息を吐くと予鈴のチャイムが鳴った


「やべっ!おまえら遅刻するぞ!」


「じゃ、お先に」


そう言って戸浦と天城は校舎まで全力疾走した


「俺らも行くか」


「だな・・・・」


そう御影とロキは目でコンタクトをとって走った



◆◇◆◇◆◇



昼休み

御影とロキは由利に呼び出され屋上に来ていた

御影は天を仰ぐように長椅子を一人で占拠して座っていた

何故ならここまで来るのにひどく体力を消耗したからだ

まずはじめに今日転校してきた美人の上級生と言う由利がいきなり二年の御影のクラスに来るものだからそれによって男どもは騒ぎたて、そしてその転校生の人物が御影を呼んでいると言うことで男どもに嫉妬や羨望の視線が身体に突き刺さり、挙句のはてに戸浦に詰問されかかったのをどうにかして逃げてきたのだ。精神的にも体力的もかなり消耗した


・・・これは五時間目の授業は休みたいな


「話を始めていいか?」


「ああ、どうぞ?」


「とりあえず私の自己紹介からしましょう」


そう言って銀髪少女が由利の後ろから前に出た

流石に御影やロキの命を狙ったことでロキにとっては警戒対象なのだろう

だが、あの槍は御影の『神喰らう神狼牙』と相打ちになり粉々に砕け散ったのだ

だから今の彼女はロキを殺すだけの力はない


「メルヴィア・ディアラ・マキナ。それが私の名前で出身は英国です」


・・魔術の本場から来たのか。なのに魔術師ではないってどういうことだ?


「いずれそのことに関しては話したいと思います」


まるで御影の考えを読んだかのようにメルヴィアはしゃべった


「とりあえず我々はこれからも監視を続けることとなった」


「「はぁっ!?」」


「ちょっと待てそれはどういうことだ!?」


ロキが御影の座っている椅子の後ろから身を乗り出すように身体を前にした


「言葉の通りです。まだ貴方達には危険要素が残っている以上我々はそれに対処できるようにしなければなりません。幸い、『神滅する賢者の槍』は明日で戻ってくるので」


「マジかよ・・・・・」


御影は椅子をずるずると滑るようにして落ちる

どうやら居心地のいい日常は、はちゃめちゃな日常へと変わってしまうらしいな


「なのでこれからは上級生と下級生と言うことで――――」


「よろしくお願いします。先輩」


由利とメルヴィアはそう言って屋上から立ち去った


「また面倒なことになりそうだ」


「お前がそれを言うな・・・・・・」


こういう口調だけは自分と似ていると御影は思いながらロキの方を見る


「だが、私は悪くない」


「何が悪くない、だよ?」


「お前が護ってくれるのだろう?それが悪くないって言ってるんだ」


そう言ってロキは左側から満面の笑みで御影の顔を至近距離で見た

御影はその笑顔を見入ってしまった。たぶん頬の赤くなっているだろう

ぶんぶんと頭を振って御影は正気に戻しまた青空を見上げた


魔術と科学でできた島で


使者と契約者・・・・・・・・・そして


監視者の物語が始まる



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