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35話 約束

「うぅ・・・・・」


御影は瞼ごしでもわかる光を感じ目を覚ました

その光の発生源を見ると窓から差し込む朝日だった

御影はそのことにようやく気付くと勢いよく起き上がった


「っつぅ――――!!」


全身に電気が走ったように鈍い痛みが駆け巡った


「起きられましたか?」


御影は左側を見ると点滴の様子を見ている看護師と目があった


「すぐに先生をお呼びしますね」


そう言って看護師は引き戸を音を立てずに閉めて出て行った

その数分後、天垣がいつものおちゃらけた雰囲気で御影の検査を行った


「うん。問題はないね。健康状態には何の問題もなし。薬も残っていないよ」


もし俺じゃなければ絶対に怒ってるよな、と御影は思いながらもこの雰囲気に居心地の良さを感じていた


「全員無事で何よりだ」


「流石と言うべきか。アンタは」


「そう言ってもらえて何よりだよ。君が一番重症だったからね」


そう言いながら天垣は肩をすくめた

当たり前か、と思いながら窓から朝日を眺めていた

朝を迎えられたことに安心を覚え、そして昨夜の出来事が終わったのだと感じた


「そう言えばあの二人は?」


「まあ、外傷がひどかったけど、内臓は傷ついていなかったし、由利ちゃんは肋骨を少し損傷していたけど大事には至らなかったよ」


「そうか・・・・・」


とりあえずみんなが無事で何よりだ、と言うのは傷つけた本人としてはおこがましいものだったろうかと御影は考え込んでしまう


「ま、僕達はこれで失礼するよ。あとはお二人でー」


と言って天垣は早々に使者を連れて出て行った


・・・・二人で?


その疑問はすぐに解消された

何せ天垣が消えた瞬間、背筋も凍るような寒気に見舞われ御影は顔を青ざめてしまったからだ


「・・・・ロキ?」


逆に御影の視界の中心にいるロキの周りには赤黒い獄炎が燃えているように見えなくもない

しかも前髪で目が全く見えないのでそれが余計に怖い

ロキはそのままゆっくりとした歩調で御影のベッドに近づいてくる


「ちょっと待てロキ!!おまえが言いたいことは解る!!だからそれは俺が退院してからで――――!!」


御影は手を前に出して振りながらベッドの一番左端に移動する


・・・・・まずい!これは非常にまずい!どうやってロキのお怒りを止めるか


そんなことを考えているとすでにロキは御影のベッドの右側に到着していた


絶対に殺される!?


御影はそう思い両腕で今の全力の防御の構えをとったが衝撃は意外なところに意外な強さでやってきた

それは御影の腹部あたりに包み込むように腰に腕を回してきて抱きついてきたのだ


「ううぅ・・・・ぐすっ・・・・」


何か鼻をすするような音が聞こえたのでロキの方を見ると彼女もちょうど顔を上げたところだった

すでにロキの頬には幾つもの涙の流れた痕が残っていた

御影は一息ついて目をつむる

そしてそのままロキに笑顔を向けた


・・・俺にはまだ心配してくれる誰かがいるんだな


御影はそれを認識した

それはとてもうれしいことであり、同時に生きる糧でもあるような感じがした


「ばーか・・・・」


少し涙声になりながらかわいらしい声でロキは御影を罵倒してくる


「お前なんか大馬鹿だ。私の血など飲んで・・・・・・」


「結果それで全員が助かったんだからよかったじゃねーか」


「私の血など飲んだら死ぬかもしれなかったんだぞ!?」


「まあ、それは結果オーライと言うことで―――――」


「血よりも唾液の方が助かる見込みは高かったと教えられたし、それなら私もここまで心配せずに済んだのに・・・・・・・・」


「は・・・・?」


一瞬、こいつは何を言ってるのか、と思ったがロキも自分の発言を思い帰し、熟れたトマトの様に赤面した

確かに、天垣の説明では血よりも魔力が薄い唾液の方が助かる見込みは高いと聞いたことがあるがそれでも―――――


「自分で・・・言うか?」


「――――――ッ!?」


ロキはさらに顔を真っ赤にさせ顔をうつ向かせた

その行動に御影はロキの頭をなでながら苦笑を浮かべた


「解った。これからはお前が心配するような無理はしないよう気をつけるよ」


「ふん・・・・」


ロキはそっぽを向いて


「・・・・・・・・・ありがと・・・・・」


そう御影には聞こえないロキの心の中だけ止めるように呟いた



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