34話 事後処理と暗役者
「やってくれましたね」
そう言って銀髪少女はきしむ腕を上げて倒れている御影に手をかざした
その手には魔力が形成され魔弾が完成しつつある
「これで――――」
魔弾を放つ瞬間、腕を抑えつけられ謝って地面に撃ってしまった
その腕を抑えつけた人物を銀髪少女が睨みつける
「戸浦・・・・将門」
「知っていてもらえて何よりだ」
説明する手間が省ける、と言った風に肩を上げて抑えつけていた腕を離した
「統括評議会議長の部下。統括者の犬か・・・・・」
「残念ながらその名では呼ばないでほしいな」
苦笑交じりに息を吐くように言うが目が笑っていない
「俺はあんたみたいに強制的に入ったわけじゃないが、あいつに従うつもりもない。俺には俺の理由があるからな」
そう言うと戸浦は銀髪少女の手をかざし一瞬にして意識を刈り取った
彼女はそのまま後ろに倒れるが金髪緑眼の優男が後ろから彼女を支える
「さて、俺達の作業をさっさと終わらせるか」
「そうですね。もうすぐ民間保安局も来るころですから」
戸浦はすぐに銀髪少女の頭をつかみ魔力を込める
「流石にあの方に知られるわけにはいきませんか」
「ああこいつがフェニックスの力を持っていると知られれば次にどんな行動をしでかすか解らないからな」
戸浦はその作業を終わらせ次に『神滅する賢者の槍』の近くに行った
「流石にこれは知られるわけにはいかないか・・・・」
そう言って槍の破片の残骸の中からカプセルの様なものを取った
そこには綺麗な赤色の液体が入っていた
「それは一体?」
「まあ、『神滅する賢者の槍』の基部だな」
「でも彼女が言っていた限りでは基部は刃のロンギヌスの槍だと言っていましたが?」
ガウェインは眠っている銀髪少女の方を見ながらそう呟く
「ああ、彼女はそう聞かされていただけだ。事実は違う。そもそも聖遺物だけでここら一体を破壊できるほどの力なんぞ出せるわけねーだろ」
「ではそれは・・・・・」
「まあ、お前らのよく知っている人物のものが入ってるんだよ」
「何ですかそれは?」
「かつて二十数年ほど前、フランスの大部分が消滅する事件が起こった。もちろん今でもその傷跡は残っている」
「確か『バハムートの顎』とか呼ばれている大災厄だと聞いています」
「ああ、表向きは大規模魔術発電の誤作動による消滅だと報道されたが、事実あれは違う」
「何ですって!?」
ガウェインが目を見開いてその事実を聞く
「俺も最近知ったがあそこには明らかに魔術発電の術式は残されていなかった。そして驚くことに宝器が使われている反応があった」
「宝器が!?」
ガウェインはその単語に驚きの表情を隠しきれない
宝器、それはかつて英霊がなした逸話の数々を具現化したものだ
それが神ならば神器、天使なら天器、悪魔なら悪器と呼ばれている
「だが、英霊や神、天使、悪魔なんかの特有の魔力の質が発見されずむしろそれらを異質に変化させた魔力の質が発見されたらしい」
「つまり英霊や神以外から宝器を使った奴がいるってことだ」
そう言いながら戸浦は砕け散った『神滅する賢者の槍』の刃の破片を拾った
「実はその時、一部だけ血が流れていたんだ」
「血が・・・・つまりその容器は」
「ああ、その時の血をうまく保管して使っているのさ」
「でも誰の・・・・・?」
「おいおい、それはお前が一番知ってるやつだぜ?」
そう言いつつ『神滅する賢者の槍』の刃の破片の一部をガウェインに渡す
ガウェインはいろんな意味で首をかしげつつまず一番最初に単純な疑問を投げる
「なぜ私がこれを?」
「お前の首輪を解き放つためだ。一番小さい破片がそれだったからそれを選んだまでだ」
「成程・・・・・」
ガウェインが頷き、それを見ながら戸浦はガウェインに渡した破片とまったく同じものをその破片群の中に混ぜた
「いつの間に・・・・・・・」
「俺は嘘つきだからな」
その言葉は戸浦自身にしか解らない言葉だった
その後、魔動霊装を装備した隊員と民間保安局、そして緊急治療車と呼ばれるトラック型の救急車が一台入ってきた
緊急治療車は内部で応急処置ができるように装備が充実していて最大4人の患者を収容できる
「しかし我らはここにいても怪しまれないのですね?」
ガウェインはいろんな人物が働いている姿を見ながら戸浦にそう尋ねる
「お前は俺の使者のくせに相当頭が悪いようだな?俺は嘘つきなんだぜ?」
「能力については解っていますよ。でもそれは――――――」
ガウェインは戸浦の後ろ姿を見ながら立ち止まり尋ねる
「先天的なものなのですか?」
その質問に戸浦は何も反応することなくただ歩いて行った




