25話 覚醒する槍
御影は荒々しい息を落ち着かせながら自身の右側の視界が戻り安堵をおぼえた
「もうあいつにも会うことはないが、あったらあったで絶対になんか言ってくるな」
そんな苦笑で自分の口端に笑みを浮かんでいることを感じながら腰に手を当てた
「全く無茶をするものだ。まあ、あれだけ連撃を繰り出せば流石にあの槍に魔力を流す時間はないだろうな。二人いたからこそできたことだ」
そう言って由利はあって初めての笑顔を御影に見せた
その顔は普段の凛々しい表情とは違い少女らしさが残った笑顔だった
御影は気恥ずかしさを残しながらもその笑顔に微笑で返す
その時、ポケットに入れてあった携帯ショップで借りた携帯が鳴った
ディスプレイに書かれていたのは天垣という名前だった
「どうした?天垣」
『まずい。そっちにロキが行った』
「大丈夫だ。こっちは終わった」
『終わった?馬鹿なことを言うな!『神滅する賢者の槍』は物理攻撃や普通の魔術攻撃はくらわないんだぞ!?』
「どういう―――――」
そう言いきる前に御影は横から激しい風を感じた
「どうやらまだ終わってなかったようだ」
そう言いつつ由利は再び刀を構える
先ほど銀髪少女が飛ばされた方向を見ると明るい光色と暗い闇色の魔力が辺りを掌握しようとしていた
「おい!天垣。どういうことだ!?」
御影は携帯に声をかけるがすでに魔力の波動が強すぎるせいかノイズ音しか聞こえなかった
「ちっ、役に立たねえな」
そうぼやきながら通話を切った
「『神滅する賢者の槍』はこの程度ではやはり破れないか」
「それが解ってるなら先に言ってくれ」
「魔力障壁で物理、魔術ともに攻撃をはじき返すぐらいは持っているからな。大規模魔術か異能者が使う『幻壊神装』ぐらいだろう。まともに戦えるのは・・・・・」
『幻壊神装』
異能者が契約することによって作り出される異能者特有の武装である
主に異能者の精神の強さまた使者の性質などでその強さは決まる
そしてこの幻壊神装には人それぞれの武装であるがゆえにみな形が違う
「お前は『幻壊神装』は使えないのか?」
「無茶言うな。二年になってからそんな授業一つも受けてない」
そう、御影達が通う学園では二年に進級確定時に使者との契約を行い、その後の授業でこの『幻壊神装』を発現させるのだ
それは早くても五月以降の授業にするはずだ
「使えないやつだな」
「ひどッ!?そこまで言わなくてもいいだろ!!」
「だとすれば、あと一つは―――――」
その言葉と同時に辺りの魔力の波動による暴風が吹き荒れた
先ほどの風とは比べ物にならないほどの荒れ方だった
御影は立つことも容易でなくなり片膝をついてみていた
「今度はなんだよ!?」
「どうやら私達の攻撃で本気を出したようですね」
そう言って由利は鋭い視線を穴のあいた倉庫の向こうの闇に向ける
再びその目は碧眼へと染まりまたもや風車の様な紋様が目に浮かびあがる
しかしそれを阻むように闇色の衝撃波がこちらに向かってきた
由利はそれに気付き御影の肩を押して自分との距離を離す
由利と御影の間に闇色の衝撃波が人工島の基盤を砕きながら走った
そしてそれは工業区と学制区のしきりとして建てられた監視塔に当たり砕いた
「来るぞ!!」
御影は後ろの監視塔に気が行っていたため目の前の状況に反応できなかった
銀髪少女の髪は闇色と光色半々に染まっていた
彼女は御影に問答無用で槍の突き放った
「ぐっ・・・・・!」
御影は目の前で腕をクロス状に組んで槍を防ごうとした
魔力は持ち合わせているため障壁を張った
しかしその槍は御影の魔力障壁を紙同然に貫いた
そしてその穂先は御影のクロスした両腕を貫き眼前まで到達し止まった
そのまま槍のつきの余波とは思えないほどの強風にあおられ倉庫の壁に巻き込まれながら倉庫の外へと放り出された




