24話 強き者と弱きもの 持つ者と持たざる者
それを見ていた御影は心の中で呟いた
治癒術式か・・・・・・・
これだけ術式を使っておきながら魔術師でないってどういうことだよ?と質問もしたくなったがその前に彼女が目を開いて呟いた
「来ましたか・・・」
そう鋭い眼を見せた瞬間、彼女の周りの空間がたわみ、一気に収縮した
彼女はそれを予測したように飛んでそれを避ける
彼女を取りのがしたその空間は一気に収縮してあたりに衝撃波を生んだ
「ゲマトリア!アレフ!!」
その凛とした声と共に横一線の魔力の斬撃波が飛んできた
それこそ倉庫の横幅ぐらいある大きさの斬撃波だ
それが倉庫の屋根から銀髪少女めがけて飛んできたのだ
「その程度で・・・・・」
両手に構えた『神滅する賢者の槍を構えた』で斬撃波に向かって突きをだした
その槍の穂先には先ほど見せた明るい光色だけがともっていた
それが当たると同時に斬撃波はまるでガラスが割れたように砕け散りあたりに霧散した
そしてその斬撃波を打ち出した少女は月を背に幻想的な雰囲気の中倉庫の屋根の上に立っていた
風によってポニーテールが揺れる
「さっさと終わらせる」
そう言った瞬間、今まで黒色と同化していたその瞳がいきなり青く光り出す
銀髪少女はその能力を知っているのかその視線から逃れるように倉庫の支柱を盾にして逃げ回った
そして彼女の瞳の中に黒い風車の様な紋様がせわしなく回りそれが収縮して言った瞬間
「――――うわあ!!」
倉庫の地面辺り一帯に亀裂が入り砕け散った
まるでのりではった紙を中心に集めるようなでたらめな破壊の仕方だった
そしてそうここの地面の下、人工島の建物を支える基盤が露出した
そのことで御影を縛りつけていた支柱は宙ぶらりんになり御影は姿勢を低くすることでその支柱から抜け出した
「どうやら怪我はないようだ―――――くっ」
由利は御影の背後に立つと刀で御影の縄を切ったがすぐに目を手で覆った
「おい、大丈夫か?」
「問題ない、だが、少し使いすぎたようだ・・・・・」
使いすぎた?あの力をか、と問いかけたかったが靴音がそれを邪魔する
「流石ですね。持つものと持たざるものではここまでの差があるとは」
そう言って銀髪少女が槍を右手に持ち悠然とこちらに歩を進めてくる
「では次はこちらから―――」
そう言うと銀髪少女は直進するように飛んできた
「邪魔だ!!」
由利は御影をはねとばし刀で『神滅する賢者の槍』を受け止める
「くっ!!」
「力を使いすぎたようですね」
「なめ―――――るなぁー!!」
由利は刀で『神滅する賢者の槍』をはねとばす
そしてそのまま由利は刀を鞘に戻す
「大いなるバビロンよ。毒と悪行に彩られた暴君よ。今すべてを薙ぎ払い全てを蹴散らせ。逆らうものに万死を与えよ!!」
由利が改めて刀の柄を握った
同時に刀の鞘には蒼い炎で666と描かれていた
「マクシムスの大惨火!!」
由利はそう叫ぶと同時に刀を一気に抜き放った
刀から先ほどの斬撃破と辺り物をそれこそ溶かすような熱量を持っていた
ただそれだけならばよかったが同時にそれが666発同時に出されたのだ
これが監視者に対抗するための力だと言うのか・・・・・
御影は腕で顔をかばいながら見ていた
しかし御影はさらに驚く光景を目にする
辺りは大火災のように燃えているにもかかわらず銀髪少女の周りだけはまるで何事もなかったかのように悠然と立っていた
「さて、またこちらの番ですね」
そう銀髪少女は言うと加速してこちらに槍の穂先を向けた
「くそっ!」
由利はそう悪態をつきながら膝をつく
先ほどの技は相当に魔力と体力を行使するものだったのかもしれない
だがそれでも銀髪少女の加速は止まらない
御影は由利と銀髪少女の間に立った
「馬鹿か!?やめろ!?」
何ができるわけでもない。だがそれでも御影はただ由利の前に立ち目を静かにつむった
・・・・・・あいつなんかに力を借りたら何か言われそうだな。でも今はこれしかない
御影はそんなことを思いながら脳裏に黄金の髪をなびかせながら口端に笑みを浮かべる少女の光景が浮かんだ
そして槍が迫る中御影は目を開いた
これだけでも充分だ、と思いながら銀髪少女の槍を待った
「ようやく決心がつきましたか」
「残念ながらまだやることがあるんでね」
そう冗談めかしに銀髪少女の言葉に返すと彼女は眼を鋭くさせながら両手で持っていた槍を右手だけで突き出した
その瞬間、御影の右目は激しい閃光によって視界が奪われた
その光景に少しひるみつつも左胸を狙っていた槍を紙一重でかわし銀髪少女の顔面付近に蹴りをたたきこんだ
しかし銀髪少女もそのことが予測できなかったにもかかわらず咄嗟の反応で身を下げてその蹴りを避ける
「往生際の悪い!!」
銀髪少女は槍の柄の部分で御影の左足を引っ掛けに来た
だが御影はそれ前転の要領で回避して銀髪少女の背後に回る
「今だ!!」
「ゲマトリア、ダレット!」
由利は刀を上段に構えた
その刀に平行に作り出された魔力の刀が四本あり計五本となった由利の刀が銀髪少女を真上から切り裂いた
「くっ・・・・!!」
しかしその刀は地面を砕いただけで銀髪少女は左へと転げるようにして回避する
「まだ終わりじゃないぞ」
御影はすでに銀髪少女の背後へと回っていた
でたらめな身体強化でも普通に比べれば強くなる
「これでもくらえ!!」
御影は踏み込んだ足に力を入れ、拳を銀髪少女へと打ちこんだ
間一髪銀髪少女は槍で防いだが身体強化されたあげく男の力を受け流しきれず自ら作った倉庫の大穴の方へと転がった




