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23話 神滅する賢者の槍

天垣は携帯を耳に当てながら病室の壁にもたれていた

しかし天垣の耳にはコール音しか聞こえなった

天垣は通話を切って歩きだした


「待って下さい・・・・」


その腕をとって歩みを止めたのは天垣の使者と由利だった


「ここからは私の仕事です。邪魔をしないでください」


「君が勝てる保証の方が極めて低いと思うけどな。僕は」


笑みを浮かべながら由利の方をいるがその目は笑っていない

それこそ大切な物を奪われたと言った怒りに対する感情が現れ出ていた


「そんなに彼のことが大事ですか?」


「うん。彼は僕の養子だ。そして彼は―――――」


「それ以上言えば口を切り落とさなければなりませんが?」


そう言って天垣の使者が微笑む

由利は先ほどの天垣の笑みと言いこの使者の微笑のせいで背中には冷や汗がたまりまくっていた

それはただの作り笑いでもなければ、何かを含んだ笑みでもない。むしろ何に対して笑みを浮かべているのかそれが全く解らないせいで由利は冷や汗をかく羽目となった

一体彼らは、と由利が思考していると後ろからうめき声が聞こえた


「うぅっ・・・・・」


彼らはここがどこなのかを忘れ口論していたがそのうめき声で我に戻った


「どうやら僕達がここで口論している時間は限りなく皆無に近いね」


天垣は一つだけ置いてあるベッドに向かった

横に置いてある椅子に座り今さっき起きた人物に話しかける


「やあ、気分はどうだい?ロキさん」


「いいわけが無いだろ。トラウマが再発していい気分の者がどこにいる?」


額に腕を乗せながらロキは天垣の方を向く

その瞬間、天垣は自分の使者に対してある言伝を送った

それを受けた使者は由利に目配せをしながらロキの様子をうかがう

そしてそれを感じた由利は消音の術式で気配を消し病室から出て言った

天垣の後ろで組んでいる腕の右手には鳥を模様した紙が握られていた

先ほどロキの横の椅子に座るため窓際を通った時に気付きそれを取った

そしてその情報を天垣の使者に言伝してその情報を書き記した紙を由利に渡した

これはこのロキの異能者から渡された伝言だった


『大方狙いは俺を使った餌だろうな。ロキには絶対に知らせないでくれ。水無瀬さんとどうにかして戦ってくるよ。いざとなればそっちに水無瀬さんだけでも帰すよ』


その伝言だけですべてを理解した。だからこそ天垣は助けに行こうとしていたのだ

彼は大事な秘密兵器なのだから・・・・・・

しかし、もしあっちの要件を飲まずにこちらが勝手に動いた時、奴の制御に苦しむのはこちらだ。それを解っているからこそあっちもこのような用件を出してきたのだろう


「面倒な奴だ・・・・・・」


「ん?何か言ったか?」


「いや、なんでもないよ。それよりも一様検査しておこう。君は倒れた身だからね」


「ああ、それは解っている」


「さて、身体の隅々まで調べさせてもらうよ・・・・・」


天垣が手をワキワキさせながらロキに言う

ロキはその光景を見てヒッと普段ではありえないかわいい悲鳴を上げるが天垣の使者が天垣の頭を叩いてそれを阻止した


頼む。何事もなく終わってくれ


天垣は一パーセントにも満たない可能性の希望を心の中で願うのだった



◇◆◇◆◇◆



御影は工業区の薄暗い倉庫の様な所の支柱にくくられ夜までここに縛り付けられていた

しかも今回は術式で作られた拘束ではなく縄の上に魔術耐性の加護の様なものを付け加えたものだった

これでは御影の右手ではほどけない


「しかしこんなものを持っているとは・・・・」


銀髪少女は御影の目の前に現れ、ポケットから折りたたみ式のナイフを出す

柄部分は蒼と金色の装飾がなされているとても豪奢なデザインだ


「一見見たら装飾品に見えないけどこれは立派な魔術霊具ですね?」


御影はただにらむことでそれに答える

彼女が持っている魔術霊具は『犠牲は必要不可欠(ディザストラーレ)』と言う封印術式を一時的に無力化する特性を持っているものだ

しかしこの魔術霊具は自身の身体を傷つけた分だけ封印術式を無力化しその傷つけた分だけその効果が持続する

御影の中にあるものを目覚めさせるために必要なものだ


「しかし、なんで『神滅する賢者の槍』ってのは使者を殺すだけの力を有しているのだ?」


「殺しているのではいません!戻しているだけです」


「まあ、それでいいけどどうやったらそんなことができるんだ?」


「まあ、冥土の土産として教えてあげましょう」


彼女はそう言いながらため息をつきつつ答えた

どうやら俺は殺される予定のようだ。安易に逃がしてはくれないだろうな


「『神滅する賢者の槍』この刃にはある聖遺物が使用されています」


「聖遺物だと!?」


そんな話は聞いたことはない。聖遺物は本来管理局のグノーシス機関で保管されほとんどの者は手にすることすらできないものだと聞いた


「まあ、驚くのも無理はありません。むしろこの聖遺物を抑えるために私がいるようなものですから」


どういうことだ、と言った風に御影は眉を身ひそめることになった

何故彼女が聖遺物を抑えるための封印要員となっているのだ?

そう言うものは封印術式を組んで封印するものだ

しかし目の前にいる彼女は自身が封印術式の代わりをしていると言ったようなものだった


「簡単です。この刃に使われている聖遺物は他と違うのですから」


そう言って彼女は振り返り御影に背を向けた


「その聖遺物はあらゆるものを浄化しそしてあらゆるものに致命傷の傷を与える。まさに聖と魔が混同したようなものだった」


彼女はそう言いながら槍を持った右手に魔力を込めた

その槍の穂先に明るい光色と暗い闇色の魔力が混同していた

そしてその力発動して三角状になっていた突起物が開き戦闘機の翼の様な形をして周りの物を一気に魔力の余波が辺りを薙ぎ払う


「くっ・・・・・」


御影はそれを直視することができず目をそむける

まるで今の倉庫は台風にでもあったかのようにきしみ暴れている


「その聖遺物は――――――」


彼女が右腕だけ振りかぶりそう呟く


「ロンギヌスの槍」


そう言った瞬間、右腕を薙ぎ払った

その衝撃波は彼女の右にあったすべての物を薙ぎ払った

そして一瞬だけ海を叩き割った


「ぁ・・・・・・・・」


御影は目と口を開きっぱなしにして目の前の光景を見た

先ほどの衝撃で貿易上として使っていた港が壊れ、幾つものガントリークレーンが傾きひしゃげていた

こんなものと俺は戦おうとしていたのか、とあの担任の言葉が脳内に反復した

今さっきまで感じることが無かった恐怖が御影の身体を襲った


「くっ・・・・!!」


その声は御影の目の前にから聞こえた

今御影は情けない顔をしているのかもしれない。他人には見せられないような顔を

でもそちらに顔を向けるだけの価値はあった

先ほど力を使ったせいか彼女の右腕は明るい光色と暗い闇色の魔力に螺旋状に描くように覆われていた


「くっ――――はぁ・・・はぁ・・・」


それを彼女は無理やり力で抑え込む

相当の力を有したことなのかその顔には少し疲労の色が見える

しかし彼女が目をつむり一息つくとすぐに顔色は戻っていた


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