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15話 それでも彼女は

別にすぐに帰る用事もなかった御影は戸浦と別れた後、ただ学制区の中をぶらぶらと歩いているだけだった

確か、夕奈は部活で遅くなる日だった気がすると頭で考えながら歩いていると商業区に入り込んでしまっていた。商業区は学制区と高等区に隣接している所に作られており一人暮らしの学生などが帰りにここで夕飯の材料など買って帰ることがあるのだ。


「久しぶりにゆっくり帰るか。どうせ家に帰ってもロキもいないことだし」


そう言って再び歩き出そうとした時に目にとまったものがある


「ロキ・・・・か?」


艶やかな黒髪が腰ぐらいまで伸びているその姿はロキだった。最初は自信がなかったが風で髪が舞い上がったことによって横顔が、その美貌があらわとなったのだ

しかし彼女の手にはかなりの大きさのビニール袋があった。大方、御影がいるのを信じて疑わなかった夕奈がロキに多めの買い物を頼んだのだろう。まあ、使者ならば筋力もそこそこだろうが流石に重みを感じているのか左右の手で入れ変えながら持っている


「はぁ・・・黙っていればきれいなのにな」


なぜかそんな言葉を吐きながら御影はロキに近づいた


「ほら、貸せ」


御影はロキが持っていたビニール袋を乱暴にひったくった


「なっ!おまえは。返せ!!」


そう言ってロキは御影が奪ったビニール袋を取り返そうとするがかわりに御影がその手をつかんで手のひらを見せた

その瞬間、何か痛みをこらえるように口をつぐみ顔をゆがませた

ロキの掌には赤く、ビニール袋の細い持ち手の痕がついていた


「こんなになってるだろ。わざわざこんなになるまで持つ必要はないはずだ」


「これは私が言われたものなんだ」


「大方、夕奈も俺がいるものと信じてこんなに買い物させたんだと思うぞ。お前ひとりと分かっていればこんなに買い物をさせたりはしない」


夕奈のことを知っている御影の言葉は今ロキが知っている夕奈よりも信用性があったため、歯を噛みしめながら悔しさに堪えていた


「それにお前っていうな。仮にも異能者なんだ。嫌なら鳳欧でもいいから名前で呼んでくれ」


「変態男・・・・」


「頼むからそれだけは言わないでくれ。確実に捕まる」


御影は土下座の勢いで頭を下げた

しかし当のロキはそのままそっぽを向いて御影の前を歩きだした

御影はため息をつきながらもどこかやさしい目でロキを見ていることには気がつかなかった

しかし前を歩いていたロキも物の数分歩いただけで止まってしまった

ロキはショーウインドウを子供の様な目で見ていた

御影はロキの後ろからそのショーウインドウを覗きこむとそこにはそこにはさまざまな服が飾っていた

男物の服や女物の服、清楚なワンピースやかわいらしい服なんかも飾ってあった

黙っていてこんな清楚なワンピースを着ていたらだれも文句なんて言わないのにな

いや、文句を言っているのは俺だけか、と御影は頭を掻いた


「おい、そろそろ―――――」


そう言って歩き出そうとしたがロキが歩く気配を見せなかった

流石にここで足を止めるのも女子特有の性なのかもしれないな、とため息をついてロキに話しかける


「見るか?」


しかし御影の声でようやく我に返ったのか、恥ずかしそうにショーウインドウと御影から目をそらした


「―――――別にいい」


何故その言葉が出るまでに間があったのかは置いておいて彼女はどうしてもこの店に立ち寄りたいが御影の前で弱みを見せたら付け込まれてしまうという葛藤を行っていた


「別に何にも言わねーし、馬鹿にもしないから安心しろ」


逆にこういうところでさっさと帰ればそのことを聞いた夕奈から何を言われるかわからない。実際、一度弥生達で経験して以来女子と歩く際はこういう風なことを気配りしなければならない


「それにお前だって休日に外に出るのに制服のまんま出るわけにいかねーだろ?」


残念ながら夕奈の服を借りるという選択肢はなかった。何故ならロキは夕奈とは違いいろいろな場所が発達しているからである


「制服ばっか着てると制服が痛むのが早いぞ?」


そう言ってあいている片手でロキの手をつかんで、そのまま自動ドアをくぐった

そしてそのまま、あまり乱暴にならぬように手を引いてロキを御影の前へと移動させた

その瞬間、ロキが目を輝かせて陳列されている服を見入った

カタブツな性格の姉ゆえにあまりこういうおしゃれな格好はしなかったのかもしれない

いや、もしかすれば威厳のある格好に見える物以外は極力ロキには見せないようにしていたのかもしれない。

だとすればロキがこんな風に憧れに満ちた目でこの店の服を見ないだろう


「ま、好きなの何着か選んで来い」


その言葉にロキは身体をビクつかせながらこっちに振り向いてきた

しかも顔を真っ赤にしてこっちを睨み上げていた


「べ、別に、私が行きたいと言ったわけではないからな!!」


あくまで入りたかったというのは肯定しないらしい


「はいはい、あくまで俺が誘ったっていうわけでいいから」


御影がそう言うや否やロキはそのまま陳列されている服のなかに入って行った

御影は少しくらい素直になればいいのに、と思いながらロキの後を追う

辺りにはちらほらとカップルずれの客がいるせいで御影は少し落ち着かない雰囲気になれないながらもロキが進んで行った方へと御影も歩を進める


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