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12話 認識はやっぱり簡単に変わらない

「まあ、今回のは言わずもがな。私達の不始末だ。許してくれ」


そう言いながら風紀委員長は自己再生能力を活性化させる主に獣人などから取れる血で作られた消毒液を塗る。

流石にかなりの怪我なので消毒液が奥までしみこむように痛い


「まさかあそこに獣人がいるとはな。しかもこの人工島にまだ戸籍申請を出していない。戸籍未所持者だった」


ここまでのことを調べることができるのはこの人工島の中でもこの学園くらいだろう

戸籍未所持者とはその名の通り戸籍を持たぬ者のことだが、この人工島はこの通り異族が住んでいるため日本の戸籍は通用せず、新しくこの人工島で戸籍を作り出したのだ。勿論引っ越してくる者達も同じように人工島での戸籍を作らなければならない。何せ人間と言う種類が出来上がるほど異族の種類は多い。獣人の最も有名なところで狼男や血を吸う怪物吸血鬼、エルフ日本では長命族と呼ばれている種族にハルピュイア(有翼系種族)、精霊、少数ではあるが神族もいるのである。そのほかにも少数でその分類はあるのだろうが大まかなところでもこれだけの種類があるのだ。これだけの種族を管理するのはやはり戸籍が再び大事になるものだろう。勿論、大まかな部分は祖国から戸籍を送られて省けるが、特に血液検査や魔力検査の情報を偽るとかなりの重罪で処罰される

つまりさっきの奴らはどこかほかの国の異族でありこっちに旅行でもしに来たのだろう。

だとすれば出身国はすぐに割り出せる

・・・・フラリス欧国か

ヨーロッパのイギリスとフランスの間に位置するドーヴァー海峡に作られた異族国家だ

あの国はこの自治区とは違い、一つの国家と成り立っているうえ魔術の本場であるイギリスロンドンが近いためかなりの魔術的な進歩をしている。そのためここの自治区よりもあとに建設されたがすでに国家としての体制を保っているのだ

なんて思っていると御影はいきなり手を引っ張られた


「何をぶつぶつ言ってる?ほら、そこの機械の中に手を入れて数十分じっとしてろ」


御影は保健室の端に置いてあった小型の機器の中に手を置いていた

風紀委員長は御影の隣でいろいろと操作を行っている空中投影型の画面を見てはタッチして決定している

数センチに隣にいるため否が応でもいいにおいが香ってくる

ミント系のさわやかな匂いが香ってくるがどうにもそれだけではないようだ

そこで御影はあることに気付いた


「ん?そう言えば俺って風紀委員長の名前知りませんでしたね」


そう、御影はよく追いかけられる立場なので風紀委員長の名など聞けるわけがない

しかも御影は今までに一度も捕まっていなく、対面すらしたことはないのだ


「ああ、そう言えばお前はずっと私に背中しか見せていなかったな」


半目になりながら御影を見て何を思ったのかため息を吐いた


「三年H組、神崎(かんざき)(あおい)だ。今後説教されに来るときはそれで呼んだら来てやる」


まるで鬼が笑ったかのような不気味な笑いを御影に残してそのまま保健室を出て行った


「あの人、あんなふうに笑わなければ確実に女子にモテてるよな。きっと」


元々背の高い風紀委員長の碧はその中性的な顔立ちゆえに間違えば美男子見えなくもないのだ

御影は左腕で頬杖をついて自分の右手が治るのを待った



◆◇◆◇◆◇



しかし数十分後


「なげぇー!!」


再生治療というものが出来上がったのは良いがその技術の発展は最近になってようやく成長してきたものであり、今御影が使っているのは前世期物であるため再生治療にはかなり時間がかかる。


「かばんの中に何か入ってないかな・・・・・」


俺はそうやってかばんを探ると一枚の写真が出てきた


「これは――――」


その写真には男女合わせて十数名の軽装な鎧を着た騎士がいた

そしてそこには幼き頃の御影も映っていた

御影はそれを見て微笑むとすぐにかばんの中に戻した

そして御影はさらにかばんをあさると


「――――小説?」


御影のかばんには小説は一冊しか入っていなかったのだがなぜか今日は二冊入っていた

そのまま御影は膝の上に小説を置いてカバーを解いて小説の表紙を見た


「――――ブフッ!?」


特に口に何かを含んでいなかったのだけれどなぜかそうせずには居られなかったのだ


「何でこんな小説が入ってんだ!?」


その小説の表紙はヒロインとおもしき人物がそれはまあ、淫らな状態で描かれていたのだ

つまりあっち系の本だ

しかし御影はこんな本を購入した覚えはないしなぜこの本が御影のカバンの中にあるのか、と詮索するうちにある点に思い立った


「あいつか・・・・・・・・」


低くドスの利いた小言を御影は漏らした

それはいつも四人でつるんでいるうちの男の奴だ、御影以外の

なぜか知らないがそいつが脳内でハハハ、ざまあみろ!と言って走って逃げて行く様を思い浮かべてしまった


「直ったら速攻で右ストレートをたたき込んでやる」


御影はそれにカバーをしてその男に投げつけてやろうと思いカバーをしようとしたが


「あっ・・・!」


御影はそのカバーをする本をうっかりと落としてしまった

そのカバーをしなければならない本を追って御影は立ち上がり拾おうとしたが・・・・・

その直後、御影には究極の災厄が降り注いだのだ

御影が拾おうとした本の前に靴があった

誰かが脱いだわけじゃない。もちろん靴からすらっとした脚は伸びている

そう、つまり誰かがこの保健室に来ているというわけだ

御影は壊れたロボットのごとくギギギという音を立てそうになりながら頭上を見た

そこには黒色の制服を着たロキがいた

髪の色と相まってよく似合っていたがその顔は無理にでも笑顔を作ろうとしているものだった

何せ頬の筋肉がぴくぴく動いているのだから


「あ、あのロキさん?これには深い事情が―――――」


「そんなもの―――――」


と言ってロキは右足を後ろへと振り上げて


「――――聞きたくないっ!!」


その言葉と同時に御影の顎にキックが炸裂してそのまま背からベッドにダイブしたのだった

ロキは頬を赤らめながら保健室のドアが外れんばかりの力で閉めて行った


「不幸すぎるだろ・・・・・」


それを最後に御影は気を失った


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