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11話 御影という男の認識

御影はモノレールから学園までの道のりを走って戻る

対して距離はないからそこまで迷うことはないはずだがもしロキがこの学制区に来たことがなければ迷うのも無理はない


「ロキ!!どこだ!!ロキ!!」


そう叫びながら走っていると道の外れの林の中にロキがいた

周りに害虫三匹をひっつけて


「なんでこうもアニメの中でありそうな典型的なパターンなんだ?」


ある意味げっそりしながら御影はカバンを置いてその群がる三人に近づいていく

流石に学園に不良はいないがそれに似た特に御影の様なチャラ男はいるのだ

そもそもロキならば力を使えば普通に害虫三人ぐらいは撃退できるだろうが条例がある以上はそれもできないか


「おい!人の使者になに手を出してんだ?」


そう声をかけるとチャラ男三人はこっちに向いた

ピアスに着色した髪の毛、それにジャラジャラと腰につけたチェーンの様なアクセサリーこいつら謹慎処分者か?と一瞬にして判断したが、首についている物で判断した

どうやら相手は異族だったらしい。面倒な相手に絡まれたものだがこのまま放っておくわけにもいかないため御影は歩を進めてその三人に近寄った


「あ?なんでてめー」


「普通の人間だが何か?」


「おいおい、こいつ無能者だぜ」


そう言った瞬間、いきなり三人のチャラ男が下品に笑いだし御影はため息をついた


「言っただろ。人に使者に何手を出してんだ?ってこいつは俺の使者だ。お前らこそもう一度赤ちゃんからやり直したらどうだ?特に聴覚をもうちょっとよくしてから生まれてきたらどうだ」


蔑みと軽蔑の表情で三人のチャラ男を見た

背の高さ的には同じぐらいであり少し顔を上げれば見下すこともできる

そしてこういう奴には売り言葉に買い言葉が一番効果的だというのも分かっている


「てめー、俺達が何者か知ってんのか!?」


「ああ、腐った脳しか持たぬただの化物だろ?」


「死ねや!くそガキ!!」


そう言った瞬間、チャラ男達が来ていた服が一気に切り裂かれて中から屈強な肉体が出てきたのだ

それを見ていた通学途中の女子生徒が悲鳴を上げ、男子生徒が人工島特別治安局に連絡を入れたらしい

目の前の男たちは獣化したのだ

元々獣人系の種族はこのようにして人間の姿と獣化した獣人の姿を持つ。勿論、人間の時は御影達と同じ能力しか出せないが獣化した獣人は違う。脚力も腕力も人間の数倍はあるのだ。普通の人間ならばここで逃げようとするが御影は違う

御影はこんな相手でもできるようにこの島に来てからずっと力を蓄えてきたのだ

ネクタイを緩めて楽に呼吸を出来るようにする


「かっこつけてんじゃねーぞ!切り裂いてやる!!」


御影はそんな言葉に耳を傾けずに腰を静かに落として戦闘態勢に入った

そして先ほどまで暴言を吐き続けていたおそらくリーダー格に獣人が御影に向かって突進してきた。御影はそれでもゆっくりと息を吐き心を落ち着かせる

そしてリーダー格の奴に習って後ろから二人の獣人もついそうしてくる

リーダー格の獣人が一気にその脚力を利用して御影の上から襲いかかった

強靭な腕力とその爪がついている左手が御影に襲いかかる


「死ね!!」


しかし御影は何の声も発さずに獣人が出してきた手の方に拳を繰り出した

つまり御影の利き手である右手だ

その右腕は獣人の腕を通り過ぎ、拳は獣人の胸の中心部を打ち砕いた

同時に御影の手からも異様なきしむ音が聞こえ、砕け散る音が聞こえた

傍から見れば無駄な攻撃としか見えなかったが攻撃をしたものと受けた者のみが結末を知っていた


「―――――カハッ!」


獣人は血だまりを口から吐き出してまるで御影の拳に乗っかるような形となった


「てめぇ――――!!」


「兄貴の敵―――――!!」


今の時代でも兄貴と呼ぶ奴もいるんだと思いながら御影はその獣人からまるで剣を引き抜くかのようにして拳を抜き、そのまま左から来る獣人に対してさっきと同じ胸の中心部を打ち抜いた。そして右から来た獣人は回し蹴りの要領で左足のかかとを打ち込んだ

二人の獣人はリーダー格の獣人と同じような状態になって三人でその場にひれ伏した

御影の右手の甲から砕け散った骨が突き刺さり外に出て血を出していた

しかし彼はそのことを何も気にすることなくロキの手をつかんだ。血だらけでない左手で


「ほら、さっさと行くぞ」


しばらく呆気にとられていたロキはそのまま御影に連れられて学園の校門まで連れて行かれた。後に三人の獣人は人工島特別治安局が来て事後処理を行った

そして校門まで来たロキがようやく正気を取り戻すと御影につかまれていた腕を振りほどき怒りの形相でこっちを睨んできた


「何だ?どうした?」


まるで自分が怒られる理由が解らないと言ったように御影は困惑するがそれでもロキはその表情を改めない


「なぜ、何も言わない」


「はぁ?」


「私のせいでこうなったんだろ!?なら文句の一つや二つくらいあるだろ!!」


「別に文句なんてない。俺が好きでやったことだしな」


「何!?」


「お前だってあの程度の相手はできたはずだ。それを俺がややこしくしただけでお前の非は全くない。そうだろ?」


「だ、だが・・・」


「それに異能者が使者を守るのは当たり前だ。その逆だってそうだ。だから別に何かを言う筋合いもない」


「しかし私がお前の後をついていれば、こんなことには――――――」


「結果論をどうこういうのは好きじゃない。もしかすればお前があいつらと出会わなきゃ違う奴があっていたかもしれない。それがたまたまお前だったていうわけさ」


それでもロキは御影が右手から流している血を見て不安げにしている

御影はそれを見てふぅ、と息を吐いた


「別にこの程度どうということはないし、死にもしない」


ぷらぷらと平気そうに手を振っていると後ろから来た人物にその手を思いっきり握られた


「ぐギャアアアアアアアア――――――ッ!!」


学園全体に響き渡るであろう断末魔が御影の口から出ていた


「これのどこがどうということはないんだ。ん?」


負傷した右腕を離され御影はそのまま右手を抱くようにしてその場に蹲る

その行動に様々な不安を覚えたロキがその場に座り込んで傷を確認しようとしたがその前に御影が背後の人物に振り向きにらみを利かす

そこには得意げな表情でやってやったと満足そうな顔を浮かべた風紀委員長がいた


「一昨日のお返しだ」


「あ・・・・・あんたねえ・・・おおお―――――」


御影はそのまま殴りとばしもしたかったが女を殴るのは男としてどうかと思った瞬間に先ほどの傷の痛みの余波が来てまた蹲ってしまう


「まあ、簡易的な再生医療機器ならこの学校にも揃っている。直ったら授業を受けろ。それまでは私からお前の担任に言っといてやる」


そう言うと今度は風紀委員長が御影の手首をつかみおもむろに歩きだした

ロキはその騒動において行かれる形となりどうしていいのか分からなくなっていた


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