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事実の端

 将軍とひ弱も、サイネリアの様子から、立ち上がっていた腰を下ろした。

 が、目の前の光景に、冷や汗を掻く。


「魔女殿、そんなに不躾に見てはっ」


「ああ、その黄金に命を育む木の色を混ぜたような神秘的な色には、きっと女神ノルンでさえも嫉妬するだろう」


 蕩けるような色を浮かべてそう言ったカーネルに、ゴッカルはガクッと脱力したのは言うまでも無い。


「ええ、王子はそう言うお方でした……」


 ボソリと俯いて呟いたゴッカルの台詞と同時に、舐める様に「不敬だ」とどこぞの大臣に糾弾されそうな程に、カーネルへと注いでいた視線を引き剥がした。


「失礼しました」


 カーネルの先ほどの台詞は丸ごと無視して、王族を不躾に観察した非礼を詫びる。

 まさに、観察だ。


「殿下のお顔によく似た面影を、存じております」


 そう一言呟いたサイネリアに、カーネルは気障ったらしい雰囲気を引っ込め、将軍は項垂れていた顔を上げ、ひ弱(まだ名前を聞いていない)は緊張に冷や汗を流しながら背筋を伸ばした。


「ボルマット殿下が行方不明になられたのは、一ヶ月前だとお聞きしました」


 カーネルがこくりと頷く。


「一ヶ月前より、滞在していた男がおります」


「していた?」


 カーネルの鋭い指摘に、サイネリアは一つ頷くと、もう居ない事を話す。


「ええ、今日、亡くなっています」


 ガタンッ

 音もなくソファーから立ち上がったカーネルは、まだ回復しきっていない体力のままに、音を響かせて机へと辛うじて手を突いた。

 将軍とひ弱が慌てて身を乗り出す。


「まだボルマット殿下と決まった訳ではありません、魔女殿のお話を聞かせていただきましょう」


「そうですよ、殿下」


 宥める二人に、立っていた気を落ち着けて、静かに座る。


「すまない、続けてくれ」


 嫌な予感に顰められた眉に見ない振りを決め込んで、サイネリアは視線で将軍とひ弱にも腰掛けることを促す。急いで座った二人を確認して、再び口を開く。


「死因は不明です。

 頭部の負傷、それに、何故か鈴蘭の香り。」


「スズラン?」


「この国では、殆ど馴染みのない花でしょうね。

 この花ですよ」


 これ、と手で指し示しているのは、全員が囲むテーブルの中心。ひと枝にいくつもの鈴がぶら下がっているような、小さい花だ。白に、サイネリアが改良した、紫の色とを活けてある。

 最後、バレンの胸の内出血に死因を今一度たしかめようと、頭部を確認しようとしたとき、確かに鈴蘭の香りがした。

 サイネリアの言葉を聞いて、カーネルは身を乗り出して鈴蘭に顔を近づけると、納得したように身を引いた。


「強い香りだな」


「遺体を見た方が早いでしょう。

 皆さんは此処にいらしてください、私の家です。安全でしょう」


「一体、何処へ……」


 ゴッカル将軍の呟きに、サイネリアは少しだけ笑うと、ソファーに掛けてあったフード付きのマントを手にとって、フードを目深に被る。

 これで顔も年齢も、全く分からなくなる。身体の線の細さに、辛うじて女かと分かるぐらいか。


「事実を、回収しに」


 そう言って、サイネリアは暗くなり始めた森の中へと姿を消した。

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