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手掛かりの糸

「ここは、一体……」


 頭が痛いのか、こめかみを押さえながらも周囲を見回す。


「ご気分は如何ですか?」


 立ち上がってカーネルの傍で佇むと、サイネリアはもう一言声を掛けた。


「ああ、俺はとうとう天国に来たのか……

 女神の姿が見える。

 ……何か、むさ苦しい髭面が見えた気がするが、あれは俺の脳の錯覚だな」


 サイネリアの手を取って気障ったらしく手の甲に口付けたかと思うと、背後に見えるゴッカル将軍とひ弱を見て、現実逃避のようにサイネリアを真っ直ぐに見つめなおした。


「ところで、麗しの美の女神よ、一体どうなったと言うから俺は此処で寝ているんだ?」


「カーネル殿下、(わたくし)はサイネリア・パルケット・ヴィヴィッド。

 王家に代々お仕えして参りました、善き魔女の一族でございます。尤も、一族とは名ばかりで、ヴィヴィッド家は私一人しかおりませんが」


 サイネリアの素性を聞いて、カーネルは何か思い出したのか、慌ててベッドから降りようとする。


「殿下、今しばらくは安静にっ」


 サイネリアも慌ててカーネルをベッドに引き止める。脚はもう既に床に下りているし、辛うじて腰だけがベッドに乗っただけの状態ではあるが。


「兄上はっ!?」


 サイネリアを見たあと、ゴッカル将軍へと視線を外して声を荒げる。

 やはり、この町にはボルマット王子を捜しに来たらしい。


「森へと入る寸前、殿下は突然倒れられた。

 そこを、魔女殿にお助けいただいたのです。ボルマット殿下は、残念ながら未だお姿も見えず」


 将軍の報告を聞いて、カーネルは脱力したように「そうか」と一言零して、力を抜く。カーネルの肩を押していたサイネリアも力を抜いて、思い当たる節を報告しようと試みた。


「殿下、ご負担でなければ、お話をさせていただきたいのですが」


 この町に住む魔女の言葉に、何か手掛かりがあるかもしれないと察したのか、「分かった」と言って立ち上がる。

 別にベッドに座ったままでも良かったのだが今更言うのもあれなので、ふらつくカーネルの肩を支えながら歩く。


「……」


 そこで気付く。空いているソファーは今立っているサイネリアの席と、その隣だけだと。


「どうかしたのか?」


 首を傾げるカーネルから目を逸らして、「いえ……」と歯切れ悪く返すと、カーネルをソファーに座らせて、自分もその横に腰を下ろす。

 ……心臓に悪いとはこのことだ。

 カーネルの美貌は、国民に持て囃されるほどで、話だけは聞いていた。だが、聞くと見るとでは大違いだ。男であるにも関わらず、幾人もの吟遊詩人たちにその美を歌われた、ノルン国の美貌の王子。

 先ほどから気にしないようにはしていたのに、カーネルが隣に座って、真摯に見つめてくるのだ。先ほどのようにふざけた様子でもなんでもなく。


「……では、今からお話を致します。

 が、田舎者の戯言だとでも思って聞き流していただいても構いません。」


 そして王子の美貌によく似た顔を、サイネリアは知っていた。そちらには、こんなにも感動など覚えなかったが。

 一ヶ月前から、この町に住んでいた、男のことを。

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