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立場

「侍女はジルットの他に2名付ける。

 ここでの立場は、将軍の姪御が、婚約の申し込みに来たことになっている」


「ははぁ、そりゃあ一体誰のさ?」


「勿論俺だが。」


 カーネルが事も無げにそう言い切ると、ジルットは嫌な笑みを浮かべてカーネルを眺める。


「別に待遇さえ気にしなきゃ、

 侍女だとか女官だとか、その方が人の目は惹かないでしょぉ?_」


「サイネリアは人目を惹きすぎる。

 手も荒れてない、所作も洗練されている。

 何より俺と密会するのはこの城の中では限界があるからな、それなら身分相応の人間に、俺が会いに行っているという方が自然だろう」


 女官の地位まで来れば、行儀見習いとして貴族の娘が来ることも多い。手が綺麗で、所作が洗練されていても、別段不自然ではないのだが、カーネルがサイネリアを婚約者候補として迎え入れたいのには他にも理由がありそうだった。


「まあアンタの場合そうかもねぇ

 浮名を馳せる王子様、ついに本命現れり!証拠によく面会に御出でになる!!

 てな感じ?

 女関係の方がアンタの場合皆納得してくれるもんねぇ」


 ニヤニヤと笑いながらそう言うジルットに、カーネルは何故か胸を張って言い張る。


「世の中の花は(すべか)らく愛でるべきだからな」


「「はぁ……」」


 成り行きを見守っていたサイネリアとジルットは同時に溜息を零す。


「アンタはそう言う奴よ」


「ジルットは体術にも長けている。勿論侍女の仕事もこなせる、城での事はジルットに聞くといい。

 俺はそろそろ母上に目通りをお願いしてるからな、もう行く」


「あー……

 まぁお母上にはご愁傷様ですって伝えといてやぁ」


 ジルットは、ヒラヒラと淑女らしからぬ所作でぞんざいに手を振る。


「ああ、伝えとくよ」


 それで正装だったのかと納得して、ドアに向かう背中にサイネリアは丁寧に頭を下げた。


「行ってらっしゃいませ」


 ドアに手を掛けていたカーネルは驚いた様に振り返って、サイネリアの姿を見て微笑んだ。

 

「行ってくる。

 夕食は一緒に摂ろう、連絡事項も食事中に失礼だがそこで伝えるよ」


 そう言ってカーネルはドアの向こうへと消えていった。


「さて、」


 ドアの閉まる音にサイネリアが頭を上げると、人の悪い笑みが此方を凝視していた。


「晩餐に顔をお出しになるようですね、お嬢様」


 言葉遣いは丁寧なのに、ニヒッと笑い、不遜に両手を腰に当てているジルットに、サイネリアは引きつった笑いしか返せなかった。


「さあさあ、飾り立て甲斐のありますことっ

 先ずは、湯浴みですねぇ」


 サイネリアは頭の中で初めて神に祈った。


――ああ、神様、どうかお慈悲を……

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