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本格的に突っ込んだ

「これは魔女の秘薬ではないのか?」


「ただの疲労に効果のある薬ですよ」


「しかし、空腹感がなくなったが」


「よほど空いてらしたんでしょう、そう言う時は少しの量で満腹感を感じることもございますので」


「なにやら紅茶の茶葉の前にも、投入していたのは?」


「……薬の材料ですよ」


「冷気のようなものが見えたんだが?」


「……」


 思わず額を抱えそうになる。

 この王子はお飾りでも、ぼんくらでもない。頭の回転は良いし、己の魅力を熟知して行動している。

 肩に切りそろえられた金の髪が煌めく角度も、バイオレットの深い瞳の神秘的な美しさも、整っている顔の造作に浮かべる蕩けるような笑みも、均整の取れた身体に滑らかな肌が織り成す色香も、きっと全て分かっているのだ。

 分かっていて、和らいだ表情で無邪気にそんなことを聞いてくる。だが、答えられる訳が無い。魔女の掟にも等しいものを、簡単に口には出来ない。思わず頷きそうになるが、なんとか堪えた。


「…殿下は、何故ボルマット殿下をお捜しに?

 このままいけば、王位は殿下のものとなります。なのに、何故ボルマット殿下を連れ戻そうとなさいます?」


 話題の転換をと、カーネルの興味を引きそうな話を振る。


「兄弟がそうするのは、おかしいか?」


「いいえ」


 首を横にふる。

 真摯なカーネルの瞳に、魅入られる。


「王族として生まれたと言うだけで、俺達はどこまでも兄弟だ。

 醜く争い、足の引き摺りあいやこけ落としをする宮廷という、ひとつの社会を見てきた。

 宮廷は、人の醜い欲の渦巻きを、縮小したものだと思うんだ。権力も、富も、名誉も、それは人の生み出し積み立ててきた財産だが、同時に人を魅了して止まない。

 魅力は人の醜い部分を、簡単に引きずり出す。国の象徴、そんな魅力に溢れた場所なんだ、欲が溢れるのも当然と言うもの。

 人の醜い本性の、縮図のようだと思うよ。このように、外に出ると尚更」


「そうですか」


 ただひとこと呟いて、サイネリアは穏やかな気持ちで目を閉じる。

 魅力。富、名誉、権力、金、きっとあらゆるものを指すのだろう。それは人にも言えることで、カリスマ性に魅せられると言うことは、その魅力にとり憑かれるということ。すなわち、善悪やあらゆるものの判断基準を、曖昧にしてしまうと言うことだ。

 それを否定もせず、肯定もしないまま、そこに有ることとして述べたカーネルに穏やかな気持ちになる。


「……それだけ?」


「何が?」


 問われるとは思いもしなかったサイネリアは、思わず敬語も忘れて返してしまった。


「いや、そうじゃないとか、そのとおりだとか、何かあると思ったんだが」


「はあ、他人の考え方をどうこう言って、何の意義があるんです?」


「……国の大臣たちは、そうやって自分の考えを王に述べるのが仕事だぞ」


「「……」」


 サイネリアもカーネルも、お互いの顔を見て暫く沈黙する。

 カーネルの口元がふよっと蠢いたのを見て、サイネリアも思わず目元が綻んだ。お互いふっと笑って相好を崩すと、少しの間笑う。


「カーネル・ウン・ゲイリアム・メノン

 メノン国王家第二王位継承者、及び第百二十七代目国王第二嫡子として、現在は国政に関わっている」


 いきなりサイネリアを立たせてテーブルとソファーの傍から移動して障害物がないスペースに来るやいなや、改めての自己紹介のつもりか、丁寧にお辞儀をするカーネルに習って、サイネリアも恭しく頭を下げる。

 正直、王の威厳とはこれを言うのかもしれないと思った。

 圧倒的な存在感、相手を屈服させるに値する威圧感、それらはカーネルの自信によってさらに溢れんばかりだった。


「サイネリア・パルケット・ヴィヴィッドと申します。ヴィヴィッド家十代目にございます。

 王家より賜りました、善き魔女の呼び名により、人々と恙無(つつがな)く生活させていただく身にございます」


 一二七代続く王家に対して、ヴィヴィッド家は、サイネリアで十代目。魔女と人間の寿命の差がありありと窺える。


「ではサイネリア、王家にはまだその身は預けているということか?」


 少し高い位置にあるカーネルの瞳は、サイネリアを見定めているようだった。


「ヴィヴィッド家は、代々そうしてお仕えして参りました」


「では、これからはどうなのだ?」


 そう言うカーネルの瞳からはふざけた雰囲気はなかったが、どこかこのやり取りを楽しんでいるように窺えた。


「それは……」


 少し足踏みしたサイネリアを鋭く見抜き、


「望むものを、約束しよう」


 そう言ったのだ。

 魔女にも望めないものが、王家と言えども人間の手に入れられるわけが無い、きっと誰もがそう思うのだ。サイネリアだとて、思わないわけではない。だが、カーネルはそんなことは百も承知のはずだ。この王子は、お飾りではないのだから。

 サイネリアは、その場に跪く。手を祈るように組んで、片足を立てて、目をそっと伏せる。


「仰せのままに、お仕えいたします。

 カーネル様」


――ああ、これで、平穏な暮らしとはおさらばかしら。


 それでもどこか、胸躍る自分が居たことは、サイネリアの半分空いている心臓のスペースにそっと仕舞う事にする。

ちょっと厄介な菌に侵されまして、寝込んでおりました(´・ω・`)

更新が遅れて、本当に申し訳ありませんでした!!!+。・(Pд`。q)゜。+ 

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