あの日『彼とボク』
ここからは『私が見たもの』の番外編となっています。
「私は後悔しない。これも世界の規則だ」
これは彼がボクに向けた言葉。しかしながら、彼の表情を見ればそれは嘘だと分かる。だからボクは意識的に彼を追い詰める言い方をしてみた。
「本当にキミはそれで後悔しないのかい? 本当に本当に本当に、だね? 言っておくけど、もしも嘘だったとしたらボクは怒るよ? 全身全霊をもってしてキミに怒りをぶつけるだろう。ただ勘違いしないで欲しいのは、それは決してボクがキミを見放すわけでもなければ、縁を切るといった馬鹿げたことじゃない。ボクはそれを言える立場じゃないからね。平凡な言い方をすれば、それは君の事を思ってこそということだよ」
彼はわたしに無表情で謝った。こういう奴さ。何事にも無関心を装い、悟りを開いているかのようで、実はただただ諦めているだけの小さな奴。けれど、ボクは彼のことが好きなのだった。
「別にいいんだよ。あの時ボクの家に来てくれなかったことなんて別にどうでも良いさ。キミが財産を二度も失ったことを、本当のところはどうでも良いと思っているのと同じでね。おっと、これは失礼。言い方が直截的過ぎたね。ボクはこういうところがいけない。注意しなくちゃいけないと思ってるんだけどね。どうしても直截的過ぎる言い方になってしまう。許しておくれよ? 今回のことも、どうか許してくれ」
やっとの思いでへらへらと笑いながら彼に謝って、ボクは家路に着いた。
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