妹ばかり優先する夫と離縁致しました。わたくしの子はわたくしが育てます。誰が渡すものですか。二度と顔を見せないで下さいませ。
「さぁ、マリリーア。手を。私がエスコートしないと、よろけてしまうだろう?」
「嬉しいですわ。お兄様」
いつもそう…‥いつもいつもいつも。
ディフェリーヌの婚約者、エルド・リセル公爵令息は、妹をいつも優先する。
ディフェリーヌ・オルク公爵令嬢にとって、大事な夜会である。
歳はエルドとディフェリーヌは互いに18歳。同い年の二人は二月後、結婚式を控えていた。
今日はジリア王妃の誕生日を祝う夜会だ。
ジリア王妃は、ディフェリーヌの事を可愛がってくれた。
ジリア王妃の妹リリアがディフェリーヌの母である。
伯母に当たるジリア王妃は、母を早く亡くしたディフェリーヌの事を娘のようにかわいがってくれている。
リセル公爵家は名門である。
ジリア王妃が、名門であるリセル公爵家に命じて結んだ婚約。
二年前に結ばれた婚約。
エルドはそれなりにディフェリーヌに対して婚約者として接してくれる。
週に一度のお茶会。誕生日のプレゼントの花やドレス。
金の髪に青い瞳のエルドは美しくて、銀の髪に青い瞳のディフェリーヌとはお似合いだと言われていた。
しかし、彼は優先するのだ。妹のマリリーアを。
マリリーアが夜会に行きたいと言えば、マリリーアのエスコートをし、ディフェリーヌは放っておかれる。
マリリーアは16歳。エルドはそれはもう、マリリーアの事を可愛がっていた。
兄に似て美しいマリリーア。
まだ婚約者もいないマリリーアは兄エルドにべったりだ。
ディフェリーヌは王妃様の誕生会の夜会はぜひともエスコートして欲しかった。
でも、マリリーアをエスコートし、放っておかれたディフェリーヌ。
今に始まった事じゃない。
ジリア王妃の結んだ縁で無ければ、婚約解消している所だ。
いくら政略とはいえ、ないがしろにされるなんてわたくしのプライドが許さないわ。
ディフェリーヌは気が強かった。
しかし、気が強いディフェリーヌにとってジリア王妃は母みたいな存在である。
そんな王妃を悲しませたくない。
だから、ジリア王妃に聞かれた時には、
「婚約者と上手くいっているの?夜会で妹マリリーアをエスコートしていたそうね」
「婚約者と上手くいっております。妹思いなので」
と心配かけまいと。父や兄に聞かれても、
「上手く行っておりますわ」
と言うしかなかった。
名門リセル公爵家に嫁がねばならない。
今から気が重い。
あの妹マリリーアがいる家に嫁がねばならないのだ。
マリリーアを優先するエルド。
わたくしはあんな家に嫁ぎたくない。
リセル公爵家に訪ねた事があった。
リセル公爵夫妻もマリリーアを可愛がっていて。
公爵夫人が、
「娘はエルドにべったりで。そろそろ婚約者を決めないとと思っているのに」
マリリーアは頬を膨らませて、
「わたくしはまだ婚約者はいらないわ。お兄様がいればいいのよ」
エルドは嬉しそうに、
「マリリーアは甘えん坊だな」
そう言ってマリリーアの髪を撫でる。
マリリーアはディフェリーヌの方を見て、
「お兄様はわたくしをとても大事にしてくれるのよ」
「妹思いなのですね。エルド様は」
「ええ、わたくしの事が好きで好きでたまらないの」
エルドが嬉しそうに、
「本当に可愛いマリリーア。これから先もマリリーアと一緒に暮らせるなんて嬉しいよ」
驚いた。
いずれどこかへ嫁いでいかねばならないはずなのに。
マリリーアはエルドに抱き着いて。
「ずっと結婚しないでこの家にいるわ。お兄様と一緒にいるわ」
「私もマリリーアを離さないよ」
リセル公爵も、
「マリリーアには苦労をさせたくないからな」
公爵夫人も、
「マリリーアは幼い頃、死にかけたのよ。でも今は健康になって。婚約者探しは急ぐことはないわ。結婚したくなければこの家にずっといればいいわ。ディフェリーヌ。マリリーアを結婚しても大事にしてあげてね」
この家の人間は皆して、マリリーア、マリリーア、マリリーア。
幼い頃、死にそうになったからって。マリリーアを甘やかして。
マリリーアがこちらを見ている。
そして涙を流して。
「ディフェリーヌ様はわたくしの事を邪魔に思っているのだわ」
ディフェリーヌは慌てて、
「違うわ。そんな事を言ってはいないわ」
「だって、こちらを睨んでいたもの」
「睨んでいないわ」
「いえ、怖いっ。お兄様っ」
エルドはマリリーアを抱き締めて、
「王妃様の結んだ婚約だから、君と仕方なく婚約したが、そうでなければ、大事なマリリーアを睨むような女とは婚約しなかった」
そう言われて、ディフェリーヌは悲しくなった。
この公爵家にいる人たちは皆、敵なのだわ。
わたくしにとって皆、敵‥‥‥
でもジリア王妃様を悲しませたくない。
だったらわたくしは戦うわ。
二月後、豪華な結婚式を挙げた。
国王夫妻も出席して、王都の中心にある大きな教会で式を挙げた。
沢山の貴族達が出席し、両家の縁を喜んだ。
ディフェリーヌは美しい白い花嫁衣装に身を包んで、エルドも白のタキシードを着て、共に挨拶に回る。
何故かマリリーアも真っ白なドレスを着て、エルドの傍にべったりとくっついて、一緒に挨拶していた。
「リセル公爵家のマリリーアです。兄をこれからもよろしくお願いします」
挨拶をされた貴族達は、内心では驚いただろう。妹が挨拶を共にするだなんて普通ならあり得ない。
ただ、夜会でのエルドがマリリーアをエスコートして出席しているのを皆、知っていたので。
「リセル公爵令嬢。挨拶をして頂き有難うございます」
「白のドレス、似合っておりますよ」
とにこやかに皆、対応していた。
白なんてあり得ない。
白は花嫁の衣装の色。
わたくしに対する嫌味かしら。
リセル公爵家の人達は何も言わない。
出席した父オルク公爵と、兄のベルクは、
「本当にリセル公爵家の人間はっ」
「礼儀がなっていませんね。父上」
ディフェリーヌは二人に向かって、
「今に始まった事ではありませんわ。こうして結婚したからには、わたくし、強くありたいと思っております」
兄が笑って、
「さすが、ディフェリーヌ。頑張ってくれ」
結婚式も終わり、屋敷へ帰ると、初夜が待っている。
ディフェリーヌは、エルドに対して、
「結婚したからには、きちっと夫婦の務めは果たして下さいませ。いいですわね?」
エルドは頷いて、
「当然だろう?私達は結婚したんだ」
そこへ、マリリーアが飛び込んで来た。
「お兄様。怖い夢を見たの。一緒に寝て下さらない?」
エルドは慌てたように、
「怖い夢を見たのか。ああ、一緒に寝てやろう」
この二人は一緒に寝ているのだ。
普通にあり得ない。そう思ったが、ディフェリーヌは、
「今宵は大事な初夜ですわ。リセル公爵家の跡継ぎを作る為にも」
エルドは怒りだした。
「マリリーアが怖い夢を見たと言っている。私を頼って来ているのだ。初夜は明日にしよう」
そう言って、部屋をマリリーアと一緒に出て行ってしまった。
部屋を出る時にマリリーアがにやりと笑ったような気がした。
わたくしは負ける訳にはいかない。
この公爵家で強く生きなければ。
翌日、涙ながらに、リセル公爵夫人に訴えた。
「子を作る為の初夜だったのに、マリリーアが怖い夢を見たからと、エルド様を連れていってしまったのです。わたくしはリセル公爵家の為に早く世継ぎを産みたいのですわ。せっかく嫁いで来たのですもの。公爵家の為にお役に立ちたいのです」
リセル公爵夫人は眉を寄せて、
「マリリーアにはエルドに頼るのは遠慮するように言っておきますわ」
しかし、翌日も、翌々日も、二週間、エルドはマリリーアの部屋で夜は寝ているようで、ディフェリーヌとベッドを共にしなかった。
二週間経ってやっと現れたエルド。
嫌々ながら、ディフェリーヌを義務とばかりぞんざいに抱いた。
悲しかった。むなしかった。愛されていないのが良く分かった。
夜の営みが終わった後、隣で寝ているエルドが、寝言で。
「マリリーア…マリリーア」
妹の名前を呟いて‥‥‥
胸が痛む。
王妃様に頼まれて結婚したのよ。わたくしは。
名門貴族同士だからって。わたくしの事を思って結んでくれた縁。
だから、わたくしは泣かない。
わたくしは絶対に泣かない。
強く生きてみせる。
リセル公爵夫人から公爵家の仕事を習って、懸命に毎日を過ごすディフェリーヌ。
あれからエルドは夜はマリリーアと一緒に寝ているみたいで、一緒に寝なくなった。
だが、一回だけの営みで子が出来た。
ディフェリーヌは神に感謝した。
「子が出来たようですわ」
リセル公爵夫妻は大喜びした。
「これで我が公爵家も安泰だな」
「よくやったわ」
エルドは、
「子が出来るなんて。凄いな」
エルドの隣にいたマリリーアは、
「まぁ子が出来たなんて。愛されていないのに子が?子供が可哀そう。そうだわ。わたくしが育ててあげる。お兄様の子供なんでしょう。きっと可愛いわ」
エルドも頷いて、
「そうだな。マリリーアに育てさせればいい。君は忙しいだろう?」
リセル公爵も頷いて、
「マリリーアはこの家にずっといたいと言っている。子を持つことなど出来ない可哀そうな娘だ」
リセル公爵夫人も、
「マリリーアに育てさせてあげて。子はこれからもまた作ればいいじゃない?」
この人たちは自分から子供まで取り上げるつもりだ。
マリリーアの為に。
皆、マリリーア、マリリーア、マリリーア。
何かが砕けた。
強くありたいと思った。
だから、夜の褥も我慢した。
酷い夜だったけど、それでも、強くありたかったから。
でも…子供まで?
わたくしの子供よ。リセル公爵家の為に一生懸命産んで、育てようとしたわたくしの子よ。
お腹の中でまだ感じないけど、わたくしの大事な子よ。
それを取り上げるなんて。
リセル公爵家を飛び出した。
雨の中、歩き続ける。
ジリア王妃様の結んでくれた縁。縁に答えたかった。
でも、わたくしはもう駄目。強くなれない。
わたくしは‥‥‥涙がこぼれる。
馬車が止まって、中から人が声をかけてきた。
「こんな所を歩いていたら風邪を引く。って、君はディフェリーヌ?」
彼はジリア王妃の弟のリード・ギュルダン公爵だった。
ディフェリーヌの叔父だ。
領地経営は義弟に任せて、隣国に5年前に行って、外交官として働いていた。
リードの腕に支えられて、馬車に乗り込むディフェリーヌ。
リードの顔を見たら涙がこぼれて止まらなくなった。
「叔父様。お久しぶりです。外国から帰ってらっしゃったの?」
「ああ、結婚式には出席できなくてすまない。それにしても何故、こんな所で」
「わたくしはっ‥‥‥」
リードに今まであったすべての事を話した。
辛いリセル公爵家の生活。マリリーア優先で、自分はないがしろにされて、
お腹の子まで取り上げられそうになって。
リードは慌てて、
「ともかく急いで我が公爵家へ、お腹の子に何かあったら大変だ」
王都にある公爵家に着けば、リードの妻のジュリアが出て来て、ディフェリーヌを気遣ってくれた。
着替えさせてくれて、暖かいミルクを出してくれて。
ソファに座って、ミルクを飲んで、身体があったかくなったら、余計に涙が溢れ出てくる。
ジュリアは、ディフェリーヌに、
「大変だったわね。さっき夫から聞いたわ」
「叔母様。お久しぶりです。ごめんなさい。泣いてばかりいて」
そこへ、一人の黒髪碧眼の青年が入ってきた。
「姉上。お客様ですか?」
ジュリアが、ディフェリーヌを紹介する。
「リセル公爵子息夫人、ディフェリーヌ様よ。失礼のないように」
青年は自己紹介をした。
「この家で働いているユリアス・コルド伯爵令息です。姉上の夫であるリード義兄上の手伝いをして領地経営をしています。義兄上は今までいなかったので、私が代わりに」
「リセル公爵子息夫人のディフェリーヌです」
ユリアスはディフェリーヌの事をジュリアから一通り聞いて、
「ジリア王妃様に話をした方がいい」
「でも、わたくし、王妃様がせっかく紹介してくれた縁をっ」
「王妃様は貴方が不幸になる事を望んでいないと思いますよ」
ジュリアも頷いて、
「そうですわ。王妃様にお話しした方がよいとわたくしも思います」
後から部屋に入って来たリードが、
「私も付き添ってあげよう。姉上は決して君の不幸を望んでいないはずだ。ずっと君の事を心配して可愛がってきたから。私とて君の母であるリリア姉上が亡くなった時はとても悲しかった。私も君の事を心配していた一人だよ」
叔父叔母夫妻は外国に行っていたから、今まで疎遠だった。
でも、こうして身内として心配してくれてとても嬉しかった。
王都にあるオルク公爵家に送って貰ったら、父オルク公爵が滞在していて。
オルク公爵は話を聞くと怒り狂って。
「私もジリア王妃様に会う事にしよう。苦労をかけたな。ディフェリーヌ」
そう言って労わってくれた。
翌日、父オルク公爵と、リード・ギュルダン公爵と共にジリア王妃に面会した。
王妃は三人にすぐに会ってくれて。
リードが、ジリア王妃に今まであった事をディフェリーヌに代わって説明してくれた。
ジリア王妃は涙を流して、ディフェリーヌを抱き締めてくれて。
「ごめんなさい。貴方の幸せを考えての縁だったのに。貴方を不幸せにしてしまったわね。
貴方が望むなら離縁しなさい。貴方の事を愛しているわ。本当にごめんなさい」
そう言って謝ってくれた。
ディフェリーヌはジリア王妃に、
「ご期待に添えなくて申し訳ございません。わたくしが未熟なせいで」
「そんな事は無いわ。わたくしがしっかりと調べていれば」
「王妃様っ」
ジリア王妃の腕の中で、亡き母リリアの事を思い出した。
ああ、やっとわたくしは解放される。
強くなくてもいい‥‥‥やっとあの家から逃げられるわ。
そのままオルク公爵家に帰り、父オルク公爵が中心となって、リセル公爵家に離縁を申しいれてくれた。
リセル公爵夫妻とエルドが、慌てて訪ねてきた。
父も兄ベルクも、ディフェリーヌに面会しなくていいと言ったが、ディフェリーヌは三人に会う事にした。
リセル公爵は、
「お前のお腹の中に我がリセル公爵家の跡継ぎがいる。離縁を望むのは構わないが子はこちらに頂こう」
リセル公爵夫人も、
「マリリーアに育てさせるのよ。生まれたら子はこちらにもらうわ」
エルドも、
「王妃様が結んでくれた縁。何で離縁なんてするんだ。我が公爵家に何の不満が?」
ディフェリーヌは言ってやった。
「わたくしを大事にしないで、マリリーアばかり大事にして。わたくしの子はわたくしが育てます。誰が渡すものですか。二度と顔を見せないで下さいませ。不快ですわ」
エルドが叫ぶ。
「しかし、私の子がっ。マリリーアが可哀そうだ。私の子を育てられなくて」
この人は本当に酷い人だ。こんな酷い男はっ‥‥‥
ドアを開けて、四人の男達が突然入って来た。
「女を泣かせる男は屑だ」
「屑は辺境騎士団へ」
「正義の教育だ」
「さらっていこう」
ムキムキの男達がエルドを簀巻きにして馬車に押し込む。
エルドは叫ぶ。
「何で私がっーーー。私はマリリーアを大事にしていただろう?」
馬車の中から金髪の美男が顔を覗かせた。
「でもそちらのディフェリーヌ嬢を大事にしなかっただろう?だから、お前は俺達、辺境騎士団が貰い受ける」
エルドは泣き叫んでいたが、連れていかれた。
変…辺境騎士団は屑の美男を教育する辺境騎士団だ。
エルドはそこで、ムキムキ達に正義の教育を施されるだろう。
リセル公爵夫妻は、息子がさらわれてしまったので、肩を落として帰っていった。
翌日、マリリーアが怒鳴り込んで来た。
「お兄様をあの変態がいる変…辺境騎士団へやったのはディフェリーヌ。貴方ねっ。返してよ。お兄様が何をやったというの?」
門の前で喚きたてる。
そこへ馬車が止まって、ユリアス・コルド伯爵令息が降りてきた。
「そこへ連絡したのは、ジリア王妃様だ。王妃様なりの謝罪だったのだろう」
「お兄様は悪くないっ。お兄様はわたくしの事を考えてっ」
「だが、お前のした事は公爵令嬢としてあり得ない事だ。ジリア王妃様の顔を潰したお前はもう、社交界で生きていけないだろう」
「そんなっーーー。わ、わたくしはっ」
マリリーアは座り込んだ。
ユリアスはマリリーアを無視して、ディフェリーヌに面会を求めてきた。
赤の薔薇の花束を差し出して、
「私を次の結婚相手に考えて欲しい」
ディフェリーヌは驚いた。
「わたくしのお腹にはエルド様の子が‥‥‥結婚なんて考えられませんわ」
ユリアスは真剣な顔で、
「君が夜会で、エルドにないがしろにされている姿を遠くから見ていた。こんな美しい令嬢が‥‥‥私にとって君はあこがれだった。でも、身分も違うし、声をかける事が出来なかった。子供も私の子として可愛がりたい。義兄上の領地経営の仕事をしている。義兄上が余った伯爵位をくれるといっている。だから、どうか私と結婚して欲しい」
こんなわたくしでも幸せになっていいの?
こんな素敵な人と結婚していいの?
お腹に子がいるのよ。
エルドの子が‥‥‥
結婚していいの?
ユリアスはディフェリーヌに、
「もう、強くなくたっていいんだよ。私が一生、守ってあげる。君も君の子も守っていくから。どうか、私の腕の中に‥‥‥一生、抱き締めていってあげるから」
涙がこぼれる。
もう、強くなくたっていいのね。
頑張らなくてもいいのね?
この腕に飛び込んでいいのね?
わたくし、幸せになっていいのね?
ユリアスの腕に飛び込んだ。
そして、その腕の中で沢山、泣いた。
ユリアスと結婚したディフェリーヌ。
半年後、可愛い女の子が産まれた。
その女の子を抱っこして、ユリアスは凄く喜んでくれた。
「可愛い子だね。君によく似ている。大事にするよ」
リード・ギュルダン公爵もジュリア夫人も、ディフェリーヌとその生まれた女の子を可愛がってくれた。
なんて幸せな‥‥‥
風の噂で、マリリーアがリセル公爵家の領地に籠って家から一歩も出ない生活をしていると聞いた。
リセル公爵からは、孫に会わせてほしいと手紙が来るが、返事も書かずに暖炉で手紙を燃やしている。
もう、関係ない人達だから‥‥‥
今はただ、愛する家族と、毎日を幸せに過ごせる事を感謝するディフェリーヌであった。




