第十八幕:幸せな夢
やあ、君。ボクらは、大衆浴場の裏の広場で座りこんでいる。
石のベンチには、ジュッシュとリュコスが座っている。
ジュッシュは、リュコスの太ももに頭を預けて眠っていた。彼らの足元には、黒猫の星の子が鳴きながら、リュコスの膝に頭を擦り付けていた。
ジュッシュは、身体をゆっくりと動かし、寝返りをうとうとした。
「ジュッシュ? 起きた?」とリュコスは囁く。暗褐色の髪が風に揺れ、水色の目が細まってジュッシュを見ていた。
「オレの話、つまんなかった?」と彼は不満げに青いペプロスの裾をいじってみせた。
ジュッシュと呼ばれた哲学者は、ゆっくりと頭をあげて、周囲を見回す。
「ーーオデュッセイアにつまんないとこ、あったかな」なんて、リュコスは呟く。そんな彼を愛しげにジュッシュは見てたが、彼は決心したように立ち上がった。
「ーークリュシスのとこに戻ろう」と言って。
「え?姉貴のとこ?なんで?」とリュコスは不満気にジュッシュのキトンと裾を掴む。彼にとっては、この時間が二人のものだからだ。
「ダメだ。私たちは家族なんだ。
今こそ、君に言う。私たちは家族だ。
これから、ここで、生きていくんだ。」とジュッシュは狼に微笑む。
「クリュシスは、私たちの太陽なんだ。きっと、きっとねーー」
「姉貴が太陽ね。そりゃいい!オレが星なら、姉貴は太陽!あれ、月とかの方がいいんじゃないの?」
「月は、もういるんだーー。よし、帰ったら聴かせてやるよ。」
「おう!楽しみにしてる!」とリュコスは微笑む。
ボクらは、そんな会話を聞き耳を立てて聞くのさ。
そのくらいは、いいだろ?
おや、彼らが歩きだした。
ボクらも次の物語を開く時間だ。
次はどんな事が起こるのか?
それは、神のみぞ知るってものさ。
(こうして、物語は幕を閉じる。螺旋の中でも、何かが変わると信じながらーー)




