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ファウスト〜哲学放浪の幻視〜  作者: 語り部ファウスト


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16/18

第十六幕:哲学者の最初の物語

哲学者の作り上げたループの中。

囚われたのは神々だけではなく、

語り部ファウストも、その中にいた。

やあ、君。久しぶりだね。元気にしてたかい?ボクは、ずっとループの中さ。そうだ、君、哲学者の名前がわかっただろ?

あれから、ボクは彼の過去を見つめていたんだ。


ボクらがいるのは、アテネから遠く離れた地方。コリントスだ。高い丘のふもと。そのあたりに住むとある大商人の屋敷の中だ。屋敷の周囲には高い壁に囲まれて、まるで閉じ込められた気になる。


今からボクらが見るのは、哲学者ジュッシュがもっと幼かった頃だ。


彼は、どんな物からでも物語を考えてしまう夢みがちの子だった。

屋敷の中の客間が彼のお気に入り。

天井が高く、床にはキレイなモザイクが描かれて、木の寝台が置かれてある。その部屋の角で、ジュッシュ少年は、絨毯を敷いて、客たちを眺めていた。

特に吟遊詩人の詩に、こっそりと耳を傾けていた。

彼も楽器を弾きたかったようだけど、両親が許さなかった。


ある日、彼は吟遊詩人のように、両親に女神アフロディテの物語を聴かせた。

それが、そもそもの間違いだった。

両親は彼を頭がおかしい子だと言って、物語を評価せずに

ーー彼そのものを見た。

彼の両親にとって、

ジュッシュは不合格だった。

君が当たりくじを箱から取り出そうと、突っ込んで奥まで掻き回して、

引っ張り出したのが、

ハズレだった時と同じだ。

両親からの失望の目にさらされて、

彼は泣きたかった。

けど、感情によっては涙が流れない。


ファウストの魂を受け継ぐってのは、

そういうことなんだ。

周りの人たちには、

それが呪いとはわからない。


話を進めるね。

彼は両親の代わりに、

彼を母のように愛する奴隷の女がいた。

茶色い髪を腰まで垂らして紐で結んでた。

とても柔らかな声をしてた。

とても母性的な人だった。

特に水色の瞳で見られると、

誰もが瞳の中に、

吸い込まれそうに感じた。


ジュッシュの物語を聴いて、

彼の代わりに泣いてくれた。


その奴隷にジュッシュは母の温もりを求めた。本当の母は、彼をハズレと思ってたからね。ーー仕方ないさ。


彼女の名前は、わからない。

誰も名前で呼ばないから。

彼女は、ジュッシュにさえ名前を教えない。


ジュッシュは、彼女のことを好きだったが、彼女の物語は作らなかった。

夕暮れの庭の中で、

彼らはベンチに座ってた。

彼は彼女の乳房に頬を寄せて、

気ままに物語をするのが楽しかった。

「ねえ、ボクを捨てないでおくれよ。いなくなったら、アンタを許せなくなる。」そういって、彼は下唇を噛む。

「嫌いになる。きっと。きっとさーー」

彼の呟きは虚空へと飲み込まれていく。

そんな少年を見て、彼女の胸はときめく。いっそう彼を抱き寄せて囁く。

「運命が許す限り、そばにいます」と返す。

「かわいそうな坊ちゃん。あなたは物語をやめないでくださいまし。心の翼をたおらずに、どこまでも語ってください。どこまでも、羽ばたくのですよ」と少年を彼女は強く抱きしめた。

少年ジュッシュは、満足そうに微笑む。


でも、ボクらの知っての通り。

彼女がジュッシュの、そばにいる事はない。

彼の両親によって、追い払われる形で、コリントスのある将軍に売られた。

将軍は彼女のことを愛していて、

彼女も彼のことを少なからず想ってた。

そして、二人は戦場に消えてしまう。

花になったんだ。


だけどジュッシュは、

何もかも失った。


彼は物語を話す相手もなく、イヤな奴になった。

弟や兄たちの弱みを握り、脅しては利益を得た。

客たちには嘘をついて、両親がその嘘を聞いて、激怒する嘘さ。

嘘の内容は、そうだね、客に飲ませるものがもったいないから、余分な水を再利用して卓に出してると言った具合だ。


そして、彼は暴力も覚えた。


ここにいたら、家族か客か、どっちかを傷つけたろうね。

まさに最悪の鼻つまみものだ。

そのまま外に出たら、

海賊の仲間入りだ。


だけど、ある噂を彼は聞く。

女のソクラテスの話だ。

彼は、どうしても見たかった。

男を手玉にとり、賢く振る舞う女を。


そうして、彼は旅に出た。


(こうして、第十六幕は女のソクラテスと共に幕を閉じる。)

長いループの中、語り部の魂も疲弊していた。

「ボクはループから、出られるのだろうか」

声泣き悲鳴が虚空に響く。

次回を待つのだ、天使たち!

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