第十幕:弟の決意
二人の愛はごっこに過ぎない。
姉は弟に真実を告げ、遊びを続けないようにした。
やあ、君。男である事が幸せか。
女である事が幸せか考えたことは?
賢いってのは、時として、そんな問いを考えてしまう。
第九幕では、家族の商売成功と、愛の歪みについて、君と見た。
クリュシスは、彼女なりに哲学者と弟を不安に思っていた。
クリュシスはリュコスに話した。
哲学者が大衆浴場に一人で身を清めに行った時に、彼女の弟の耳を掴んだ。
「なんだよ、姉貴!」と悲鳴をあげる少年。
「リュコス。いい加減になさい。あんまり度が過ぎると、神さまたちから、罰をもらう事になる。」
「どんな罰だよ?女にしてくれるなら、歓迎だぜ」と姉を挑発した。
「なにをバカな!」と彼女はリュコスの頬をぶつ。
「あの人も、あの人だわ。こんな子を、こんな格好させて」とクリュシスはため息をつく。
「違う。ーー姉貴にはわからない!」
「わからないわよ。産めない子どもの遊びなんて」
この言葉が少年の心を叩きのめした。
彼は泣きじゃくり、嗚咽と共に地面に倒れ伏す。
「ああ、姉貴よ。オレを哀れに思うなら、今すぐ彼と結ばれてくれ!オレは彼の子を産めない。一生腹を痛めることもない!姉貴よ!お願いだ!」
弟の嘆きの呪いが、彼女を狼狽えさせた。
「なにをバカなーー」とためらう声と、未来を黄金の娘は想像したんだ。
彼との子に囲まれた自分たちを。
生活も安定し、母も楽をさせられるようになり、母を安心させられたら!
そんな想いと弟の泣き声に、姉は何度も後ずさる。
だけど、彼女は、その夜に哲学者も結ばれることになる。
リュコスがクリュシスに
服と哲学者の名前を渡したのだ。
(こうして、第十幕は青いペプロスと共に幕を閉じる)
姉の心に残った罪悪感。
弟の心に残った傷。
悲劇とは日常の中にある。




