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第七話
僕はなにも考えられなかった。なにかを考えようともしなかった。ただ、世界がまったく違って見えた。東からの日はあまりにも強すぎて、僕はこれまで開けっ放しだった遮光カーテンを久しぶりに引いた。
のろのろとした動きで、DVDをプレイヤーに入れた。初美が感想をくれると思った。だから僕は大学を一日休んで、ずっとずっと『サム・オア・エヴリ』を観た。
第七巻。二十話目。
いい話だった。
崖のシーンでは、ヒロインが主人公を信じていたからこそ、ヘリに乗る主人公を止めなかった。主人公もまた、ヒロインの心を知って覚悟を決めた。
泣いた。
遮光カーテンの向こう、子供の声、車の音、さお竹売りのアナウンス、自転車のブレーキをかける音、またも車の音、そして静寂がオーケストラのように鳴った。カーテンの色は白か黄色か黒のどれかにしか変化しなかった。「初美」と名前を呼んだら、またとめどなく涙があふれてきた。明日は、学校に行かないと。……行かないと。




