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第7話

 

 セーンはロードさんのお宅から帰りながら、気まずい雰囲気を思い出しては赤面していた。

「もう帰るぞ。絶対セピアに戻る。いつまでもこんな所に居たんじゃあ、恥をつみ重ねていくことになるな」

 決心したセーンが家に戻ると、爺婆留守!ヤモちゃん一家が壁から離れて、食堂にて一同でお食事中だった。実の所ニキ爺さんが執事さんに、何か食わせて褒めておけという指図をしていたのだが。

「なんだか、旨そうなもの食っているな。皆で寛いでいるじゃあないか、良いねぇ。ヤモちゃん一家。俺も混ぜてよ」

 今朝の泣きのヤモちゃんの横に座り、何を食べているのかじっと見てみるセーンである。観察するセーンに、何故か頬を染める・・・頬を染めたかのように見えるヤモちゃんだ。

「酒でもくらったのか、ヤモちゃん顔赤くないか」

『飲んでない。食べた』

 口元をスンスン匂ってみて、洋酒の菓子を食ったのが分かった。

「良いねぇ。ヤモちゃん俺の無い?ヤモちゃんの分で、余った菓子は無いかな」

 ヤモちゃんは彼の妹がたしなんで食べており、残りをポケットに入れているのを知って居た。

『ヤーモ、それやれ』

『ヤダよ』

『ヤダダメ』

 彼らが何を言い合っているか分かったセーン、

「ないのなら良いんだよ。ごめんね、ヤーモ、それ食べていいからね」

 まずいこと言ったなと思いながら、へたれたセーンは、テーブルに突っ伏した。

「セピアに帰りてーよー」

 思わずつぶやいて、又しまったと思った。

 だが、セーンの言葉に反応する者はいなくて、ほっとした。つっぷしているうちに眠っていたようで、執事さんが

「そろそろ、準備された方がよろしいのでは」

 と、言うので、起き上がるセーン。

「爺さん婆さんは」

 一応聞いてみると、

「王妃様を訪問されておいでで、このまま会場に行くので、セーン様は、申し訳ないがおひとりで会場に向かってほしいそうでございますよ。お召し物は出来上がっておりますし、御者は毎年行っておりますから、間違いはしません。ですから、さぼらず来てほしいそうですよ。ニキ様はお見通しですね」

「ちぇっ」

 セーンは、『こんなのは今日までで終わらせよう。ぜったい明日はセピアに帰るからな』

 そう決心した勢いで会場に向かった。そうでなければやっていられない気分である。


 一人会場に来たセーン。こんなパーティーとか初めてで、辺りの様子を窺うと、皆早々と来てディナーや高そうなワインなどを堪能するものらしい。出てくるものは高級品だ。セーンは知らずにのんびりと来て、出遅れ感がある。料理はまばらにしか残ってはおらず、残り物を食べる気はしない。家で軽く食べておいて正解だった。

 壁際にぽつねんと立っていると、国王夫妻や王太子らのお出ましで拍手が始まった。

 セーンもおざなりに、手をたたいていると王太子に挨拶しようと主だった貴族が並び出した。

「割と人気あるのかな」

 そう思わずつぶやき、辺りを見回す。なんだか若い奴さえ並んで挨拶する気の様である。

『へぇ、』と思いながら、

「爺さん婆さんが挨拶するなら、俺はしなくて良いんじゃないかな」

 誰も聞いてはいないが、そう言いながら着飾った人が珍しくてぼんやり見ていると、見覚えのある奴が、

「あれはリー、おやじだ」

 段々ムカついてきたセーンである。

 奴に一言文句言ったところで、こっちに実害はないはず。決心して奴の側に行く。(プロローグと同じ展開ですが話の流れでまた書いておきます)

 列の最後に並んでいたパパの横に何気なく寄って、セーンは口を開かず、言わば腹話術風に話す。

「おい、俺以外の皆は、セピア公国で適当に暮らしているってのに、俺だけニキ爺さんちに呼ばれて、何のことかと行ってみれば、爺さんの跡継げだと。知っているんだからな。お前が推したんだってな、俺に後を継がせろって。挙句になんか知らん奇妙な奴とお見合い?みたいな事させようとしたな。無責任な話したお前が居ないんだし、お見合いみたいなのは断ってやったけど。」

「じゃあ、別に構わないんじゃないのかな」

 前を向いたまま気のない返事をする、見た感じ20代後半の歳に見える恐ろしくハンサムな男。

 まだセーンが学生時代、北ニールへ行き、王の誕生パーティーに出席してみると、ニキ爺さんが遠くに居た若い男を指して、

「あれはお前のおやじだ。甥のリーに化けてやがる。リーは人付き合いが嫌でこんな所には来ないからな。ソルスロ一族一のハンサムのふりなんかしおって、みっともない奴だ。あんなふうにはなるなよ、セーン。一族の中じゃ、お前位しか真面なのは居ないからな。頼りにしているんだ」

 と言って、パパの若作り風に化けた奴を教えてもらっていた。パパは国の諜報部員とか言うのになっていて、いつもどこかに旅していたので、家にはほとんど居なかった。パパの事はよく知らないとも言えるセーンである。

「こっちは構うんだよ。明日になったら俺は絶対セピアに戻るからな。今朝もだよ。だいたい、集めた資料をなんで俺に送り付けて、ロードさんのところにもっていけとか指図するんだ。こんな所うろつくくらいなら、自分で持って行けよ。いらんこと、俺が行ってみたら、あっちの娘にも、なんか俺との婚約の話とか匂わせていた感じだったな。本人に断りもなく無責任な話すんなよ。迷惑しているんだからな」

「僕としては、何のことやらさっぱり。身に覚えはありませんよ。と言うか。君は一体どなたですかね。話の前に自己紹介をお願いしたいです。それと、僕の事を誰と思っているのでしょうね。最初は、自己紹介からと、習わなかったのでしょうか。その歳頃なら、どこぞの学校は卒業されているのでは?」

「とぼけるな、家に帰ったことがないから忘れたかもしれないけど、お前の息子のセーンだよ。どうだ、思い出したか」

「僕は27歳ですから、君の話では僕は7歳ほどで誰かを妊娠させたことになりますが、いくら僕が早熟と噂されていたとしても。それは少し無理があるのでは?」

 そこで、しげしげと彼の顔を観察するセーン。そして、親父の気配がないことに気付く。背中に冷や汗が出てくるのが分かった。

「パパじゃないのか。リー本人がこんなところにいるなんて、信じられないっ」

「へえ、君のパパは僕の振りをしていたのですか。と言う事は、君は噂の諜報部員、レン・ソルスロさんの息子ですね。君の話で察することが出来ましたよ。僕も家にいるのに、別の場所で僕の活躍のうわさを聞いていて、少し困っていました。君に一言言っても無駄でしょうね。君の言いようでは、彼に会うことはほとんど無さそうですし」

「あいつに文句があるなら、リーさんちで探したらどうですかね。もし見つかったら、出来れば僕がさっき言っていたことも併せて、言いたいこと言ってやってください。失礼しました。では・・・」

 セーンは後ずさりながら、立ち去るタイミングを計った。不味い事は理解している。息子は親の不始末について、責任はないはず。そう思いたい。

 しかし気付くと、挨拶の順番が直ぐそこまで迫っている。此処で立ち去ることは可能だろうか。ちらっと王族の方向に目をやると、王太子と目が合ってしまった。にっこり微笑んでこっちを見ていた。もう、此処で立ち去ることはできない。

 通り一遍の挨拶をしてリーは立ち去った。セーンもマネて、一言祝いを言って去ろうとすると、王太子が言った。

「セーン・ソルスロ君だね。君の事は、宰相から友人候補に推されているんだ。明日僕の部屋に来てくれないか。少し話をしてみたいな」

「はい、喜んで」

 なんでこうなった?セーンは兄弟や友人たちが居るセピア公国に戻って、気楽な日々に戻ることができるだろうか・・・



今日の第7話を投稿後これで終わったら、さぼった感じしますよね。自分で感じますから、読者はもっと思うところあるでしょうね。という事で8話も10分後出します。なぜわざわざこんなことを書くかと言いますと、書きだめておいたものが無くなりつつあるのです。投稿できる話が出来ていない場合は、黙って出さないことになります。反省の意味を込めて、名を「書きだめの龍」に改名します。意味がない気もしますが、名は体を表すとか聞いたことが有るので、書きだめ出来るように、改名するかもしれません。

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