第2話
セーンは自分の部屋でぼんやり爺さんを待っていると、まもなくニキ爺さんは瞬間移動でやって来た。数年前に会っているが、思った以上に老けて見えた。
「爺さん、しばらく会わなかったら、老け感マシマシだな。ユーリーン婆の心配は本当だったみたいだな」
会って早々だが、見た目の感想は言っておいたセーン。
「セピアに居たら性格がそんな風になるんだな。北ニールに居る子たちは成人したら、ちっとばかりは礼儀を知っているんだが」
言い返すニキ爺さん。
「セピア公国は成人は22歳なんだ」
「何だ、若いのをずいぶん子ども扱いしたい国だな」
「大学卒業で成人扱いにしているんだよ。どうせ親がかりだからね。僕は20歳で卒業したけど」
「何だって、去年から卒業していたのか。それなら去年連れて帰れば良かったな」
「へぇ、そんなに前から話は出来上がっていたんだね。本人が知らないのに。ったく、聞けば聞くほど気に食わないな」
「仕方ないだろう、お前のパパが、きっとセーンは冗談だと思うからと言うんだよ」
「ホント、冗談じゃなかったのかな。僕は能力調べられた事なんか記憶にないけど。磁気パワーとかあいつはなんでわかったんだろ。実際、ニキ爺さんの今の見立てでは、僕はどんな感じなの」
「うん、見た感じをはっきり言ってやろう。パワーの出し方を教えられていないから、だいぶため込んでいる。先代のグルードさんに似た磁力の能力のようだね。だけど先代と違うのは、時々頭からパワーが漏れているね。別に溜め込む必要がないからだろうね。その様子だと、地下の奴らは手出しする気はおきないだろうな。怖すぎるし。先代の木のを、襲撃する様子は有名だからね」
「ふうん、どんな様子だったって」
「館に着いてから話そう。俺がこっちに居るのが気付かれては不味い」
という訳で、セーンはニキ爺さんに連れられてセピア公国に別れを告げ、北ニールの首都にある城上空に、瞬間移動したのだった。
「いきなりこんな所に到着してすまなかったね。実の所私は瞬間移動は得意ではないからね」
「へぇ」
爺さんは急いで自分の家に、移動した。
玄関ロビーに着くと、執事さんが出迎えてくれた。ユンちゃんパパのお兄さんだそうで、確かに似ている。
「ちわっす。ソールの弟ですけど、例の案内状行っているんですよね。家族構成に載っている弟のセーンってのは僕の事ですから。よろしく」
「ああぁっ、随分世の中狭いですね。同じ名だとは思っていましたが。こちらこそ、よろしくお願いいたします」
ユンちゃんのパパよりもかなり年上のようだ。長男と末の弟の感じである。ニキ爺さんも、
「はは、本当だね意外と狭いじゃないか。その家族構成は訂正することになるだろうな。セーンはグルードに養子に来てくれるんだよね」
「ヨウシ・・・あ、跡取りって言うのはそう言う事か。そういえばソルスロは爺さんの旧姓だよね。次男がソルスロ姓を名乗ったってことだよね」
「そうだよ。私がここに養子に来た時の、契約だった。二番目のにソルソロを継がせることにしたんだよ」
「なるほど、そして3番目からはまたグルードの姓のまま。わざわざ、姓が変わったところから。養子をもらうんだね」
「セーン、手続きの面倒さよりも、重要なのは魔物討伐の才だからね。セーンの磁力パワーはこの先年齢を重ねるにつれどんどん溜まる性質なんだよ。魔物討伐にこれ以上の適性は無いんだ」
「グルードの孫の中に、まだ調べていない磁力パワー持ちが居るのでは?」
「セーン、よく聞いてくれ。磁力パワーは年齢が嵩むほど大きくなる。セーンより年上には磁力パワーを持つ男は生まれてはいない。そして、年下の子はパワーが少ないに決まっているんだよ。だからグルード姓であろうとも、入れ替える必要なんかないんだ。そもそも、同じ孫なんだし。それに年齢が嵩むにつれてパワーの増え方が早くなっていく。同じ時間に取り込んで行く量が違ってくるんだよ。パワー倍増になる。弱いに決まっている若い子のパワー持を跡取りに出来る可能性は無い。無駄な話だろう」
なるほどと思えたセーンである。これでは観念して爺さんの跡取りになるしか道は無さそうだ。