小話 その2
『小話その2』を、書き足しました。レンの偽物の正体を、話の流れで書かずに終わっていました。これで完成したつもりです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
セーンのお気に入りのTシャツなんぞ、どうなろうが気にしない気分になって帰って来たセーンとポケット内のヤモとヤーモ。
瞬間移動で気分はどうであろうとも、自分の部屋にきっちり移動し終わったセーン。憂鬱になって、布団にダイブすると、誰かが居た。ハッとして、飛び起きると、例のやんちゃんとその親が慌ててベッドから出て来た。どうやらセーンが居ない間はここが定位置だったらしい。
「どうんもすみませいん」
おかしな発音で謝って、親子は慌てて出て行った。ため息をついてもう一度ダイブしようとすると、
「もう、セーンったら、あたし達には無関心なのっ」
ユーリーン婆がご立腹で入って来た。ご立腹のふりだと分かるが。
「ずいぶん早く戻ったって事は、分かったんでしょ。あたし達のニセモノ」
「会ってないけど偽物ってわかったから戻ったんだ。海岸の掘っ立て小屋の住人と話して察した」
「そうなのよ。魔族って、人間に化けるの得意なのよね。それで、化けているのがばれたら、魔族だったんだって、能力者が始末するって言うのが普通なんだけどね」
「何か話題、持って来たね」
「セーンも興味がある話よ。それはそうと、ぽっけにヤモちゃんたち居るの」
「え、用があるの、ちょうど今、居なくなった。今、俺のベッドの住人が出て行ったから、付いて出たんだな」
「そ、まあ良いわ。もしかしたら知っていたかもしれない話題よ。ほら、正体不明のレンにそっくりなニセモノね、昨日あたしらのとこに来て、魔王生還の瞬間を見物って言うピンチを免れたのよ。彼、ものすごい速さでセピア公国に移動したの。瞬間移動は出来なくて、スピード移動なの。で、生憎お疲れで、セピアのホテルで一泊したけど。その方がかえって良かったみたいだったの。魔王達が予想しないルートだったわけ。見失ったらしいのよ。あたしたちの行き先。フン、まぬけな奴ら」
「そりゃ、幸運だったね。そいつの正体が知れたわけ?」
「そーなのよ、正体は誰だかわかる?」
「俺、最近自分の脳の程度分かったから。いちいち俺に聞かないで続けていいからね」
「そう、その自覚が利口への一歩なのよ。それでね、その正体は、パンパカパーン。続けます。なんと『ヘキジョウさん』パンパンパンパンパカパーン」
「何だってー。あ、続けてください」
「ホテルで暇だったから、身の上話聞いちゃった。久しぶりにしみじみ来たわ。ぐずっ」
「今から泣くの、発表は?」
「相の手入れる。それがね、話は長いの、一晩語ったんだから。手短に?はいはい」
「レンはジュールが魔王に攫われたと分かったら、(使い魔を方々にやって情報を探してたのよ)一旦セピアの家族(あんたらの事ね)と別れて地下の魔族たちに戦争を仕掛ける決心をしたのよ。それで、拠点を地下の小さいころ遊んでいた辺りに決めて、住処を造って移ったの。
そしたら幼馴染の魔物たちか協力するって集まって来てね。一部のヘキジョウさんもレンのとこに来たの。熱心な忠誠者たちね。そしてもっと情報を集めたり、武器を手に入れたりして、準備したの。手伝う皆は、熱心な忠誠者で、レンに憧れたりしていた訳よ。
そんな中で魔物でも人に近い見た目の女の子で、ビビとシラって子がレンが大好きすぎて、顔を合わせれば今日はあたしに何回笑ってくれたとか、肩を抱いてくれたとか言いあって、どっちがレンに好かれているかって喧嘩するんだって、レンが留守の時だけだからレンはまだ知らなかったの。本当は知っておける事だけど、その時は戦争の準備で部下の動向とか気にする余裕はなかったみたいなの。
そんなふうな時、若いヘキジョウさんも喧嘩している二人を見ていて、自分もその喧嘩に加わるべきだと思ったらしいの。そうよ。ヘキジョウさんは自分で卵産んでコピーで増えるんだから、恋愛とかの感情はないはずなんだけどビビとシラの影響なのか、忠誠心が愛みたいなのに変化したのかって所かな。
でも、ヘキジョウさんは自分とレンの様子を顧みて、自分に笑ってもらったり、スキンシップみたいなのが無い事に気付いたわけよ。だから、喧嘩に加わる材料が無いのよ。でも加わる気なので、考えて、もしレンの子を卵で産めたら加われると思ったんだって、その事は、本人がレンに似た子に言った事があってね。
そう思ったら、そのことばかり考えていて、その内、卵を産んでしまったと言う話。実の所、まだ卵を産む時期じゃないはずだったそうよ。でなきゃ、戦争に参加しようと思っていても、レンの所にはいけないはずだったの。長が卵を産む子を外には出さないんだって。
それなのになぜか卵を産んで、孵った子がなんと、レンそっくりだったの。
嬉しくなったヘキジョウさんは、ただ嬉しいだけで、喧嘩している二人の所に行って、得意になってレンにそっくりな子を見せたの。普通の生物なら、それを見れば一目瞭然でしょ。ビビとシラは『この子いつの間に』と思っても負けは負け、2人とも泣いて諦めたの。
でも、周りの使い魔の男たちはそうじゃなかった。
ヘキジョウさんの実態ってのも、みんな知っていたし、子供は産んだ親のコピーでしょ。皆は若いヘキジョウさんは地下の魔物だと解釈したの。きっと理由は戦意喪失、仲間割れを狙ったと解釈したの。それで、周りの皆はヘキジョウさんと赤ちゃんを襲おうとしたの。
ヘキジョウさんは驚いて逃げた。訳が分からなかったけどね。戦争に加わろうと思うくらいだから、身体能力は優れていて、追っ手をふり切って逃げて行ったの。
騒動になったのに驚いて、魔王の城を探っていた途中だったけど、レンが戻って来て、この騒動の原因を察したの。ビビとシラはしかってやめさせて、女の子は全員辞めさせたの、関係ないって怒ってもね。
この前、館に紛れ込んでいた魔物は逆恨みした奴だったって。魔物って一度気持ちが離れたら、寝返る事もあるそう。だから扱いが難しいのよね。
赤ちゃんと逃げたヘキジョウさんは行方知れずで諦めたって。不思議だから会いたかったけど、皆から襲われたから、戻ってこないだろうって事で終わったの。
でも、知り合いの魔法使いの所に、ヘキジョウさんは隠れていて、最近までそっちに居たけれど、親が死んで、レンそっくりのヘキジョウさんは世間に出て来て、レンの真似をしたり、嫌がらせにレンの家族をからかったりしていたそうよ。
セーン、覚えがあるでしょ。あいつの仕業だったって」
「ああ、あるあるだな。兄貴たちも、だいぶやられたみたいだ。でも、まさか偽物とは思わなかったな。さほど実害は無かったから、からかわれているで、終わっていた」
「そして、本当にピンチの時は助けに来たよね」
「うん、もうこっちの壁に居るのかな」
「そう、少し前かららしいのよ、あたし達を送って来た後、さっさと壁に張り付いていたもの」
「レン親父にそっくりな赤ちゃんを孵したっていうヘキジョウさん、きっと魔力とかが優れ者だったんだろうな。惜しい人を失ったって事だろうと思うな」
「そうなのよね、可愛そうだったと思う」




