エピローグ
魔の空洞の吸い込みから逃れることができた、ニキ達一行は、地下のレンの家にひとまず落ち着いた。しかし、ユーリーン婆が落ち着かないので、ニキ爺は、
レン達がもどって来てすぐに、セーン達の生還を喜び合うのもそこそこに済ませ、
「レン、せっかくのおもてなしだが、婆さんは地下がいごこち悪いらしいから、俺たちだけでも、リューンの所に行くよ」
「あたしは地下が嫌なのっ」
「分かったよ、送っていこうか。他にリューンのとこが良い奴いるか」
セーンは思い出した、
「俺は何処でもいいんだけど、そういやリューン大叔父さんが、ジュールに会ったら、会いに来るように伝えてって言われていたんだった」
「そうなの、何か話があるんだろうな。話聞きに行って、又こっちに帰ろうかな。一緒に来るかい、クーラ」
「そうね、着るものも出来たし、リューンお父様には挨拶すべきよね。あたし達やっと結婚するのよって言わなきゃ」
そこで、ニキ爺達について行く面々が割と多くなっているが、
セーンは、
「ユーリーン婆達以外は日帰りでも良いよね」
と言って、新しく編成の家族一同、リューンのひとり暮らしの家へ押しかけることになった。
辺りの様子は、リューンの家の近くまで、魔の空洞の影響で木々や家が吸い込まれていたが、人間や生き物は逃れられていて、あちこちに吸い込まれなかった瓦礫で作った掘っ立て小屋があり、人々がペットや家畜と暮らしていた。
「この辺りは免れた人がいるんだな」
セーンが呟くと、ポケットの中のヤモちゃんは、
『リューンが、守った』
と解説した。
リューン大叔父さんちに到着すると、機嫌よく家から出て来たリューン大叔父さんだ。
「大勢さんで来たね。ジュールにだけ言う訳にもいかなかったか」
と言って笑った。ユーリーンは、
「あら、あたしたちはお邪魔だったの」
「いやいや、そういう事じゃないんだ。さぁ、みんなお入り」
「実はジュールのママは不器用な人だったから、誤解している人が多かった。だから、ジュールには言っておこうかなと思ったんだよ。聞き手が多けりゃ、なお良いさ」
「そうだったかもしれませんね」
そう言いだすレンも、事情を知っているかもしれないと思えた、セーン。
「俺達は別れたんだが、けんか別れとかじゃないんだ。みんな知っているだろうが、俺は人よりテレパシー能力が強くてね。あの人の知られたくないことまで俺がデリカシーもなく話題にするんで、嫌がって出て行ってしまったって話さ。だが、今日言う話は、それとは別物。丁度みんな揃っていて良かったよ。
実はジュールのママの父親は商人で、セピアや他国から北ニールに無いものを仕入れて、戻って来て売り、稼いでいる人だったんだが、その内各国の魔法使いから魔道具を仕入れるようになった。新しく作ったものがほとんどだったが、魔法使いの中には、家宝の魔道具を持ってきて金に変えたがる輩が出て来た。そう言うのは危険なものもあるが、彼は成り行きで魔道具集めをしている感じになっていたんだ。ジュールが大人になって、そのおじいさんは亡くなり葬式となったが、何故かジュールの申し出では休暇がもらえなかった。普通は家族の葬式なら休暇は取れるものだ。近衛兵の隊長が敵方の奴ぐらいの事はジュールも知っていたろ。だがこの事情もある。訳あり魔道具の面倒など、無力な女性には務まるものじゃないんだ。時には魔物が盗もうとやってきたりするが、ジュールの能力が分かって逃げ帰っていた。しかし、爺さんの葬式の日、ジュールは休ませてもらえなかった。そして、葬儀に参加しに来たかのように地位のありそうな男が来て、葬儀が終わっても帰ろうとしなかった。使用人はいたが能力など無い。母親ひとりその男の相手をして、帰らない訳を知った。男は身分を隠してやって来ていた、王様だった。今のじゃないからな。時期的には前の奴だぞ。王が言うには以前爺さんは王の教育係をしていて、話の成り行きで、爺さんの魔道具コレクションはもし爺さんの死んだあと、欲しけりゃ王に譲ると言う事になっていた。そう主張して、もとより母親にはなすすべもないから、魔道具のコレクションは王に全て持って行かれる事となった。その時、王は『魔の空洞』はどれだと母親に聞いた。かなり危ないと言われていたので、その品の事は知っていた。使わない時なら、巾着袋ほどの小さな袋なのだが。それを知らない王は、嘘だと言って、暴れそうな感じで、そこでこいつは、王ではないのではないかと母親は考えた。どうやら王は王でも魔王の方だった。『魔の空洞』はその巾着袋で間違いないので、いくら暴れられてもどうしようもない。距離を取ってにらみ合っていると、ジュールが早引けで早めに帰って来た。その日はレンも付いて来ていた。おじいさんの葬儀だと言う事でね。魔王は強い奴がやって来たと思い、手元にあった『魔の空洞』だけ持って逃げて行った。お前ら、地下でも有名人だったらしいじゃないか」
「はは、それほどでも。と言う事はあの『魔の空洞』は元はジュールの爺さんのコレクションだったのか」
ユーリーンは、
「そうよねぇ。危険で怪しい魔道具が家にあったら、ジュールは家に居てほしいかもね。何かあったら、近所迷惑でしょうね」
「でも、ママは結局魔道具の話は、俺にしたことはなかったね。そうか、一番危ないのは『魔の空洞』だったんだろうね。魔王に盗まれたからあとは雑魚だけか」
「そうなんだ。それに、そいつには取説が付いていたんだけれど。それを持っていかなかったからね。ややこしい魔道具は取説付きで売るものだが、魔王はそんな事さえ知らなかったな」
リューンはこの悲劇的な結果になった事の起こりをジュールに言っておこうと思ったのだろうが、セーンが事付けを頼まれたのは、その事が起こる前だ。ため息をつきながら、リューンにもう一度確かめるセーン。
「それで、『魔の空洞』に飲み込まれた人たちは、死んでしまったの」
「そう言う事だ。愚かな魔王の手に余る代物だったのさ。取説を見ておけば、最初に魔王と言う名の物を吸い込む。とか、飲み込むものの大きさを見て合わせる事とか書いてあったな。そして飲み込み終わったら、穴を閉じる勢いで辺りの物も吸い込む。みだりに大きくしない事」
「その取説、読んだんだね。リューン」
「ああ、この状況は魔王の所為だ。使い方、聞きに来いってんだ。自分が最初に吸い込まれたんじゃ、話にならんかったな」
「取説には大事なことが書いてあるんだから、かならず貰っておかないと。そして、此処がまた大事なんだけど。必ず読まないとね」
セーンはポケットの片方にいる、何でもヤモちゃん達のマネをするヤーモちゃんに、言って聞かせる。
『ヤーモよむ』
おしまい
最後まで拙い小説を読んで下さり、ありがとうございます。
残酷な場面が今回もありますが、深刻に受け止めないでいただきたいです。
作者の大ぼら吹き作風のひとつですから。




