第18話
自分の部屋へ瞬間移動したセーン。戻ってみると、ニキ爺さんやヘキジョウさん数名が戦いの服装の様な支度をして、手をつないで輪になっていた。当に今、セーン奪還に向かう所と言った感じである。
部屋に転がりながら、思わず「セーフ。戻ったからね、皆」と声をかけたセーンである。
涙ながらの見送り風情だったユーリーンが、
「まっ、セーン。心配したのよう。セーンこっちに来て、婆に生きている事。本物な事。証明してよ」
とソファに寝ころびながら言うので、驚いて駆け寄ったセーンである。
「どうしたのユーリーン婆、足でも痛めたの。寝転がって」
「もう、馬鹿ッ、力が出なかったのよ。何も食べたくないし、お茶ものどを通らなかったのっ。う、うわーん」
「ごめーん。心配させて。帰るの、遅くなっていた。早く帰らなきゃならなかったね」
ユーリーン婆に抱きつかれて、泣かれて、セーンは帰りが随分遅かったのが分かった。
「セーンが居なくなったら、もう会えなくなったらと思ったら、生きた心地しなくなったけど。良かった。戻って来て。ぐすん」
ニキ爺が、
「奴らの所に行ったんだろう。俺も一緒に行くって言ったのに。一人で行って、まったく困った子だ。それで向こうはどんな感じだったかな」
「それが、現在、こっちに来るつもりはなかったみたいなんだ。リューン大叔父さんが言っていたように、レンもジュールも良い奴みたいだった。馬鹿狼をよこす奴らには見えなかったんだ。馬鹿狼は馬鹿で使い魔をやめて逃げだしていたんだ。だから、他の誰かが操ったのか、馬鹿が自力で庭に入ったのか分からないよ。でも、地下に居たのにあいつらが自分で地上に出てきたとは、考えにくいな」
「そうか、そういう事になるだろうな。ユーリーンは何か食べないとな。食堂に行こう」
ヤモちゃんはポケットから出て来て、ヘキジョウさん達にヤモ語で何やらもごもご話していた。彼なりの報告をしているようである。彼は仲間になんと説明しているのだろう。セーンは後でヤモちゃんに聞いてみなければと思った。
食堂では執事さんがかいがいしく、セーン無事生還のお祝い風の食事を用意し出していた。
「執事さんにも心配かけたね。でも、レンはリーのは偽物だし、化けてない風のも、執事さんが彼が本物だと言っていたけれど偽物だったよ」
「ええ、リューンさんが言った通り良い人なのでしょう。レンさん達がやってくると言う噂、誰が流しているのでしょうね」
そう執事さんが話していると、ヤモちゃんがいつの間にかセーンのポケットに戻っていて。顔を出しながら、テレパシーで、『おう』と言った。短い単語でえっと思ったが。王様という事だと分かった。ヤモちゃんとしては『様』など付ける気はしないらしい。
ニキ爺さんにテレパシー通じるかなと思いながら。ヤモちゃんの意見は伝えておいた。爺さん、ちらっとセーンを見た。伝わったらしい。
唐突に、爺さんの発表があった。
「クーラを連れて帰ろうかな。ここに置いていた方が安全だ」
「そうよね、何だったら別れさせても良いけど」
「こっちが良くても、王が決める事だ。王はどう出るかな」
爺さんも『様』を省くことにしたらしい。
『おうとまえのまおう、なかよし』
ヤモちゃんの情報がまた来る。
「ところで、ヤモちゃん。その情報はどこから来ているの」
『しろのヘキジョウ』
「しっ」しまったと思ってあわててだまらせる。『それは言わない』念のため念を押す。しかし、ニキ爺さん、
「聞こえた。最近ヤモ語、覚えたんだぞ」
とほほである。ユーリーン婆が口をはさんだ。
「ニキ、ヤモ語、覚えたって?すごい。ニキに聞いてもいい件なのかな、これは・・それでね。セーン、あたしヤモちゃんに聞きたいことがあるの。良いかしら」
セーンにつめよる、ユーリーン婆、しかし、
「さあ、聞きたいことの内容によると思うな」
セーンは段々、嫌な予感がしてきたので、一言注意しておく。
「あのね、ヤモちゃんとヤーモちゃんのパパとママは誰かしら。一応飼い主としては聞いておきたい情報じゃないかな」
「うー、聞こえたかヤモちゃん」
『ヤーモはぼくがうみました』
「うー、聞いてはいけない一線を越えてしまった。婆さんここはノーコメントです」
『ぼくがたまごでうみました』
「でも、何かお話しているじゃない。どうしてノーコメントなの。ニキは分かったの」
「ニキもノーコメントとしますよ。そしてこの話題は、これからは無しです。ユーリーン。発表です。この情報は今からシークレットとなりましたっ」。
「まっ、どうしてよ。なによ、なによ、自分たちばっかりで内緒にして。ずるい」
ユーリーンがすねると、ヤモちゃんは人間の言葉を話した。どうやらヤモちゃんはユーリーンを気に入っているらしい。
「ぼくが卵で産みました」
「きゃっ、聞いちゃった。ほんと、すごい情報だわ」
「皆、大人になったら若いときに一人で卵を産みます。自分のコピーです」
ヤモちゃん、自分の情報を垂れ流す。ニキ爺さんは、
「俺の言う事を聞いてくれる人は、もうこの館には居ないのだろうか」
そう言って嘆くので、
「地下のレンが良い人になっているみたいだから、聞いてくれるかもしれないよ」
セーンはそう言ったら、親子の断絶が止められるかなと思った。
「ふーむ」
ニキ爺さん、少し考えている風だ。
ヤモちゃんの自分の情報垂れ流しを聞きつけた執事さんの様子が変になった。意味もなく布巾を絞りながら動揺している感じ。
「やっやっ・・は、たったっ・・ううっ、けっけっ・・しっしっ」
おそらく、訳すと、「ヤーモちゃんをヤモちゃんは卵で産んだって?誰かと結婚していたなんて信じられない」だと思ったセーン。ひょっとすると、執事さんはヤモちゃんがすきだったのかな。歳の差あると思うけどなどと思っていると、メイドさんしている若い女性たちも様子が変わった。数人固まって小声で騒ぐと言う器用なことしている。セーンは『と、いうことは、ニキ爺さんがシークレット情報にしたかったのは、こうなると分かっていたからなのか』と思った。ヤモちゃん、モテていたんだな。きっとイケメンと誤解していたんだ。でも、事実が分かった方が良いかもしれないと思っていると。ポケットから視線を感じた。ヤモちゃんを見ると、目を少し寄らせて困り顔だ。こういう時は一言述べるべきかな。
『皆、今はちょっと驚いているけど、本当のことは早く知っていた方が良いよ。誤解も解けたし、そのうち収まるよ、多分』
表情が、変わらないヤモちゃんである。あまり、役に立つ助言じゃなかったかなと思えたセーン。助言とかはセーンの柄ではない。
『ちがうよ』
「何が違うの」
『たまごはぼくがうんだ』
「そうらしいね」
『たぶんこぴーっていうの。セーン、せぴあでかいたのキカイでしてた。さっきもいったけど、わからなかったね』
「コピーだって。細胞分裂なのかな?えーと海にそうやって増えていく生物が居たような・・・。ヤモ達もなのか」
大声で言ったので、周りの皆に知れ渡った。少し安心した人、居たはずだ。少しだけね。
ユーリーンは自分が言い出しっぺで動揺が広がってしまったが、これで何とか収まったはずだと思った。
ニキとしては動揺が増していたのだが。だから、他の皆が何に納得しているのか納得できなかった。




