プロローグ
もしかしたら、お待ちの方がいらっしゃったら、どうもお待たせしました。とお詫びいたします。別の小説を、終わらせておかないと、頭の中がこんがらがりそうなので。こちらの小説はまだ終わりが見えていないので、終わり方を考え終えた方を先に投稿しました。
という事は、皆様お察し通り、最後の見えていない強硬発車状態です。題名と違ってくる等と、愚痴ることは今回は無いと思います。題名通りの話のはずです。プロローグは前作最後の小話とだいたい同じです。・・・少し違うところが有りますが、些細な言い回しですから・・・
ユーリーンが北ニールでニキとの幸せな結婚、そして一連の大騒ぎの後。
家族は増えて行き、結婚当時のニキの愚痴はもう話題にも上らなくなった。しばらくは、地下の魔王達の動きはなかったが、時は流れどうやら様子は変わった様である。
とは言え、末広がりのニキとユーリーンの家族達にとっては、取るに足らない地下の動向のはずだ。・・・と言うのがユーリーンの見解である。
セーン・ソルスロ21歳(ニキとユーリーンの大勢の孫の中の一人)は出席した王太子の成人式で、久しぶりにパパの姿を目にした。
「居たっ、くそう。逃がすもんか。今日こそ、言いたいこと言ってやるからな」
急いでパパの横に行く。国王や、王太子にお祝いを言うため主だった家臣が列をなしている。ニキ爺様や、ユーリーン婆様も並んでいるが、セーンはジジババが挨拶するので行く必要は無いと思っていた。どうやらパパはそうでもないらしく列の最後に並んでいた。
そのパパの横に何気なく寄って、セーンは口を開かず、言わば腹話術風に話す。
「おい、俺以外の皆は、セピア公国で適当に暮らしているってのに、俺だけニキ爺さんちに呼ばれて行ってみれば、爺さんの跡つげだと。知っているんだからな。お前が推したんだってな、俺に後を継がせろって。挙句になんか知らん奇妙な奴とお見合いさせようとしたな。お前が来なかったから、お見合いってのは断ってやったけど。」
「じゃあ、別に構わないんじゃないのかな」
前を向いたまま気のない返事をする、見た感じ20代後半の歳に見える恐ろしくハンサムな男。
まだセーンが学生時代、王の誕生パーティーに出席してみると、ニキ爺さんが遠くに居た若い男を指して、
「あれはお前のおやじだ。甥のリーに化けてやがる。リーは人付き合いが嫌でこんな所には来ないからな。ソルスロ一族一のハンサムのふりなんかしおって、みっともない奴だ。あんなふうにはなるなよ、セーン。一族の中じゃお前位しか真面なのは居ないからな。頼りにしているんだ」
と言って、パパの若作り風に化けた奴を教えてもらっていた。パパは国の諜報部員とか言って、いつもどこかに旅していたので、家にはほとんどいなかった。パパの事はよく知らないとも言えるセーン。
「こっちは構うんだよ。明日になったら俺は絶対セピアに戻るからな。今朝もだよ。だいたい、集めた資料をなんで俺に送り付けて、ロードさんのところにもっていけとか指図するんだ。こんな所うろつくくらいなら、自分で持って行けよ。いらんこと、俺が行ってみたら、あっちの娘にも、なんか俺との婚約の話とか匂わせていた感じだったな。本人に断りもなく無責任な話すんなよ。迷惑しているんだからな」
「僕としては、何のことやらさっぱり。身に覚えはありませんよ。と言うか。君は一体どなたですかね。話の前に自己紹介をお願いしたいです。それと、僕の事を誰と思っているのでしょうね。最初は、自己紹介からと、習わなかったのでしょうか。その歳頃なら、どこぞの学校は卒業されているのでは?」
「とぼけるな、家に帰ったことがないから忘れたかもしれないけど、お前の息子のセーンだよ。どうだ、思い出したか」
「僕は27歳ですから、君の話では僕は7歳ほどで誰かを妊娠させたことになりますが、いくら僕が早熟と噂されていたとしても。それは少し無理があるのでは?」
そこで、しげしげと彼の顔を観察するセーン。そして、親父の気配がないことに気付く。背中に冷や汗が出てくるのが分かった。
「パパじゃないのか。リー本人がこんなところにいるなんて、信じられないっ」
「へえ、君のパパは僕の振りをしていたのですか。と言う事は、君は噂の諜報部員、レン・ソルスロさんの息子ですね。君の話で察することが出来ましたよ。僕も家にいるのに、別の場所で僕の活躍のうわさを聞いていて、少し困っていました。君に一言言っても無駄でしょうね。君の言いようでは、彼に会うことはほとんど無さそうですし」
「あいつに文句があるなら、リーさんちで探したらどうですかね。もし見つかったら、出来れば僕がさっき言っていたことも併せて、言いたいこと言ってやってください。失礼しました。では・・・」
セーンは後ずさりながら、立ち去るタイミングを計った。不味い事は理解した。息子は親の不始末について、責任はないはず。そう思いたい。
しかし気付くと、挨拶の順番が直ぐそこまで迫っている。此処で立ち去ることは可能だろうか。ちらっと王族の方向に目をやると、王太子と目が合ってしまった。にっこり微笑んでこっちを見ていた。もう、此処で立ち去ることはできない。
通り一遍の挨拶をしてリーは立ち去った。セーンもマネて、一言祝いを言って去ろうとすると、王太子が言った。
「セーン・ソルスロ君だね。君の事は、宰相から友人候補に推されているんだ。明日僕の部屋に来てくれないか。少し話をしてみたいな」
「はい、喜んで」
なんでこうなった?セーンは兄弟や友人たちが居るセピア公国に戻って、気楽な日々に戻ることができるだろうか・・・