いったれタマちゃん
どうも皆さんこんにちは、タマです。
珠と書いてタマです。
本日はオリベマートの皆さんをご紹介しながら、おおよそどんな風に一日を過ごしているかをお送りします。
まず朝起きると、風呂場の洗面所へ向かい、洗顔と歯磨きをします。
それを済ませて着替えようと部屋に行くと、朝6時だと言うのに庭の方から鼻唄か男女の話し声が聞こえてきます。
今日は男女の話し声がしますね。いざ、ベランダから下を覗いてみましょう。
ベランダに出て下を覗けば、スラリとした男性が鎌を持って、白髪の女性と会話していますね。
男性の方が祈さん。
ボサついたくせ毛と、柔らかーい雰囲気が特徴的な人です。
毎朝何が楽しいのか、鼻唄を歌いながら広い庭と駐車場の草刈りをしています。
このアパートは、織部さんが何もない空き地にぽんと建てたそうで、地面は土のまま、なので草は生え放題。
祈さんは、その草刈りを毎日してます。
祈さんは仕事をしていません。
祈さんに関しては、織部さんが「アイツは命の恩人(神秘的な意味で)やけんな!僕はアイツの残りの人生を全て負担するって決めたんや!」と言ってて、祈さんとミネさんの生活費等は織部さんが全て払っているそうです。
惚れます、織部さん。カッコいいです。
神秘的な意味でというのはよくわかりませんが、私も縁結びの神様に導かれてここへ来たので、まあそういうのもあるのだろうと受け入れます。織部さんの事なら。
脱線してしまいましたが、その祈さんと楽しげに会話している方が、ミネさんでございます。
峰と書いてミネさん。
ふわっとしたボリュームのある白い髪の毛に、セクハラになりますが、ボリュームのある胸。
穏やかなゆったりとした喋り方から、私は羊のような印象を受けています。
ミネさんと祈さんは、五年前以上前からこのアパートに住んでいる古株で、お仕事ができないからと言って、普段は基本的にこのアパートの住人の悩みを聞いたり、全員が集まる夜は皆でバーベキューや鍋パーティーなど、料理を振る舞ってくれる、このアパートの両親みたいな人達です。
とても助かってます。パパ、ママ。
さて、幸せそうなバカップルを見ていると、たまにこの時間に隣の人が顔を現します。
「おうタマ。おはよ」
「おはようございます。シンさん」
隣のベランダから、洗濯物を入れたかごを持ちながら現れたのは、シンさん。
心と書いてシンさん。
初めてお会いした時に、ココロさんと呼んでしまい、睨まれました。
死んだと思いました。
背中くらいまである長い金髪、鋭い目付きにちょっと荒っぽい口調。
ヤンキーだ。初見の印象はそうでした。
しかしまあ、話してみればかなり乙女、気配りのできる人で、皆で集まり何かする時は、率先して行動しているイイ人です。
シンさんは洗濯物を干しながら、時折庭の方を見て「ほんと、仲が良いよなぁ羨ましいぜ」と半分呆れた風に私へ同意を求めてくる。
「シンさんとリコさんも同じくらい仲が良いですよ」
そう言うと、シンさんは顔を赤らめた。
「ば、ばか!おいばか!そんなことねぇよ!そんなことねぇことねぇけど、そんなことねぇよ…」
シンさんはリコさん関連でイジるとテンパるので、とても楽しいです。
照れるシンさんをニマニマと観察していたら、睨みながら怒ってきました。
「ああもう!部屋に帰れ!」
「は~い」
大人しく部屋へ戻り、朝ごはんを食べる事にしました。
朝食を終えて、のんびりとします。
いつもなら、この時間くらいからバイトに行く準備をするんですけど、今日は休みなので部屋でまったりします。
せっかくの休日なのに、することがあんまり無い…。
暇だなぁとベッドに腰かけると、部屋の扉がノックされる。
「どうぞ~」
入室の許可を出すと、扉が開く。
「や、やあ、お邪魔します」
ヌっと部屋に入ってきたのは、リコさんだった。
理子と書いてリコさん。
グレーっぽい色の髪が下半身まで伸びていて、いつも座る時にその髪の毛が下敷きになっている。
たれ目で、いつも緩い表情をしている。
シンさんから聞いたのだが、コンビニの夜勤をしている時は髪をポニーテールにして纏めていて、馬鹿かよってくらい可愛かったらしい。
身長は私の胸辺りに頭が来る低身長。
かなりオタクのようで、祈さんとミネさんが二人でいる時は、精神が崩壊したのかと思ってしまうほど笑っている。
「こんにちは、リコさん」
「コンビニの、余りをな、いっぱい持ってきたから、何か食べるかなって」
ガサリとコンビニ袋を4つ、ローテーブルに置いて、首をかしげて聞いてくる。
お弁当はわかるとして、チキンやフランクフルトなんかもパックに入れられて、袋に入っていた。
「いっぱいありますね」
「昨日はな、カウンターフーズのキャンペーンでな、廃棄が出る前提で、大量に作られたんだ」
からあげ、あるぞ?と言いながら、こちらに差し出してくる。
それを受け取りながら、ラーメンとチキンカツ弁当を貰う。
「それでは、それとこの2つ貰います」
「ん、それじゃあ、後はシンさんの部屋に行ってくるな、邪魔したな」
残りの袋を全部持って、お辞儀をしながらリコさんは出ていった。
「冷蔵庫に入れとこ」
頂いた物を冷蔵庫に入れて、またベッドに座る。
リコさんが出ていって一時間、残高の計算をしておこうと、通帳と財布の中身とをにらめっこして確認する。
「家賃支払ったら給料日まで二万円…」
自分の無駄遣いに頭を抱えていた。
携帯代カットするか…。
いや、再来月までに機種変更したら違約金かかるだろうし、結局食費だろうか…。
16歳で学校辞めてまで一人暮らしを始めたが、やはり無謀過ぎただろうか。
そんな悔いをし始める17の私。
後悔はしたくないけどしてしまう。
ローテーブルに頭を乗せて悩んでいると、再び部屋の扉がノックされた。
「タ~マさん!キョウっす!開けてもいいっすか!」
うるさいのが来たなぁと感じながら、返事をする。
「どうぞ」
「しゃっす!失礼しやっす!」
元気に扉を開けてきたのは、恭さん。
恭でキョウ。
なんか楽しそうにしてる恭さんは、靴を脱いでこちらまで来ると、笑顔で私の前に正座した。
「ちょうどさっきミネさんから言われたんすけど、今日はカレーをミネさんの部屋でするそうなので、お腹すかせておいてほしいそうっす!」
「はあ、わざわざありがとうございます」
「いえいえ!」
カレーかぁ…美味しいんだよなぁ、ミネさんのカレー。
時間はまた知らせに来るだろうし、それまでのんびりしてようかなぁ。
そう考えていると、まだ恭さんがこちらを見ながら正座している事に気づいた。
「あの、まだなにか?」
「あ、いえ!それだけ言伝てをしに来たんすよ!」
ならさっさと帰ってくれないだろうか。
そんな風に考えたら、私の部屋の扉が勢いよく開けられた。
「おい恭!先週借りた漫画、まだリコに返してねぇらしいな!」
シンさんだった。
「あ!忘れてた!すぐ返してくるわ!じゃあタマさん、また夕方に」
へへ、と笑って恭さんは部屋から出ていった。
助かった。
正直タバコ臭くて苦手なんだよね。
年下の私に敬語を使ってくれてるし、いい人ではあるんだろうけど、苦手だなぁ。
安堵の息を吐いていると、シンさんが外から「わりぃな、騒いじゃってよ」と手を合わせながら謝ってくれた。
結局お金のどうこうを考えていたら、気がつくと夕方になっていた。
そろそろ来るだろうなぁと扉の方を見ていたら、案の定ノックされた。
「は~い」
恭さんだろうなぁと思っていたら、違った。
「こんばんは~織部さんやで~」
ドキリと心臓が鳴った。
「お、織部さん!?」
「せやで~タマちゃんおる~?なんて、返事してるんやからおるよな」
私は慌てて髪を簡単に整えて、服にゴミが付いてないかをチェックする。
よし、大丈夫。
「そうですよ、相変わらず面白いですね織部さんは」
高鳴る心臓を静めながら、平静にドアノブを回す。
ゆっくり開けると、そこには、このアパートの大家さんである、織部さんがしっかり存在していた。
「こんばんは」
優しく微笑んで挨拶をしてくれる。
「こ、こんばんは」
落ち着け、落ち着け私。
大丈夫、普通にすればいいんだ。
「なんで織部さんがいるんですか?」
「なんでって、家賃の集金に来たら祈に、カレー食べるからタマちゃん呼んできてって言われたんや。人使いが荒いよなぁ祈は、そう思うやろタマちゃん?」
「ええ、思います!」
グッジョブ!祈さん!
……ん?待てよ…。
「集金、ですか?」
「そう、集金ついでにご相伴に預かろうかと」
・・・。
「今、持ち合わせが無くてですね…」
しまったぁ!そうじゃん!織部さんって家賃の集金日決めて無いじゃん!
なんて情けない事だろうと思っていたら、織部さんはいつも通り扇子を広げて、左手で扇いで笑う。
「はっはっはっ、そうかそうか、いつもてきとうな日に来てるもんな!気にせんでええよ!」
「ほんっとうに申し訳ないです!」
「せやからええって、皆給料日がちゃうからな、また来るわ。それより、はよ行かな祈が煩いで?」
「わかりました。本当にすいません」
「ええねんええねん、ほら、行こ」
織部さんは身体を半身避けて、外へ出るように促してくる。
頭を下げながら、廊下へ出て、二人で一階のミネさんの部屋まで歩く。
また織部さんにわざわざ来てもらわないといけないなんて、迷惑かけちゃった……待てよ?また集金に来るって事は、また会えるってことだ。
神か?
「あ、いらっしゃいぃ」
ミネさんの部屋にお邪魔して、ローテーブルの近くに二人で座る。
どうやら、私達以外にはまだ祈さんしか来ていないようだ。
「ほら、呼んできたで祈」
「ん、あんがとな、俺が行こうかなって思ってた所にちょうど織部が来たからさ、グッドタイミング」
祈さんは親指を立てて言う。
「はいはい、そうしておきます。ところでタマちゃん。ここの皆とは仲良くやれてる?」
「は、はい!とっても!」
私の事を聞いてくれた!夢か?
「そうか、このアパートで唯一未成年やけんな、なんかあったらと思うと毎日心配でしょうがないわ」
「大丈夫です!皆さんとても良い人達ですから!」
「ははは、そりゃよかったわ」
「はい!」
なんて素敵な笑顔をする人だろうか。
あぁ、本当にカッコいい…。
こうして私の休日は、ハッピーデイとなったのだった。
以上が私が住むアパートの仲間達と、カッコいい大家さんである。
いずれまた、機会があれば私のお話をしましょう。
それでは皆さん、また会いましょう。