マッチ売りの少女
偶然にも猫のクマと再会を果たしたアタシ。そして、お金持ちのご令嬢クラスメイト、カナの新しいマンションと同じ敷地内にある古ぼけた洋館。そここそが愛するタカにぃが住んでいるアパートだった!
衝撃的な展開に、一手でひっくり返されそうなオセロゲームのように絶対絶命のアタシ・・・。
カナはとても綺麗な子。
普通の女子なら泣いて喜ぶ”モデルにならない?”的な大手プロダクションの誘いもあったくらい・・・本人は断っちゃったけど・・・それは、こっちおいといて、どう考えてもアタシより美人で大人びたカナとタカにぃの距離はやばすぎるぅ~~・・・アタシは、カナが天使の羽を広げ、微笑むとこを想像した・・・。
アタシはへなへなと座ったまま、ふてぶてしく居座るクマの寝顔を見て、くしゃみが止まらなくなった。
ヘグチン! クッシュン ふぇっふぇっフェックション チキショイゥウウ~ フェエエックッション
ンガッングゥ・・・ずるるるる~
『やばいやばいよぉ~ すぐばれるばれちゃう どうしょうぅうううう ふぇっふぇっ フェックショィ~~』
皆にばれるのが恐ろしいやら、歯はカタカタ鳴るやらで、くしゃみが止まらない。寒いのだろうと、アヤンが毛布をずるずる引っ張ってきてかけてくれた。
「だいじょうぶ? 鼻水たれてるよ きったないなぁ~」
そう言うと今度はティッシュを取って来てくれた。
「熱っぽいなぁ顔してるよ~ やっばいよ~ 風邪ひいちゃたかな?」アヤンがアタシのおでこにおでこをくっつけ「微熱あり。 風邪はひき始めが肝心だ」と、アヤン。
なんかほんとに寒気がして毛布に包まり鼻をかむアタシ・・・かんでも、拭いても垂れてくる鼻水に、ティッシュを丸め差し込んだ。
「あん? 風邪ひいただと? 鼻風邪くらいならあっつぅーぃ風呂に日本酒ドバドバ入れて、汗てかけば一発で直るぜ? カナ~酒ないか? おちゃけ」
ミサキがまた、キッチンへ行きガサコソ物色をはじめた。
「ん~ なんかあるかも~」
カナも一緒にキッチンへ自分でも何が置いてあるのか、初めて入る自宅を探索するように探しはじめた。
「料理酒でもなんでもいいぞ あったら出せ出せ お。そうだ、さっそく水はって風呂沸かしてやろう」
「ちょっとぉーミサキ ここあんたんちじゃないんだからいい加減に、ヘグチン! お風呂ならじぶんちで入りますってば ハックション! ズルル~」
「いいからいいから、今日はちょっとやりすぎたからさぁ~ まぁ~カンベンしてくれやって感じだから、甘えてればいいよ カナも大丈夫そうだし~ なぁカナ様」
「うん いいょ~ 今日はあたしの引越し初日でもあるから みんなでお祝いして~その方が寂しくなくていいし、楽しいよ うんうん はぃ、ぁ~んして」
キッチンから出てきたカナが言った。
「ぁ~ん」
アタシはカナが持ってきた体温計を口に咥えた。
「音がしたら、体温見てね。私隣行ってなんか無いか見てくる~」と、カナは鍵束をぐるぐる回し部屋を出て行ってしまった。
『え? 隣? となりって??』
なんのことか分からず、ボーッとしてきた頭でそっとカーテンの中へ潜り、タカにぃ~が部屋にいるか覗いて見たけどカーテンは閉められ、中の様子は見れず、どこかにお出かけしてるんだろうと思った。
思い込むと何が何でもやりとおすミサキ。
カナはとても、マイペース。
アヤンはクマの体を撫で、「あなたのご主人ちゃまはどこなの~さぁ、あたしに教えなちゃ~ぃ」とかまだ言っていてドキッとした。そして、「あ。そうだ、じゃあわたちご飯の支度しゅる~」と、料理上手なアヤンは袖をまくり、パタパタ、キッチンへ走っていった。
「えぇ~ 皆ここに居座る気なの? お祝いなら改めて今度、日取りのいい時にでも~ プレゼントも用意してないしぃ~~ぃ~ハックショィイ~ アタシたちそろそろ帰らないと~親も心配する~ヘグチン ずるる・・・ おーぃみんなぁあぁ~~ ヘッグッシュン・・・」
アタシは焦ってせめて一番やっかいなミサキ共々帰ろうとしたが、誰も聞いちゃいなかった。
でも、三人で帰っても肝心の”主”はここに残ったまま・・・それだけはどーすることもできないのだ・・・まぁ、もしタカにぃ~のことがカナにバレてもだ・・・おかしなことにはならないよ・・・ならない?
ぅん・・・でも、もしなったら? うぇええええ!!
アタシの存在が希薄になり見向きもされず、
恋に焦がれた少女はやがてはボロ布のような人生を送りました・・・・・・・・・。
--イリの妄想--
「だんなさ~ん だんなさ~ん マッチ買っておくんなましぃ~ ほら、こうやってすると 簡単に火が起こせますよ~だんなさ~ん タバコお吸いになるでしょ?」
「タバコ? すわねぇ~よ 体に悪いだろ あっちいけ シッシ」
山高帽の紳士がアタシを付き飛ばす。
行きかう紳士たちにすがる思いでズボンの裾を掴み、
「だんなさ~ん ほら 火起こせまぁすよ ほらほら~ 嫌な奴の家も、燃せますよぉ~ ウヒヒ」
でも、マッチは雪で湿り何本もダメになってしまった・・・。
恋人はお金持ちの親友に寝盗られ、誰にも相手にされず、往来の真ん中で泣きくずれるマッチ売りの少女イリ。
赤い服は汚れ、かすれ、まるでどぶネズミ・・・。
「アタシはただあの人と普通に幸せになりたかっただけ・・・
このマッチの明かりのような小さくても、暖かなひと時がおくれたら・・・この命捧げても・・・」
最後に残った一本のマッチ。
凍える手で擦った。
すると、危うく消えかけた火が揺らぎ炎になると、天まで届いた。
『あぁ アタシの願いが叶う・・・』
キラキラと流れ落ちるイリの涙。
闇色の空から吹雪く雪がイリの周りで天使たちに変わり舞い降りた。そして、いっせいに話しかけてきた。
「「さぁ おいで、アイリ。僕らの仲間になれるよ。さぁ こっちへおいで~♪」」
「あぁ アタシ。やっと天使になれる あの人の天使・・・タカにぃ~~」
天使たちはイリを持ち上げていく・・・その時声がした。
「お前 本当のマッチ売りの少女なのか?」
紳士になったミサキが少女の肩を揺すった。
「・・・ぁ」
さっきまでいた天使たちは唐突にかけられた紳士の声で消え、そこにはどぶねずみの現実が広がっていた。
「ほほぅ。珍しい、一回3千円出そう。こっちおいで」
「はい?
でも、マッチはもうありませんよぉ~ らんなさまぁ~」
紳士はダイヤが散りばめられたライターを取りだし、ゴウゴウと火を付け、パチンパチンと二回繰り返した。
「いらん! こっちこい!」
訳も分からないまま路地に連れ込まれたイリは怯え、紳士の顔はライターの炎で歪んで見えていた。
「ほんとのマッチ売りってのはなぁ~~」
少女の長いスカートをめくり紳士は中に潜った!
「ほれ パンツ脱げ! ”あそこ”見せろ~~!!」
--妄想おわり--
『いゃぁあああああああああ~~~~~
裏マッチ売りの少女も、
ほんとの天使もぃゃあああああああ~~!』
すっぽり毛布を被り、鼻にティッシュを詰めたまま、電子体温計が鳴ってる音にも気づかず頭をポカポカ叩いた。
街はますます吹雪き、アタシの心も吹き荒ぶ・・・・・・。
すると、クマがむくっと起き上がり、外の様子を見はじめた。
「え? 帰ってきたの? タカにぃ~!」
嬉しくて嬉しくてアタシもクマと一緒にカーテンに頭をくぐらせた。
『タカにぃ! あ!』
タカにぃの部屋のカーテンは開いていて、いつの間にか帰って来ていたようで、窓越しにでも一目見れて目がウルウルのアタシ・・・。
でも、その隣に、その隣に、となりに、女の人がいて、タカにぃ~~~~~と、抱き合っていた!
「カナ!」
アタシは思わず叫んでいた!
*乱筆乱文誤字脱字ご容赦
@このお話しは携帯用に書いておりません。
ブログはこちら>http://ameblo.jp/shizuku-no-kakera/