コミカライズ配信記念SS オリバーの愉快な魔術師団生活
本日、『断罪された悪役令嬢の次の人生はヒロインのようですが?』(エンジェライトコミックス)
コミカライズ1〜3話がRenta!様で先行配信開始☆
それを記念してのSSです。
※時系列は小説版2巻の番外編『兄として』の後日談となります。
※小説版を読んでいない方はなろう版番外編『兄』の後日談としてお読みくださっても問題ありません。
よろしくお願いします。
先日、レオンハルト王太子殿下の息子、アーロ王子の誕生日パーティーが開催された。
そこへ招待された客人……モンフォール王国の元宰相セオドア・トゥールーズ閣下の護衛を俺は任される。
数日間の任務を難なく全うし、セオドアが帰国する船を見送ったあと、なぜか俺は団長の執務室へ呼び出されお叱りを受けていた。
「オリバーくーん? 渡してあった資料……ちゃんと読んでなかったよねー?」
開いているのかわからない糸目に睨まれながら、語尾を伸ばす独特な口調でジョシュアに凄まれる。
「え? どうして読んでないってわかったんですか!?」
ジョシュアの言う資料とは、セオドアを護衛するにあたって失礼のないようにモンフォール王国についてのアレコレが書かれていたもの。
最初の数ページには目を通していたものの、モンフォール王国の成り立ちやら歴史やら国民性やら……の辺りでギブアップした。
読んでも読んでもなぜか内容が頭に入らなかったのだから仕方がない。
「はぁぁぁぁ……」
俺の言い訳を聞いたあと、ジョシュアはクソデカイ溜息を吐く。
そして、セオドアが妹を亡くしていること。それも事故に見せかけて殺害され、その復讐のためにセオドアはクーデターを起こし宰相の地位に就いたのだと説明を受ける。
それなのに俺が呑気にアリア……つまり、自身の妹を話題に出したことをジョシュアは怒っていたのだ。
(まさかそんな過去があったとは……)
俺は驚くと同時に、そんなに大事なことなら資料の最初にデカデカと大文字で書いてくれればよかったのに……とも思った。
「でも、閣下は気にしてなさそうでしたよ?」
俺が妹の話題を出しても、セオドアが声を荒げたり不機嫌になる様子はなかったとジョシュアに反論をする。
(いや、それどころかむしろ……)
頭に浮かぶのは誕生日パーティー翌日のこと。
テオドールも交えて俺たち兄妹のエピソードをセオドアに披露する機会があったのだ。
その際、セオドアはアリアの話題を敬遠するどころか、むしろ積極的に会話に参加していたように思う。
俺がアリアをナンパ野郎から守った話をした時なんて、いたく感激した様子でセオドアは俺の行動を褒めちぎってくれていた。
それに気をよくした俺はさらに兄妹のエピソードを披露して……と、そんなふうにセオドアと意気投合して仲を深めていったのだ。
「閣下が大人の対応をしてくれただけで、内心ではどう思っているのかわからないでしょー?」
「閣下は『またこの国に来る』って言ってましたし、怒っていたらそんなこと言わないですよね?」
「オリバーくーん。社交辞令って知ってるー?」
「いやいや、あれは社交辞令なんかじゃないですって!」
なぜなら、俺の生家に興味を持ったらしいセオドアが、ローレン男爵家を訪れてみたいと言い出したからだ。
ついでに隣のグルエフ辺境伯領も含めて何やら真剣に調査を計画していた。
どう考えても社交辞令というレベルの熱量ではない。
むしろ、ミズノワール王国へ移住でも考えているのかと疑うレベルだ。
それもこれも、セオドアが俺を気に入ったからに違いない。
(俺って人に好かれやすいとこあるからなぁ)
それなのに……。
「ジョシュア団長ってばまだ怒ってるみたいで、しばらく要人警護の任務に就けって命じられたんですよ。俺が警護の任務が嫌いだって知ってるくせに……酷いと思いません?」
不満げに口を尖らせながら、本日の警護対象者であるルカ第二王子殿下に愚痴を零す俺。
すると、冷たい視線とともに冷えた言葉が返って来る。
「ねぇ、僕の警護を罰ゲームみたいな扱いにするのやめてくれない?」
まるで絵画から抜け出してきたかのような美貌の持ち主に睨まれると妙な迫力があった。
そして外見だけでなく、彼は文武両道で膨大な魔力を有し、第二王子という高位に属する、天が二物どころか加減もせずに与えまくった人物でもある。
そんなルカは王城内でも一目置かれており、俺と並んで廊下を歩いているだけなのに周りの人々の視線を掻っ攫っていた。
(すっげぇ注目されてんなぁ)
しかし、ルカは他人の視線などどこ吹く風で廊下を歩き続けている。
本来ならば対象者に対して数名の護衛を付けるのだが、ルカは周りに人を置くことを嫌っているため、いつもジョシュアが空間魔法でこっそり張り付いているらしい。
今回は王城内での護衛ということで、俺一人にその役割が回ってきたという訳だった。
俺がルカの護衛を担当するのは今回が初めてで、これまで彼と直接言葉を交わす機会もなかった。
だけど、俺とルカには共通の知り合いがいる。
俺の妹アリアとルカは王立学園の同級生でそれなりに仲がよかったみたいだし、俺の幼馴染のテオドールとルカは親戚関係で、ルカの友人であるセオドアに俺はたいそう気に入られている。
これはもう友達の友達は友達だよなー……ってことで気さくに話しかけているのだが、なぜだか一向にルカとの距離は縮まらない。
(意外にシャイなタイプなのかもしれねぇな)
ならば、俺の取るべき手段はただ一つ……。
「殿下、これから俺と手合わせでもどうです?」
「は?」
そう、相手と仲を深めるには手合わせをするのが一番だ。
それに、ルカの魔法がどれ程のものなのか興味もあった。
「だって、せっかく魔術師団棟に行くんですし、パーッとストレス発散するのはどうかなって」
王城内では緊急時以外の魔法使用は禁止されている。
だが、魔術師団員が日々訓練をする魔術師団棟だけは例外であった。
今日はルカが魔法研究のために魔術師団棟の一室を押さえており、現在はそこへ向かっている最中なのだ。
「訓練場ならどれだけ魔法をぶっ放しても怒られないですし、それなら俺も楽しいし……。ね? どうです?」
「嫌だよ」
しかし、ルカにはバッサリと断られてしまう。
「そんなぁ……! だったら俺は何を楽しみに護衛したらいいんですか!?」
「普通に護衛任務に集中しなよ」
「殿下が手合わせさえしてくれれば仕事が楽しくなるっていうのに……。何でダメなんです?」
「護衛のくせに自己主張が強すぎだね」
それからもあの手この手でルカを手合わせに誘うも、一向に乗ってくる気配がない。
結局、そのままルカが手配した部屋に辿り着いてしまう。
すっかりやる気をなくした俺。
溜息混じりに部屋の扉を開けると、中には休憩用のソファとテーブルが置かれているだけで研究道具らしきものはどこにも見当たらない。
「ここで何を研究するんですか?」
ルカを伴って部屋の中に入り、扉を閉めながら問いかける。
「君もトゥールーズ閣下の緻密な氷魔法を見ただろう?」
「緻密……? ああ。あの氷の動物たちは凄かったですね」
誕生日パーティーの翌日、アーロ王子のために氷で可愛いらしい動物たちを作り出し、動かせてみせたセオドア。
彼の護衛だった俺も、もちろんその現場に居合わせていた。
「あのあと閣下にコツを聞いたんだ」
「へぇ……」
一体何のコツかと問う前に、ルカの両手から魔力が溢れ出す。
(そうだ。ルカ殿下も閣下と同じ氷魔法の使い手……)
つまり、氷魔法に関するアドバイスをセオドアから聞いたということなのだろう。
その証拠に、ルカの両手から氷の彫像らしき『何か』が作り出されていく。
「ふぅ……。まあ、こんなものかな」
「…………」
ルカが作り出した『何か』を俺はじっと見つめる。
「あとはこれを……」
ルカが指先を動かすと、それに合わせたかのように『何か』がぎこちなく動き出した。
「くっ……。やっぱり難しいね」
眉間にシワを寄せながらも『何か』を懸命に動かし続けるルカ。
その様子を見つめ続ける俺。
「あのぉ……」
「何?」
しかし、どうにも我慢できずにルカへ声をかけると、不機嫌さを顕にした返事がよこされる。
それにめげる事なく、ルカが作り出した『何か』を指差しながら俺は言葉を続けた。
「これって何ですか?」
「何って……見てわからない? ウサギだよ」
「ウサギ……」
俺は頭の中にウサギの姿を思い浮かべ、そのままルカがウサギだと主張する氷の『何か』を見つめ、そして……見事に決壊した。
「ぎゃははははっ! これっ……これがウサギって……無理無理無理! 無理があり過ぎですって!」
ウサギにしては不気味過ぎる『何か』を指差し笑い転げる俺。
たしかに耳が長い部分はウサギと言えなくはないが、その顔部分がどうにも人間寄りで、唇まであるのは反則だと思う。
そうして、ひとしきり笑い続けてようやく息が整った頃、部屋の温度がひどく冷えていることに気が付く。
「ねぇ……不敬罪って知ってる?」
俺に向けられたルカの美しい青紫色の瞳がついっと細められた。
「え? もしかして冗談じゃなくてマジでウサギを作ってたんですか?」
「それ以外にないよね?」
「えー……さすがにこれは……。子供が見たら泣くレベルですよ?」
ドン引きする俺の言葉にルカの動きがピタっと止まる。
「え? もしかして、もう泣かれたんじゃ……?」
「だ、だから泣かれないための工夫をっ……!」
その時、部屋の扉からノックの音が響く。
会話を止めた俺が用心しながら扉を開けると、そこには金髪に空色の瞳を持つ青年が護衛を引き連れて立っていた。
「兄上!」
青年の姿が見えた途端、ルカが弾むような声を上げる。
それはルカの異母兄で王太子でもあるレオンハルト第一王子であった。
「ルカ。少しお邪魔してもいいかい?」
「もちろんです!」
レオンハルトの言葉にルカは嬉しそうな笑みを見せる。
そして、護衛たちを下がらせたレオンハルトが部屋の中へ入り扉を閉めた。
つまり、ルカとレオンハルトと俺の三人だけとなったのだ。
(あ………)
そこで俺はジョシュアから言い含められた注意事項を思い出す。
ルカを護衛する際、レオンハルトとルカの会話は絶対に邪魔をしてはいけないのだと……。
(まいったな)
これはルカとレオンハルトを二人きりにさせたほうがいいやつだったんじゃ……。
とは思うものの、二人は和やかな雰囲気で会話を始めてしまい、何となく部屋から出ていくタイミングを逃してしまった。
「兄上はどうしてここに?」
「ルカが魔法の研究をしていると聞いてね。その……もしかして氷の動物を作っているんじゃないかと思って様子を見にきたんだ」
どうやら、ずいぶんと兄弟仲がいいらしく、先ほどまでのツンと澄ましたルカの姿は見る影もない。
「そうなんです! まだぎこちないですが氷のウサギを動かせるようなったんですよ。ほら!」
ルカが瞳を輝かせながら指を振るうと、彼がウサギだと言い張る『何か』が再びぎこちなく動き出す。
それを見たレオンハルトは少し困ったような笑みを浮かべた。
「これは凄いね……。でも、ルカも忙しいだろう? 時間を捻出するのも大変じゃないかい?」
「いえ、僕が好きでやっていることですから」
「いや、でも、何もアーロのためにここまでしなくても……」
「アーロの笑顔を見るためならどうってことはありません」
どうやらルカは甥のアーロ王子のために不気味な氷の彫像を作り出しているらしい。
俺は空気に徹しながら二人の会話を見守り続け……色々と察した。
(これって絶対アーロ王子が嫌がってるやつじゃん)
言葉を選びながら遠慮がちにルカの彫像製作を止めようとしているレオンハルト。
それに全く気がついていないルカ。
まあ、三歳児にあのウサギもどきは刺激が強いよなぁ……と、俺は思わず遠い目になってしまう。
だが、純粋にアーロのために頑張っているルカを、どう止めればいいのかとレオンハルトは苦戦している。
ルカが善意百パーセントだからこそ言いづらいのだろう。
気持ちはわかるが、このままでは誰も幸せになれない。
(仕方ねぇなぁ)
埒が明かない二人のために俺が一肌脱いでやることにした。
「ルカ殿下。レオンハルト殿下は氷の動物もどき作りをやめてくれって言いにきたんですよ」
「え……」
「は?」
突然会話に割り込んだ俺へ、二人は驚いた表情を向ける。
「何を言って……」
「さっき子供に泣かれたって言ってたじゃないですか。あれってアーロ王子のことですよね?」
「それは………」
「その時点でアーロ王子が怖がってるって気づきましょうよ」
そこへレオンハルトが言いづらそうに口を挟む。
「実は、ルカの作った氷の動物たちをアーロが夢にまで見るようになってしまって……。泣きながら夜中に目を覚ますんだ」
「そんな……!?」
ルカが驚愕に目を見開く。
「ほらぁ……悪夢まで作り出しちゃってるじゃないですかぁ」
「で、でも、閣下が作った氷の動物にはあんなに喜んでいたのに……」
「閣下のはちゃんと動物でしたからね。同列に語っちゃダメでしょう」
「だって僕が氷の星を作って見せた時、他にも作ってほしいってアーロがせがんだから……だから……」
「星?」
俺の問いかけに応えるように、ルカは無言で氷の星を作ってみせる。
それはまごうことなく星。
どこかが歪だったり、人の顔が浮かび上がってもいない正真正銘のただの星だった。
「星は普通に作れるんですね」
そのまま色々とリクエストをしてみると、丸や三角、四角などの図形ならばまともに作れることが判明する。
「だったらこういうのはどうです?」
俺はルカが作った長方形の氷塊を積み上げ、そのてっぺんに三角形の氷塊を載せてみた。
積み木で作ったような簡素な家が出来上がる。
「図形を組み合わせて子供が入れるくらいの家とか作ってみたらアーロ王子も喜ぶんじゃないですか?」
それならば氷を動かすような繊細な魔法操作は必要もなく、すぐに作ることができるだろう。
代わりに巨大な氷塊がいくつも必要になるが、そこはルカの魔力量の多さでカバーできるはずだ。
「それはいい! アーロはままごとも好きだからな。きっと喜ぶだろう」
「え……でも……」
「暑い日なんかに氷の家があったら涼しくて最高でしょうね」
必死の説得を試みるレオンハルトを俺も援護してみせる。
「あ、兄上がそう言うなら……」
完全に納得しているとは言い難い表情のルカ。
しかし、とりあえずの活路は見出せたと判断していいだろう。
あとはアーロの反応次第だが、不気味な氷の動物よりかは氷の家のほうがマシだろうし、可愛い甥の笑顔を見ればルカだって考えを改めるはずだ。
(丸く収まってよかったよかった)
だが、一人満足気に頷く俺にレオンハルトから思わぬ声がかけられる。
「ありがとう。オリバー」
「いえいえ……って、え? 名前……?」
ルカと同様、俺はレオンハルトの護衛に付いた経験もなく、こんなに近くで顔を合わせることも初めてだった。
それなのに俺の名前を呼んだこと……何より、親しみが込められたレオンハルトの眼差しに戸惑ってしまう。
「オリバー。君はもう忘れてしまったかもしれないが、私たちはずいぶん前に会ったことがあるんだ」
そして、レオンハルトが語ったのは十年以上も昔の話だった。
当時、好んで読んでいた本の影響を受け、レオンハルトは平民たちの暮らしぶりが知りたいと王都の街へ繰り出す。
しかし、第一王子が一人で街歩きなど許されるはずもなく、護衛たちに囲まれた状態にうんざりしていそうだ。
そこで護衛たちの隙をついて逃げ出したところ、とある兄妹に出会って……。
(んん?)
レオンハルトの話を聞き、俺の脳裏にも当時の思い出が蘇る。
護衛から逃げてきた少年と出会い、俺がアリアと少年を抱えて風魔法で逃げ回り、並んで串焼きを食べて……。
「あーっ!! あの時の世間知らずか!?」
思わずレオンハルトを指差しながらデカい声で叫んでしまった。
「兄上に対して何てことを言うんだ! 不敬だぞ!!」
「悪い悪い! えっと、あの時の温室育ちですか?」
「言い換えろって意味じゃない!!」
「あれ? でもアイツって金髪だったけ……?」
「おい! 聞いているのか?」
ルカの言葉を聞き流しながら、俺は思案に耽る。
なぜなら、記憶の中の少年は明るい茶髪に焦茶色の瞳だったからだ。
「幻影魔法で髪と瞳の色を変えていたんだ」
「ああ、なるほど!」
疑問が解消されてスッキリした俺は改めてレオンハルトの空色の瞳を見つめる。
「なんだ王子だったのかよ。言ってくれりゃあよかったのに」
「さすがにそれは明かせなくてね。それに、私が王子だと告げれば君たちは態度を変えて……いや、それでも君は私に付き合ってくれただろうな」
そう言ってレオンハルトは懐かしむように微笑む。
「あのあと大丈夫だったのか?」
「城に帰ってから父にもずいぶん叱られてしまったよ。護衛も倍の人数に増やされて、あんな風に王都の街を歩いたのは後にも先にもあの日だけだった……。あの時、君たちと食べた串焼きの味は今でも忘れられないよ」
「なんだよ。そんなに気に入ったなら、また食べにいきゃいいじゃん」
「え?」
「護衛がいればいいんだろ?」
そう言いながら、俺は自分自身にくいっと親指を向ける。
「それに、あの頃と違って俺も王都は長いからな。美味い飯屋に連れていってやるよ」
俺の言葉を聞いたレオンハルトの瞳が大きく見開き、やがてキラキラと輝き出す。
たしかにその表情は、嬉しそうに串焼きに齧りついていたレオと名乗る少年の面影があった。
(あっ……!)
その時、俺はこの件に関する最重要事項を思い出す。
「なあ、あの時の串焼きって……俺が奢ってやったよな?」
たしか、レオは金貨しか持っておらず、屋台で支払いができなくて代わりに俺が銅貨で支払ってやったのだ。
「え? あ……ああ、そうだったね」
「じゃあ今度はお前が奢ってくれよ。あっ! 金貨はもう無しな!」
すると、ルカが慌てたように会話に割り込んでくる。
「まさか、兄上に奢らせるつもりなのか?」
「だって、奢ってもらったら次は奢ってやるもんだろ?」
まあ、俺は奢ってもらうことのほうが圧倒的に多いけど。
「なるほど。そういうものなのか……」
「兄上! 騙されないでください!」
「よし! それじゃあ、いつにする?」
「おい、勝手に話を進めるな!」
「なんなら今から食いにいくか? ちょうど昼飯の時間だし……。あ、ルカ殿下もどうです?」
「行くはずがないだろう!」
「ルカもどうだ? いい経験になるぞ」
「あ、兄上がそう言うなら……」
こうして俺たち三人は、こっそり王都の街へ繰り出す……。
そして、その日の終業後。
再び団長の執務室に呼び出された俺は、ジョシュアによって王子二人を街へ連れ出した件をこっぴどく叱られるのであった。




