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受難の日1(sideテオドール)

読んでいただき、ありがとうございます。

コロナからやっと解放されたのに、また家族が発熱しました。日曜日なのに、明日も祝日なのに……。


※今回はテオドール視点です。少し短めです。


よろしくお願い致します。

「なあ、お前の幼馴染のアリアちゃんが王太子殿下と噂になってるみたいだけど、お前知ってた?」

「え?……何それ?」


フィンがアリアのことを、名前にちゃん付けで呼んだことに若干の苛つきを覚えたが、それよりも王太子との噂というのが気になった。


「やっぱり知らなかったか。お前、噂とかに興味なさそうだもんな」

「そんなことより、どんな噂?」

「どうやら王太子殿下がアリアちゃんのことを気に入ってるらしくって、しょっちゅう声掛けてるんだって」

「は?なんで?」

「さあ?そこまではわかんねーけど」


(レオンハルトが?アリアに?)


この国の王太子であるレオンハルトと僕は、再従兄弟の関係になる。

何度か顔を合わせたことがあるが、僕と同じ読書が趣味でそれなりに話も合い、真面目で穏やかな好感の持てる人物だった。


レオンハルトは僕と同い年なので、アリアとは学年が違う。そして彼は普通科なので、魔術師科のアリアとは校舎も違う。

僕もアリアと同じ学園で過ごせることを楽しみにしていたのに、学年も校舎も違うとなかなか会う機会がないのが実情だった。


それなのに、レオンハルトはどこでアリアと知り合ったのだろう?


(それに、しょっちゅうアリアに声を掛けてるって……。それは本当のことなのか?)


噂はどこまでが真実かはわからない。全てを鵜呑みにするわけにはいかない。

しかし、全く接点が無いはずのレオンハルトとアリアの名前が出るということは、この2人に噂になるような何かがあったはず……。


(僕なんて全然アリアに会えてないのに)


レオンハルトに恨みがましい気持ちを抱く。


騎士科も3年生にもなると、授業のほとんどが稽古と訓練だ。

卒業後は僕のように自領の騎士団に入る者もいるが、王立騎士団への入団を目指す者も多い。

その為、学生とはいえ、実際の騎士団とほぼ変わりない

生活を送っている。


午前の授業終了後は、片付けや着換えなどに時間がかかり、他の科とは違って昼休みにゆっくり食堂で食事をする時間が取れない。皆、昼食は教室で慌てて食べている。

そして午後の訓練を終えた放課後には、疲れ果てていて遊ぶ気力もなく、すぐに帰宅する。

そんな毎日を送っていた。


仕方がないことだが、同じ学園に居るのにちっともアリアに会えないのは辛い。レオンハルトはずるい。


しかし、レオンハルトには幼い頃からの婚約者が居たはずだ。

婚約者が居るのに、特定の女子生徒に頻繁に声を掛けたりするだろうか?

なんとなく、そんな行動は彼のイメージに合わない。


それに……アリアは近いうちに僕と婚約することになるはずだ。


10年前に母と約束した通り、僕はグルエフ辺境伯家の後継者として認められるようにひたすら努力した。

2年前の隣国との小競り合いでも、父の側で次期後継者として補佐を務め、経験を積んだ。

もちろん、まだまだ足りないことはわかっている。

それでも幼い頃とは違い、次期後継者としての覚悟はしっかりと出来ていた。


(いつアリアとの婚約の話が出るんだろう?)


学園の入学に合わせてアリアの庇護は解くと、母からの手紙には書かれていたが、その後は何も音沙汰がない。

うちの両親がローレン家に婚約の打診をしてからになるのだろうか?

今更ながら不安になってきてしまう。


(ああ、アリアに会いたいな……)



◇◇◇◇◇◇



アリアとレオンハルトとの噂が気にはなっていたが、アリアに会って聞くことも出来ず、モヤモヤした気持ちのまま数日が経った。


「なあ、アリアちゃんやばいかも!」


昼休み、フィンが慌てた様子で僕の元へとやって来た。


「なにがやばいの?」

「例の噂がクレメント嬢の耳に入ったみたいで、かなりお怒りだってさ。アリアちゃん家は男爵家だろ?侯爵家に睨まれたらさすがに……」

「まさかっ!」


僕はアリアの噂がそこまで大きな出来事になるとは思ってもいなかった。


「ただの噂なのに、なんでそこまで……」

「そりゃあ、お前みたいな王家の血が入った高位貴族ならそんなことにはなんないだろうけどさ。男爵令嬢が王太子とっていうのは、噂でもさすがに許されないだろ?」

「………」

「ローレン先輩の時みたいに、魔術師団長が後ろ盾になってくれてたなら別だろうけど」


そう。オリバーの喧嘩相手の魔術師科の生徒には、男爵家よりも格上の家の子息が多かった。

それなのにオリバーが平気だったのは、早々にオリバーの才能に目を付けた王立魔術師団長が居たからだ。


──じゃあ、アリアには?


グルエフ辺境伯家の庇護を解いたと書かれた、母からの手紙の文字が頭に浮び、背中に嫌な汗をかく。


母がわざわざ手紙で知らせてくれていた。

僕はレオンハルトとアリアの噂も聞いていた。

そして、レオンハルトに婚約者が居ることも知っていた。

それなのに……


(僕は一体何をやってるんだ?)


今僕がすべきことは、アリアに会えないとウジウジすることじゃない。


この日、初めて僕は午後の授業をさぼった。




補足になりますが、騎士科の生徒が全員テオドールのような生活を送っているわけではありません。

適度に手を抜いて遊ぶ時間を作っている生徒もいます。

真面目で不器用なテオドールはそれが出来てないだけです。


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― 新着の感想 ―
こんなぽんこつヘタレなテオドールにアリアを任せたくない(ب_ب)
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