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運命の人2(sideレオンハルト)

読んでいただき、ありがとうございます。


※今回はレオンハルト視点になります。

王都の視察から戻った私は、私室の本棚を漁っていた。

集めた本はかなりの数になってしまい、読まなくなってしまったものは王立図書館に寄贈している。

この本棚に置いてあるのは気に入ったものだけなのだが、それでも多い。


(たしかまだ置いてあったはず)


探すこと数分で、私は目当ての本を見つけた。

それは10年以上前に、他国の市井で流行った恋物語だった。


とある国の王子が身分違いの少女と恋に落ちる。しかし、王子には幼い頃から決められた婚約者が居た。その婚約者からの嫌がらせにも負けず、王子と少女は愛を育み真実の愛を貫く。


私自身が第一王子ということもあり、この物語を読んだ時はのめり込んでしまった。


そして驚いたことに、この物語は実話を元に作られたものらしい。

残念ながらこの王子とされる人物は若くして病に伏せってしまい、それに伴いこの本も絶版となってしまったそうだが……。


私はパラパラとページを捲る。


(やはりそうだ)


物語の冒頭、学園での王子と少女の出会いのシーン。

腕に怪我を負った王子を、少女が光魔法で癒やすのだ。

挿し絵の少女の周りには光の粒が舞っている。


(これはまるで私と彼女のようではないか?)


私は今日の視察で偶然出会った、アリアと名乗る光魔法を持つ少女を思い浮かべる。


私より年下のはずなのに、ハンカチが汚れることも気にもせずに私の口の周りを拭いてくれる世話焼きなところも、たかが露店のリボンをプレゼントされることさえ遠慮する控えめなところも……どの姿もとても愛らしい少女だった。


代わりにリボンを選んで欲しいと頼まれた時は、思わず自分の髪と瞳の色のものを選んで渡してしまった。


「とっても綺麗な色ね」


そう笑顔で言われた時、自分自身を褒められたような、なんだかくすぐったい気持ちになった。

幻影魔法で本来の髪と瞳の色を変えていたので彼女が気付くことはないだろうが……。


(彼女は貴族なのだろうか?)


名前を聞いた時には家名を名乗っていなかった。

服装やあの崩した口調を考えると平民でもおかしくはないのだが、彼女の所作はとても美しく品がある。

しかし彼女の兄であるオリバーの言動を思うと、やはり平民な気もしてくる。


それ以来、私はアリアのことが頭から離れなくなってしまった。


そして、あの出会いから何度か王都の視察に出向いたが、アリアを見かけることはなかった。

ちなみに、アリアと出会ったあの日の視察の後は久しぶりに父に叱られ、護衛騎士も増やされてしまい、すっかり王都観光のような視察に逆戻りした。



私には幼き頃より決められた婚約者がいる。

私の婚約者は高位貴族の令嬢で、真面目で優秀でこんな私を慕ってくれている素敵な人だ。


婚約者を大切にしなければ……。


頭ではわかっている。

それでも今、私の心を占めるのは薄桃色の髪に大きな翠の瞳をした少女の笑顔だった。


そして私の立太子が決まり、私は晴れてこの国の王太子となった。……なってしまった。


私の気持ちは置いていかれたまま、私が王となる道はどんどんと整えられていく。



◇◇◇◇◇◇



それからさらに月日が経ち、私は王立学園へと入学した。そして数ヶ月が経った頃、とある噂を耳にする。


「またローレン先輩の圧勝だってさ」

「なんかもう、喧嘩じゃなくて腕試しみたいになってきてるよな」


そう興奮気味に話す男子生徒達。


ローレン先輩という2年の経営学科の男子生徒が、なぜか魔術師科の生徒達と喧嘩をして負け無しという話だった。

それはもう経営学科ではなく、魔術師科に転科するべき人材ではないだろうか。


そしてそんな噂の的のローレン先輩の名前がオリバーで

、薄桃色の髪に翠の瞳をしていると聞いた時、私はすぐに確かめようと従者と共に経営学科へと向かった。


(やはりオリバーだ!貴族だったんだ)


そこに居たのはあの日出会ったアリアの兄オリバーだった。

つまり彼の妹のアリアも貴族ということだ。


ローレンは辺境近くに領地を持つ男爵家の名だ。

貴族であり、希少な光魔法を持つアリアは必ずこの学園に入学して来るはず。

ますますあの物語のようだ。


「しかし、殿下。そのアリアという少女は何歳なのですか?殿下の在学中に入学されるのでしょうか?」

「あ………」


従者の冷静な質問に、興奮していた気持ちが一瞬で冷える。


「年齢はわからないんだ。私の1つか2つ下だとは思うのだが」

「わかりました。こちらで調べておきましょう」


この従者は私の乳母だった人の息子で、幼い頃からずっと共に過ごして来た私とルカの幼馴染でもある。とても優秀な者だ。

彼にだけはアリアのことも話してあった。


この従者に相談すれば、きっと私の望む道へと導いてくれるはずだ。



◇◇◇◇◇◇



あれからさらに2年が経った。

やっと今日アリアがこの学園に入学してくる。


調べたところ、アリア・ローレンは光魔法を発現した5歳の頃よりグルエフ辺境伯の庇護下に置かれている。

しかしグルエフ辺境伯の後継者であるテオドール・グルエフと婚約を結んでいるわけではないようだ。


グルエフ辺境伯とはやっかいだと思っていたが、学園に通うにあたり無事にその庇護は解かれた。

現在彼女には婚約者はいない。


──彼女はどんな女性になっているんだろう?


「きゃああああっ!」


今日から学園に来ているはずのアリアを探し、あてもなく学園を歩いていた私は、咄嗟にその悲鳴の元へと急いだ。

そこに居たのは、なぜか仔猫を胸に抱いて座り込むアリアだった。


(やっと会えたっ!)


こんなところで再会出来た。やはり君は私の運命の人だ。


しかし彼女は私が誰だか気付かない。

あの時とは髪と瞳の色が違うのだから仕方ない。


「私はレオンハルト・ミズノワールだ。よろしく頼む」


だからここから始めよう、あの物語のように。


※補足となりますが、レオンハルトが感化された恋物語はブラッドとリリーの物語です。

イザベラ断罪後、有力貴族の後ろ盾を得られないブラッドが、民からの支持を得る為に(側近達が)考えた苦肉の策でした。

まさかのこの策が当たり、市井にこの物語は流行ってしまいます。(元々光魔法の使い手は人気のある国なので)

結局その次の一手を打つことができなかったので王太子の地位を守ることは出来ませんでしたが、ブラッドが王太子の地位を退くまで少し時間がかかり、引退理由も(表向きは)病による蟄居となりました。



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― 新着の感想 ―
[一言] この第一王子は駄目だw 多分第二王子も別のイミで駄目な気がするwww
[気になる点] 感化された物語が最悪だったね。うん。レオ君、諦めよう。君、軟弱なとこ変わってないし。イザベラであった記憶をどう活かしてくるか、気になるところです。 [一言] アリアはテオ君のこと好きな…
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