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運命の人1(sideレオンハルト)

読んでいただき、ありがとうございます。


※今回はレオンハルト視点になります。

今日も私は自室のベッドの上で本を開き、物語に没頭する。


日中は王太子としての教育に時間を取られ、ゆっくりと読書が出来るのは、夜寝る前の限られた時間しかない。


物語を読んでいる間、私は自由だ。


ある時はドラゴンと対峙する勇敢な戦士に、またある時は世界中を旅する未来の大商人、どんな難事件をも解決する名探偵にだってなれる。

そうして物語の中にある空想の世界に思いを馳せて、そのまま眠りにつく。


──そうしないと、余計なことばかり考えてしまうから。



私はこの国の第一王子として生まれた。

母は正妃で、私の血筋は申し分なく、生まれた時からこの国の王の後継者として育てられた。


そして私には2歳下の弟、ルカがいる。ルカの母は側妃なので異母弟になる。

ルカは幼い頃から病弱で、激しい運動をすれば咳が止まらなくなり、すぐに体調を崩してはよく熱を出していた。


父から「母は違えどもルカとは2人きりの兄弟なのだ。兄弟で支え合ってこの国を守っていかねばならない」と言われていた。

私は父に言われた通り、ルカを弟として大切にした。

ルカが体調を崩せば必ず見舞いに行き、元気になれば一緒に遊んで過ごした。

そして、「兄上!兄上!」と私に懐いてくれるルカがとても可愛かった。


私は兄として弟の手本となれるよう、勉学も武芸も必死になって頑張った。

そんな私を、弟も周りも認めてくれている。ずっとそう信じて疑いもしなかった。




ルカが9歳になった頃、ルカは魔力に目覚める。

それは凄まじい程の魔力で、それを見た当時の王立魔術師団長がその場でスカウトするくらいだった。


その頃からだろうか……ルカは体調を崩さないようになり、それならばと、今まで控えていた剣術などの武芸を学ばせるようになる。

すると、ルカは頭角を現しだした。


元々ルカはとても頭が良かった。

ただ、体力がなかったので、長時間の授業に耐えられず、必要最低限の授業時間しか取れなかった。

しかし、武芸を学ぶようになると体力もつき始め、長時間の授業も耐えられるようになっていく。

すると水を得た魚のように、ルカは凄いスピードで様々な知識を吸収していく。


あっという間に、私はルカに追い付かれた。

いや、追い抜かされてしまった。


そして周りもそんなルカと私を比較し始める。


もちろん第一王子である私の前であからさまに何かを言う者などいない。

しかし、そういう空気というものは、噂されている側には存外よく伝わるものなのだ。



それでもルカは変わらず私に懐いてくれていた。

でも、私はそんなルカにどう接すればいいのかわからなくなっていく。


もちろん、自分より優秀な弟に嫉妬する気持ちもある。

でもなによりも、今まで兄として弟の手本となり、そして病弱な弟を守ってやっているつもりだった自分自身がひどく愚かで恥ずかしく、そして惨めだった……。


(果たして、私がこの国の王に相応しいのだろうか?)


そんな不安がどんどんと胸の内に広がる。


そしてその不安から目を逸らすように、私は本の中の世界に逃げ込んだ。



◇◇◇◇◇◇



私の部屋にはこの国だけでなく、他国からも取り寄せた様々な本が本棚に並べられてある。

今読んでいるのは他国で流行している破天荒な国王の物語だ。


とある国の王である主人公が、夜な夜な変装して街の酒場に繰り出し、街の人達から困り事を聞いてそれを解決していくという物語。

平民達の話を聞いた主人公が、役人の不正を断罪するシーンは痛快で、胸のすく思いがした。

もちろん、街の人達は主人公が国王だとは気付かない。


(格好いいな……)


私は物語の主人公に思いを馳せる。


(私もこんな風に民の思いを理解し、救い上げることの出来る王にならなければ)


そう思った私はさっそく、王都へのお忍びでの視察を願い出た。

この物語の主人公と同じ行動をすれば、立派な王になれるような気がして……。


しかし実際に変装し街の視察に出てみれば、私は同じように変装した護衛騎士に挟まれ、ただ王都を見て歩き回ることしか出来なかった。


そうじゃない。こんなものはただの王都観光だ。

いや、王都観光より酷い。

私がしたいのは民の暮らし振りを直に体験し、そして民の声に耳を傾けたいのだ。


あの主人公のように。



そこで私は一計を案じた。

次の視察の時、私は護衛騎士達の隙を狙って彼等から逃げ出した。

外敵から私を守ることを想定して動いていた彼等は、まさか護衛対象者自らが逃げ出すとは思っておらず、上手く逃げ出すことが出来た。


そして彼等から距離を取るために走っていた私は、1人の少女にぶつかり転んでしまう。

その少女の側に居た少年に怒鳴られ、そして詰問されながらも助け起こされた。


まず、怒鳴られたことが衝撃だった。


もちろん、今まで両親や教師達に叱られたことはある。

しかし、同じ年頃の者に怒鳴られたのは初めての経験だった。


そして、事情を聞きたがる少年に曖昧に逃げて来たことを説明をすると、彼は言った。


「よし、じゃあ俺等が助けてやるよ」



◇◇◇◇◇◇



その少年は言葉通り、私を護衛騎士達から引き離して助けてくれた。

かなり強引な手法で……。


「ううっ……気持ち悪い……」


少年は風魔法の使い手らしく、彼に抱えられながら街の路地を縦横無尽に猛スピードで駆け抜けた。

人を2人抱えながら、あのスピードと魔法操作の正確さ

は眼を見張るものがある。

並の土魔法しか使えない私にとっては、羨ましい限りだ。


しかし、気分が悪い。

あのスピードで振り回されたせいで、酔ってしまった。


「あの……大丈夫?」


控え目にそう尋ねてくるのは、私がぶつかってしまった少女だった。

背中を撫でてくれる彼女の手はとても心地よい。


すると、今度は足の痛みに気付く。

彼女にぶつかり転んでしまった時に怪我をしたようだ。


「足が痛い……」

「お前、さっきから軟弱だよな」

「お兄様は黙ってて!」


少年の言葉には容赦がない。

しかし、彼女はそんな彼を諌めて私のことを心配してくれた。

とても優しい少女だ。


「……傷を治すから、少しだけじっとしてて」


私の傷口を見た彼女はそう言うと、かざした両手からたくさんの小さな光の粒が現れ、そしてその光の粒が私の傷口を覆う。


(まさか、光魔法!?)


主に回復効果の魔法がメインの光魔法はとても希少で、

王城でもとても重宝されている。


光の粒を纏った愛らしい少女の顔を見つめながら、私は以前読んだとある物語の登場人物を思い浮かべていた。





明日14時頃投稿予定です。

よろしくお願い致します。

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