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わたくしの幼馴染1

読んでいただき、ありがとうございます。

今回は少し短めです。

オリバーが王都で暮らし始めて2ヶ月が経った。

最初の頃は、オリバーの居ない邸宅はなんだか静かで違和感があったが、さすがにそれにも慣れた。


そして、今はテオドールが遊びに来ている。


幼い頃は3人一緒によく遊んでいたが、最近はずっとオリバーとテオドールが手合わせをするのが定番だった。

だから、オリバーが居ない我が家には、もう遊びに来ないだろうと思っていたのだけれど……。


今は邸宅の書庫で2人で読書をしている。


(テオはつまらないんじゃないかしら?)


わたくしでは手合わせの相手にもなれないし、もう外で走り回って遊ぶ年齢でもない。

結局、わたくしの好きなことに付き合わせてしまっている。


そっとテオドールの横顔を盗み見る。

切れ長でシャープな目元に、スッと通った鼻筋、しかしその眼差しは幼い頃から変わらずずっと優しい。


「ん?」 


テオドールがわたくしの視線に気付き、こちらに顔を向ける。


「どうしたの?」

「その、テオがつまらないんじゃないかって、心配で……」


テオドールは驚いたように目を見開いた。


「そんなことないよ!」

「でも、いつもはお兄様と手合わせしてたでしょ?読書じゃ物足りないんじゃない?」

「いや、僕はもともと読書が好きだし、それに手合わせはオリバーがいつも強引に……」

「そうなの?」

「家の方針で体を鍛えなくちゃいけないけど、本当は部屋に籠もって何かするほうが性に合ってるんだ」


ちょっと苦笑いを浮かべながら、テオドールはそう言った。


たしかに幼い頃のテオドールは、運動が得意なオリバーに必死について行っていた記憶がある。

いつの頃からか、オリバーと対等にやり合うようになり、すっかり忘れてしまっていた。


「家じゃゆっくり本を読む時間もなかなか取れないし」


少し照れたような顔で俯きながら、目線だけはこちらを向ける。


「それに、アリアと一緒に過ごす時間は楽しいんだ。だからつまらなくなんてないよ」

「……っ!」


そう言われて、急に胸が苦しくなった。


「そ、それなら良かったわ」

「うん」


なぜだか、テオドールの顔が見られない。

わたくしは慌てて持っていた本に視線を落とす。


(な、なんなのかしら、これは……)


今まではずっと3人で過ごしていたから、テオドールとこんな風に2人きりになることはなかった。

それに、テオドールは幼い頃からずっと優しくて、緊張する相手ではなかったはず。

男性だけれど、幼い頃から一緒だった大切な友人……。


その時ふと、以前オリバーがなぜかテオドールの服を脱がしにかかっていた時のことを思い出す。


いつもテオドールはボタンを上まできっちりと留めている。

そして、手合わせの後でいくら汗をかいていても、アリアの前でボタンを外すことはなく、用意された部屋で着替えていた。


あの時は、テオドールが抵抗してシャツを全部脱ぐことはなかったが、オリバーに捲られてはだけたシャツの下には鍛えられた筋肉があった。

それをアリアはばっちり目撃してしまった。


(わたくしったら何を思い出しているのかしら)


普段は温厚で穏やかなテオドールが、あんなに鍛え上げられた身体をしていただなんて……。


(だ、駄目よ!はしたないわ!)


「あのさ、アリア」

「は、はははい?」


不埒なことを考えていたその相手から声をかけられて、

思いっきり動揺してしまう。


「来月うちの領地でお祭りがあるんだけど、良かったら遊びに来ない?」

「お祭り?」

「うん。そんなに大規模なものじゃないけど、朝から屋台もたくさん出るんだ」


屋台と言われて、数ヶ月前の王都を思い出す。

あの後は結局時間が足りなくて、ゆっくり買い物が出来なかったのだ。

だからお小遣いはまだ残っている。


「その、一緒に祭りを見て回りたいんだけど……どうかな?」

「ええ、楽しそう!」

「良かった!」


テオドールが安心したように笑う。


「お昼は屋台の食べ歩きをしようか?」

「いいわね!銅貨をたくさん用意しなくちゃ」

「街中が飾り付けられていて、とても華やかなんだ」


2人でお祭りの計画を立てているうちに、先程の緊張した空気は和らいでいく。


「とても楽しみだわ」


アリアはやっと、テオドールの顔を見て笑った。




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