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僕の幼馴染2(sideテオドール)

読んでいただき、ありがとうございます。


※今回もテオドール視点になります。

ローレン家の主治医に診てもらったところ、もう傷口は完全に塞がっていて治療の必要はないだろうと言われた。

そして、僕の側に倒れていたアリアも、魔力切れが原因なので命に別状はないという。


僕は安心すると共に、アリアが光魔法で助けてくれたこと、そのせいで魔力切れを起こして倒れてしまったことを知る。

彼女は命の恩人だった。

僕も母も、アリアに心からの感謝を伝える。


そして、グルエフの邸宅に帰った僕には、母からのお説教が待っていた。

正直、この時のことは今でも思い出したくはない……。



領地に帰ってからも、僕はアリアのことばかり考えていた。

なぜだか、あの光の粒を纏った姿が脳裏に焼き付いて離れない。


僕はまたローレン家に行きたいと何度もお願いしたけれど、危ないことをして迷惑をかけた罰だと言われ、許可は下りなかった。

それよりも、そろそろ本格的に剣術や体術を学ぶべきだと、毎日の稽古が始まってしまう。

でも僕はやっぱり武芸は好きになれなくて、ちっとも稽古に身が入らなかった。


◇◇◇◇◇◇


それから数ヶ月が経った頃、ローレン一家が揃って我が家に招待された。

僕は久し振りにアリアに会えると、ドキドキしていた。


「つまり、わたくしはテオドールさまのこんやくしゃになるということでまちがいないでしょうか?」

「ゴホッゴホッ!」


アリアの突然の発言に、僕は驚いて思い切りむせる。


(婚約者?)


もちろん婚約者の意味はわかっている。

将来結婚する相手のことだ。


(僕とアリアが結婚……)


考えただけで顔が熱くなる。


でも、母はそれをあっさりと否定してしまった。

アリアはまだ5歳だから。それに僕をもっと鍛えなければいけないと……。


納得がいかなかった僕は、ローレン一家が帰った後に母に疑問をぶつけた。


「どうしてアリアを僕の婚約者にしてくれないのですか?」

「あら、さっきも言ったでしょう?」

「でも、アリアを僕の婚約者にしたほうが、アリアを他の人からちゃんと守れると思います」


そうなのだ。

僕の婚約者にしたほうが確実に他の縁談から守れるはず。


「どうしてそう思うの?」

「だって、僕はグルエフ辺境伯家の後継者です。そんな僕の婚約者になれば……」


言いかけた言葉を途中で止める。

だって母が、微笑んでいたから。

ただし、目は全く笑っていない微笑み。

この顔をしている時の母は、かなり怒っていることを僕は知っている。


「あらあら、テオドールがそう言うのなら、こちらも言わせてもらうわね。今のあなたのどこが我が家の後継者なのかしら?」

「それは……」

「我が家がこの国の守りの要だということは、もうわかっているでしょう?それなのに、部屋に籠もってばかりで、毎日の稽古はうわの空。後継者になろうという意思が全く感じられないわ」

「……」

「我が家の権力を行使したいなら、きちんとその責任を果たしなさい」


母の言葉がグサグサと心に突き刺さる。


「だって……僕には才能がないから……」


自分には秀でた武芸の才能が無いことなんて、わかりきっている。

それなのに、僕はこの家の一人息子として産まれてきてしまった。


「『才能が無い』なんて言葉は、死に物狂いで努力した人間が最後に言うセリフよ?」

「……」


僕は俯き、必死に涙を堪える。

そんな僕に母は近付き、そっと両肩に手を添えた。


「あなたに当主としての適性が無ければ、他の人間を後継者にすることもできるわ」

「……」

「テオドール。あなたには『努力する才能』があることを願っています」


僕は自分の考えの甘さを思い知る。

一人息子だからどんなに出来が悪くとも、結局は後継者は僕しかいない、いずれは僕が当主になるのだと、そう思っていた。


「我が家がアリアちゃんの後ろ盾になるのは10年間だけよ。その後は、アリアちゃんが誰と婚約を結ぶのかは自由……。あなたが婚約者になりたいのなら、それまでにしっかりと力を付けなさい」


これからの10年間で後継者としての適性を見せろ。

そうすれば、アリアを婚約者にすることを認めると暗に言われる。


僕が自分の責任から逃げ回る時間は終わった。

そろそろ向き合わなければならない。


それからは、必死で毎日の稽古に取り組んだ。

やっぱり僕に武芸の才能はない。

それでも、毎日毎日ひたすらに教えを請う。


すると、少しずつ上達していくのが自分でもわかるようになってくる。

色白でひょろひょろだった僕の身体も、背が伸びてしっかりとした筋肉も付いてきた。


そして僕が10歳になり、剣術の稽古をしているその時に突如として魔力が発現した。

僕の魔法は『強化魔法』だった。

その名前の通り、魔法をかけた対象を強化する。

自分自身にかければ身体が強化され、手に持つ武器にかければ武器の攻撃力と耐久力が上がる。

戦うことに適した魔法だった。


それからの僕はどんどん強くなっていった。




テオドール視点もう1話だけ続きます。

よろしくお願い致します。


誤字報告ありがとうございました。

命に別条→別状

修正致しました。

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