断罪1
前半はシリアスなシーンもありますが、基本はゆるい内容です。
よろしくお願い致します。
「イザベラ・トゥールーズ公爵令嬢!本日をもってそなたとの婚約を破棄する!」
声高らかに宣言したのはこの国の王太子であるブラッド・モンフォール殿下。
ゆるやかなウェーブのかかった金髪に、翠の瞳の華やかな顔立ち、まさに王子様といった風貌だ。
そんな王太子の横には、薄桃色の髪に大きな茶色の瞳の少し幼さを感じさせる顔立ちの美少女が、不安気な表情をしながらもしっかりとブラッドの左腕にしがみついている。
そして今は、王都にある学園の卒業パーティーの真っ最中である。
(やはりこうなりましたわね……)
ブラッドに名指しされたイザベラ・トゥールーズは、無表情のまま真っ直ぐにブラッドを見据える。
銀の長い髪に紫の瞳、透けるように白い肌、しかし表情をあまり表に出さないせいか、冷たい印象を与える。
7歳上の兄から贈られた、瞳と同じ紫色のグラデーションが美しいドレスを身に纏っている。
本来ならばこのようなパーティでは、婚約者であるブラッドからドレスを贈られるべきなのだが……。
イザベラの向かいに立つ王太子と薄桃色の髪の少女は色を揃えた衣装を着ている。
つまりはそういうことであった。
「イザベラ!貴様はあろうことか、光の魔力を持ち、いずれ聖女となるリリーに悪行の限りを尽くした。そのような者を王太子妃にするわけにはいかない。そして私はリリーを新たな婚約者に迎え入れる!」
ブラッドはそう力強く言いながら、隣に立つ少女、リリー・ベネット男爵令嬢を抱き寄せた。
(聖女ねぇ……)
それでもイザベラは動じず、ブラッドを見据えたままだった。
そんなイザベラの態度に苛立ったのか、ブラッドは3名の男子生徒を呼び寄せた。
3人はリリーを守るような位置に立つ。
彼等はそれぞれ、宰相、騎士団長、魔術師団長の息子で、ブラッドの側近であった。
宰相の息子がイザベラがリリーへ行った
悪行の数々を告発する。
(まあ、どれもわたくしが指示してやらせたことですから、何も反論はありませんわね。わたくしの手の内の者に裏切り者がいたのでしょう。もしかしたら最初から内通者を潜り込ませていたのかもしれませんが……)
イザベラの敗因は、状況を見極めるために時間を置きすぎて、初手が遅れたことである。
慌てて動き出した時には、すでにこちらの分が悪かった。
(仕方ありませんわ。やりたくてやったことではないとはいえ、あの男爵令嬢に対して行ったことは事実。その責任は取りましょう)
一言も発せず、ただ自分を見据えるイザベラに苛立ちながらブラッドは告げる。
「イザベラ・トゥールーズ公爵令嬢の貴族籍を剥奪し、北の修道院へ行くことを命ずる」
その言葉にイザベラは軽く目を閉じ、再びブラッドに視線を合わせる。
「ブラッド殿下は本当にそれでよろしいのですか?」
「イザベラ、何を言っている?お前の行いが招いたことだ。私はリリーと真実の愛を貫く。貴様のすました面など二度と見たくもない」
心底憎々しげにイザベラを睨んでいる。
「かしこまりました。慎んでお受け致します」
(殿下にもご自分の行いの責任は、ご自身で取っていただきましょう)