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Happiness 幸福というもの 9-2
9-2.
できるものなら話したくはなかったけれど・・。
「10月の終わりのご両親との顔合わせのあった日、洗面所でね
笠原くんのお母さんに言われたの」
「洗面所で?」
「うん、私が食事の後で一度席を立ったことがあったでしょ?
覚えてないかな?」
笠原くんは一生懸命あの日の記憶を手繰り寄せようとしていた。
すぐに思い出せない彼に少なからずがっかりした。
私の後を追うようにして洗面所に入って来て、言いたい放題の母親だった。
あのお母さんだよ。
大概自分達も今までに何度か振り回されてきてるだろうに、そんな母親が
すぐに私を追いかけるようにして席を外したのだから、何かひとこと私に
言ったとは思わなかったのだろうか。
思わなかったから記憶にも残っていないのだろう。
「そう言えばそんな事あったような。
君が席を立った後で親父からしっかりしていて、きれいでやさしくて
気立てのいい人じゃないかって、黒崎さんのことを褒められたもんだから
舞い上がってしまって、母と君が洗面所で一緒になったこともあまり
気に留めてなかったみたいだね」
少し申し訳なさそに笠原くんが言った。




