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『Happiness 幸福というもの』  作者: 設樂理沙


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21/70

Happiness 幸福というもの 9-2

9-2.


 できるものなら話したくはなかったけれど・・。



 「10月の終わりのご両親との顔合わせのあった日、洗面所でね

笠原くんのお母さんに言われたの」



 「洗面所で?」



 「うん、私が食事の後で一度席を立ったことがあったでしょ?

覚えてないかな?」




 笠原くんは一生懸命あの日の記憶を手繰り寄せようとしていた。

 すぐに思い出せない彼に少なからずがっかりした。


 私の後を追うようにして洗面所に入って来て、言いたい放題の母親だった。


 あのお母さんだよ。

 大概自分達も今までに何度か振り回されてきてるだろうに、そんな母親が

すぐに私を追いかけるようにして席を外したのだから、何かひとこと私に

言ったとは思わなかったのだろうか。


 思わなかったから記憶にも残っていないのだろう。



 「そう言えばそんな事あったような。

 君が席を立った後で親父からしっかりしていて、きれいでやさしくて

気立てのいい人じゃないかって、黒崎さんのことを褒められたもんだから

舞い上がってしまって、母と君が洗面所で一緒になったこともあまり

気に留めてなかったみたいだね」


少し申し訳なさそに笠原くんが言った。


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