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一人と独りの静電気   作者: 枕元
一人と独りの静電気

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アフターストーリー:園田恵美

お久しぶりでございます。

また、ちょくちょく更新していきます。

位置づけとしては本編の補足と言いますか、後日談のようなものですね。


 なんで私がこんな目に。


 決まってる。


 あの日、舞華が全てを暴露したせいだ。


 私が舞香に嫌がらせをしたこと。あることから私の預かり知らないところまで全てを白日の元に晒された。


 別にそれだけなら、ちょっと問題になるだけで済んだかもしれない。いや、そんな未来があったはずなのだ。


 『園田だ!園田が俺たちのことを売りやがったんだ!!』


 全てはあの男のせいだ。あの男が余計な保身に走らなければ、そもそも学校側にこの話が広がることもなかった。


 福村舞香が何かを言っている。ただそれだけのことにすれば、サッカー部の処分もなかったかもしれない。


 実際にあの子が、どこまで問題を広げるつもりだったのかはわからない。だけど少なくとも、もっと被害は減らせたはずなのだ。


 全部だ。全部二人が悪い。


 余計なことを言う舞華と、後先考えないあのバカの二人が悪い。


 それなのに。


 (どうしてわたしが、がまんしなきゃいけないの?)


 あの日から学校に行けていない。なぜか私に向けて、冷たい視線が送られているから。


 誰も話しかけてこない。誰も挨拶をしてくれない。


 誰も私に、心配なメールを送ってこない。


 私は知ってる。それは昔、嫌というほど味わったものだ。


 簡単な話である。私は悪意に晒されているのだ。


 (そっか、わたし、()()()()()()()()()


 それはいけない。


 みんなは私を加害者だって言うけど、とんでもない。


 やっぱり私は、被害者じゃないか。


 「なにが、被害者ぶって、よ」


 あの日舞華に言われた言葉が、胸に刺さって抜けていない。だってそれは誤りだから。私は被害者ぶってなどいないのだから。


 私はずっと変わっていない。


 ずーっと。ずーっと。ずーっと。


 私は独りだったんだから。



ーーーー


 私は転校した。


 タイミングが良かったのだ。親の仕事の都合で、他県に引っ越す予定だったから。


 もとよりその話は知っており、本当は短い期間だけ一人暮らしをするはずだったのだけれど。


 あんな環境から、一刻も早く離れたかった。あんな最低な人たちから、距離を置きたかった。


 新しいクラスにはすぐ馴染めた。友達もすぐにできたし、彼氏も作った。あっという間に元通りである。


 (ほら、やっぱり私は悪くない)


 私が悪かったのならば、環境が変わっても同じ末路を辿るはず。だけどそうはならなかった。むしろ前よりもうまくできているではないか。


 (やっぱり私は、酷いことをされていたんだ)


 その証拠に、私はたくさん愛されている。


 友達はたくさんいるし、みんな私に注目している。勉強もできて、容姿もいい。運動神経だって悪くない。


 だから何もかもうまくいく。


 その筈だった。


 「なぁ、前の学校でいじめしてたって、まじ?」

 「は?」


 新しくできた彼氏からそんなことを言われたのだ。


 「いや、そんなわけ」

 「でもさ、俺の友達が言ってるんだよね。なんか嫌がらせとか結構してたらしいじゃん」


 友達?意味がわからない。


 前の学校からは県を跨いでいる。そう簡単に繋がっているわけがない。


 「俺がサッカー部で、そこそこ活躍してるの知ってるだろ?」

 「う、うん」


 だから彼氏に選んだのだ。この学校で強いのはサッカー部だ。ヒエラルキーにおいて、高位の者を選ぶのは当然だ。


 「強いサッカー部のやつとは、そこそこ交流あるんだよね。それこそ、最近活動停止になった有名なとこと、事情聞くのに連絡するぐらいにはさ」

 「あっ……」


 しまった。最悪だ。また、失敗した。


 「なんでもさ。サッカー部潰れたの、お前のせいらしいじゃん?」

 「なっ!?違うよ!?私のせいじゃないから!」


 ふざけるな。なんでそうなるのだ。


 悪いのは私じゃなくて、あのバカのせいなのに。


 「わかれよーぜ。正直普通に怖いわ、お前」

 「そんな……なんでよ……!」


 別に目の前の男に未練なんてない。執着なんてもってのほかだ。


 だけど、その地位には価値がある。手放したくなんかない。


 私は悪くないのに。


 「別に、お前のこと好きなわけじゃないし。自分だってそうだろ?なんかほら、彼女彼氏って高校生って感じがするし」

 「わたしは……」


 違くなかった。別に彼の内面なんてなんの興味もない。


 だけどその逆は許せない。ふざけるな。もっと私を見ろ。外見だけで選んでいるなんて、なんで最低な男なんだ。


 ふざけるなふざけるなふざけるな。


 「どうしてまた、私をそうやっていじめるの!?」

 

 「……?意味わかんないんだけど」


 私の言葉は響かない。届かない。


 私の居場所はここにもなかった。


 (べつに、いいけど)


 間違えたのなら、やり直すだけだ。


 きっといつか、私のことをちゃんと理解してくれる人に出会えるだろう。


 だから、やり直し。あと一年もすれば大学生だ。


 だから、べつに、どうでもいい。


 だって今回だって、わたしは酷いことを言われてるんだから。


 今日もわたしは、被害者なんだから。

重いのはあと2.3人分だけ。

あとはそう、汐音ちゃん無双……

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― 新着の感想 ―
色んな意味で大した女だねコイツは…
久しぶりに読みましたが… 被害者という言葉に甘え、恩人を裏切った挙げ句、自らの所業が暴露されていく。 最初は確かに被害者だった。 しかし彼女は闘うことを恐れ、悪党の甘言に乗って恩人を陥れた。勿論、元凶…
[良い点] ありがとうございます。待ってました。 彼女は変われなかったかー
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