ex7 私は関係ない
どうして。そんな疑問が頭の中を埋め尽くす。
目の前の男が何かをわめき散らかしているが、その内容が全く頭に入ってこない。
どうして、今さら?
あの日のことは、もう終わったことじゃないか。私も彼も、二人して被害者。それでいいじゃないか。
大丈夫だ、まだ間に合う。まだ何とかなるはず。
いや、ちがう。
私は何も悪くない。
ーーだってなんにもしていない。
目の前の男、篠原のしたことだって、私は何にも指示していない。ただ、彼が勝手にやったことだ。
白河がやったことだって、瑞樹が勝手に暴走した結果じゃないか。私がそうしろとは、一度も言っていない。
周りが勝手にしたことだ。その中心に私はいない。
「なんでそんな大事なこと、今まで言わなかったんだよ!!」
篠原がそんなことを大声で言っている。冷静になれたおかげか、やっと彼の言葉が頭に入ってきた。
「ーーーー勝手なこと言わないで!!」
そうだ、彼は勝手だ。私を彼女にする代わり、喜多見君から守ってくれるって、勝手にそう言ったんだ。
私は助けを求めていないというのに、勝手にそう提案してきたんじゃない!!
簡単な話だ。私は篠原がもともと好きで、その提案は渡りに船だった。
だって私は、否定も肯定もしていない。
それはなんにもおかしくない、ありふれたストーリー。
そして被害者は、私だ。
どうして私を責めるのだ。私が自分から何かをしたことがあったか?
ない。あるわけがない。だから問題ない。
悪いのは私以外で、私は何にも関係がないのだから。




