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一人と独りの静電気   作者: 枕元
第7章 わがまま

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新生活

 「ーーゃん!お兄ちゃん!早く起きてー!遅刻しちゃうよー!!」

 「……ううん。幸?もう朝かぁ」


 窓から差し込む朝日が、容赦なく寝ぼけた顔に降り注ぐ。朝一番にのみ得られる気持ちよさと、寝起き特有の気だるさが混じり合い、なんとも言えない気持ちになる。ここから二度寝ができれば最高なのだが。


 「早くご飯作ってよー。私が遅刻してもいいの?」

 「起きるからそこをどいてくれ」


 何せ朝から馬乗りである。幸さんや、あなたもいいお年頃なんだからもうちょっと、ね?


 とは思いつつも、少し前では考えられない甘え方であり、俺がとっていた態度のこともあり、強くはでられない。俺が悪いわけではないけれども。


 「母さんは?」

 「お母さんも下で待ってるよ!さ、はやく!」


 幸が上から降りて、無理矢理布団を剥がす。いい感じに眠気もとれてきた。俺は起き上がり、幸に手を引かれる形で階段を降りる。


 「おはよ」

 「う、うん。おはよう、修也」


 リビングに入ると、そこには母さんの姿があった。


 おじいちゃんとおばあちゃんはまだ寝ているようだ。それとも起きているが、三人の時間を作ってくれているかだ。


 「今作るから、ちょっと待ってて」


 そう言って俺はキッチンへ。


 俺たちがここにきてから3日。俺たち家族の関係は、ぎこちなさはあるものの、明らかに改善していた。


 きっと元通りとはいかないのだろう。空いた穴は、二度とは元に戻らない。


 だけど別の何かで埋めることはできる。その何かを、俺たちは生み出すために一歩を踏み出した。


 きっと三人では上手くいかなかったと思う。三人では足りない。きっと過去に押しつぶされてしまう。


 俺も、幸も、母さんも。あの日々を思い出してしまう。


 だからおじいちゃんたちを頼った。第三者の介入は、きっと俺たちにいい影響をもたらしてくれると思ったから。


 それは概ね正解だった。少なくともこの三日間、俺たちは上手くやれていると思う。


 時間はある。ゆっくりでいい。少しずつでいいから前へと進むのだ。


 「それじゃ、食べるか」

 「「いただきます」」

 

 3人揃っての朝食。少し前なら考えられなかったことだ。


 会話はない。だけど、そこに殺伐とした雰囲気はない。


 それだけでも俺にとっては大きなことだった。


 なんでもないこと。それが嬉しかった。


 ちなみに朝食を俺が作っているのは、俺と母さんで交代制で作ることになったからだ。


 理由は俺のわがままだ。特別な理由はないのだが、なんとなくそうしたかった。


 「「ごちそうさまでした」」

 「ん、それじゃ学校頑張ってな」


 「はーい。お兄ちゃんも勉強ちゃんとしなよ?」


 そう言ってそれぞれの支度を始める。


 母さんは幸を学校へ送り、幸はもちろん学校へ。


 そして俺は自宅学習である。まぁ今学期のテストは受けないんだけどな。


 ちなみに学校には理由として「体調不良」と言ってある。もちろん嘘だ。


 そして向こうもきっと気づいている。これが不登校であることを。


 それによって学校がどんな動きをするかはわからない。だけどまぁ出席日数が足りているうちは特に放置だろう。


 定期的に連絡入れるつもりだしな。今はまだ、問題を浮き彫りにさせる気はない。


 幸には苦労をかける。登校に今までの何倍も時間がかかるからだ。送り迎えは母さんが車でしているが、それでも負担は大きいだろう。それでも快く俺の提案を受け入れてくれた。感謝である。


 おじいちゃんの家を選んだのにも理由がある。俺と幸とお母さんの、それぞれの勤め先の中間にあるからってのも大きい。交通的にも都合が良かった。

 



 そしてこれからの1ヶ月で、俺はたくさんの選択を迫られることになる。

 それは自分を守るものであり、誰かを守るものであり、そして、誰かを傷つけるものであった。

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