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一人と独りの静電気   作者: 枕元
第一章 一人を選んだ少年
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ex1 裏切りのシンデレラ

 あの日、掴んでもらった手に残る温もりを、今もまだ覚えている。


 すごく力強くて、あったかくて、家族以外に初めて感じる頼もしさが彼にはあった。


 彼は、辛い日々から私を助け出してくれた。幼いながらに、「白馬の王子様」なんて言葉が頭に浮かんでいた。


 でもその王子様は、報復を受けてしまっていた。


 その報復を、「私のせい」なんて思うことはない。

 彼がいじめに遭うのも、私が悪いわけじゃない。


 全部全部、いじめる奴が悪いに決まっている。


 その考えは、今でも変わっていない。当たり前だ。

 私だって「被害者」だったんだから。


 でも、私は「シンデレラ」にはなれなかった。


 何故って。シンデレラは普通、王子様を裏切らない。


 私は裏切った。いじめる側に加担して、彼を陥れた。


 一応理由はある。脅されたのだ。

 彼をいじめれば、私のことはもういじめないと。もし逆らったらーーーーと。


 でもそれは、言い訳に過ぎない。私が裏切った事実に変わりはない。


 やがて王子様は、転校してしまった。私のかぶせた罪を背負ったまま。


 

 「さ、触んなっ!!」


 あの日振り払われた手を、私は多分一生忘れない。


 明確な拒絶を前に、私はなにもできなかった。


 彼が同じ学校に通っていることは、あの時初めて知った。

 

 髪も伸ばして、マスクもしていたが、私には一目で分かった。分かってしまった。


 向こうはいつから気づいていたのだろうか。転校生として来た時にはもう、気づかれてた可能性はある。


 1ヶ月。のうのうと生活していた自分が、情けない。


 彼のあの反応からして、多分私は避けられていたんだ。いや、避けてもらってたんだ。


 私は彼の優しさで、お目溢しされてるだけだ。


 「なんで、責めないんだろう」


 きっと彼にとって、私は憎悪の対象だ。


 私よりも何倍も長い間いじめられた。


 私はいじめられてすぐに助けてもらった。だから、期間はそんなに長くなかった。


 でも、彼を救う人はいなかった。一番そうしなければいけない私は、すでに裏切っていた。


 そして気づけば、彼は私をいじめてたことになってた。


 私がそう言ったわけじゃない。周りがそう証言した。


 それを、一言「ちがう」って言えば良かった。そうすれば、全てが明るみになって、私は正しく裁かれたはずだ。


 たとえ裏切りを許してもらえずとも、そうしなければいけなかったのだ。


 でも、できなかった。私はなにも言えなかった。

 それは黙認と捉えられ、誰もが彼を悪者にした。


 「仕方ないじゃない」


 そう、自分でも最低と理解しながら、自分への言い訳を口にする。


 怖かったんだ。またいじめられるんじゃないかって。


 短い期間だったけど、いじめられた日々は私にとって、二度と戻りたくない日常だ。


 この罪は、誰にも話していない。受け入れてくれる人なんているはずがないから。


 そしたらまた、逆戻りなんじゃないか。その可能性が、私をさらに臆病にさせた。


 わかってる。これだって言い訳だ。


 そうやって自分を「被害者」に仕立て上げ、私は自分を保ってきた。


 彼はあの一件を無かったことにしたいようだ。彼が私を責めないのは、きっとそういうことだろう。


 だったら、いいじゃないか。何せ私は「被害者」なんだから。


 そんな理屈が通らないことを、誰よりも理解しながら、そう自分に言い聞かせた。

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― 新着の感想 ―
[一言] この女やばすぎ
[一言] 何度読み返しても 酷い。 始めは彼女被害者だったのは事実ですが、 本人が苛めはする奴が悪いと言いつつ、 自分が恩人に対して、それを行い、そこから彼女は加害者・悪い奴へ。 その後も彼へ…
[良い点] 汚物視点か。 吐き気するぜ。 [気になる点] 短編版に比べて、より醜悪な人物になってるのは、彼女へのレクイエムか。 前も書きましたが、短編版に比べても、同情出来る点がほぼ無い。 [一言]…
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