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一人と独りの静電気   作者: 枕元
第6章 本音
36/75

停滞

あとがきにちょっとした宣伝があるので、見たくない方はお気をつけください。

 「あ、おはよう」

 「あ、うん。おはよう」


 翌日、登校した俺は正門のところで福村と会った。


 別に待ち合わせをしていたとかではなく、本当にたまたま。


 「昨日はありがとね」

 「や、俺も色々と話せてスッキリしたっていうか。だからまぁ、お互い様ってことで」


 実際、色々と吹っ切れたというか、自分のとるべきスタンスはしっかりと確認できた。


 「私はあんまり話せなかったけどね?」

 「それは……なんというかすまん」


 実はそうなのだ。結局板倉の乱入のせいで、本来の彼女の目的は果たせていなかった。


 「また、時間作ろっか?バイト以外の時なら、全然暇だし」

 「んーん。結果的にはあれでよかったかな」


 そう言って、首を振りながら俺の提案を受け入れることはなかった彼女だが、その表情は特に思い詰めているようには見えず、それならばと俺も流した。


 「あ、でも何かあったら、その、相談はして欲しいかな?」

 

 少々上目遣いで、そう言ってくる。その姿は、照れているようにも見えた。


 というか、俺の周り上目遣いする人多くないですか?気のせいか?


 「あー、そうだな。そうさせてもらうよ」


 そうならないのがベストだが、向き合うと決めた以上それは避けては通れないだろう。


 「あと、これだけは言っておくけど……今は大してハブられたりとかしてないから。気にしてくれるのは嬉しいけど、そこはあんまり気にしないでね?」

 「そっか。わかった」


 とは言いつつも、気にはなるけどな。多分、向こうもそれはわかってる。


 分かってて、聞いたんだ。「私は大丈夫」と、遠回しに伝えるために。


 その気遣いに、胸があったかくなる。


 「じゃ、()()()

 「うん、()()()


 俺たちはそれぞれの教室へと入っていく。不思議とこれまでの不安は、心なしか軽くなっていた。



ーーーー


 そういえば、と思い出す。今篠原と園田って付き合ってるんだよな。


 正直俺としては打算が見え透いているような気がしてならず、一応何かされるかも知れないので用心に越したことはないだろう。


 その他嫌がらせ、何かあったら対応できるように身構えていたのだが。


 特に篠原からのアプローチもなく、何も起きることはなく、6限の授業が終了して放課後となった。


 白河が訪ねてくることも今日はなかった。


 身構えていた俺にとっては少々拍子抜けだが、何も起きないというなら、それはそれで構わない。


 別に、誰かを陥れるのが目的じゃない。あくまで俺は、俺を信じてくれた福村の立場さえ守れればそれでいいのだから。


 だけどなんというか、このタイミングで嫌がらせがパタンと止むのも、どこかタイミングが良すぎるというか。


 特に白河だ。あいつは俺に恥をかかされたと思い込んでるから、面倒なんだよな。完全に言いがかりであるのだが。


 だけど思い込みは恐ろしいもので、自分の非を見えなくしてしまう。きっと彼はもう、引き返せないところまで来ているのだろう。


 とは言え放課後だ。俺はさっさと帰ろうと思い、カバンを手に取った。


 ぴろん♪


 その時だった。俺の携帯が着信を知らせたのは。


 【いつでもいいのですが、お時間ありますか?できれば会って話がしたいです】


 そんな文面を送ってきたのは、宮島だった。


 何かあったのだろうか。いや、そもそもまた話したいと彼女は言っていたし、まだ言い残していたことがあったのかもしれない。


 彼女の想いを知った今、断る理由はない。


 ただ、俺は一つ彼女にお願いをした。彼女はそれを二つ返事で了承してくれた。


 突然だが、時間は今日の放課後になった。明日はバイトがあるし、できれば早めに話しておきたかったからだ。


 ともなれば、待ち合わせ場所に向かおう。


 その前に俺は、隣のクラスを訪れた。


 「あっ、喜多見?」

 「ちょっといいか?」

 

 もちろん福村に用があってだ。


 「この後、時間あるか?」

 「へ!?い、いや、あるけど……?」


 どうしたんだろうか。いきなり慌てふためく彼女。


 俺は本題に入ることにした。


 「実はさ、この後ある人と会うんだけど、くる?」

 「え、あぁそういうこと。てっきり」


 「てっきり?」

 「いや、なんでもないから!で?どんな人なの?」


 はぐらかされてしまったが、仕方ない。俺はご要望通りに宮島のことを少し説明する。


 「行く!でも、向こうは大丈夫なの?私が行っても」


 宮島のことを説明し終わり、彼女はすぐにそう答えた。だけど、向こうの都合が気になるようだ。


 「大丈夫。確認は取ったから」

 「なるほど、じゃあ安心だね」


 というわけで、俺と福村は二人でその場所へと向かうこととなった。


 福村と俺はバイト先へと足を進めていた。やっぱり話し合いをするなら、あそこが一番都合がいいからな。


 その途中、福村は気づいていなかったようだが白河と目が合った。


 十中八九なにか言われるだろうと身構えていたのだが、やつは俺に鋭い視線を向けただけで何もしてこなかった。

 

 意外だった。あいつの狙いは福村だから、もっと突っかかってくるものだと思ってたんだが。


 とはいえ、このまま現状維持が一番なのに変わりはない。向こうから何もしてこないのなら、こちらからは何もしないのが一番だ。


 「どうかした?」

 「や、何でもないよ」


 考え事にふけっていたら、隣を歩く福村にそう聞かれる。福村に話すことでもないと思い、俺は適当にはぐらかす。


 でも、そんな態度がお気に召さなかったようで。


 「ふーん。そうやって隠し事しちゃうんだー」

 

 なんて困ることを言ってきた。


 「別に隠し事ってわけじゃ」

 「ふふっ。冗談だよ。困らせちゃった?」


 からかわれたようだ。困っていたのなんて、わかってるくせに。


 「いいから行くよ」


 そう言って少し歩を速める。


 福村は特に文句も言わずについてきた。


 そんなこんなで到着。店内を見渡す。宮島はすでに席についていた。向こうもこちらに気づいたようだ。


 「え、加奈?」

 「もしかして、まいちゃん?」


 二人はお互いを見て、お互いに驚いたようにそうつぶやいた。


 あ、そっか。もしかしてこの二人って。


 「ちょっと、喜多見こっちきて」

 「えっ?ちょ、福村!?」


 急に福村が、俺の腕を引っ張って店の外まで連れ出した。


 「なんで加奈がここに居るのよ!」

 「いやなんでって、彼女が今日会うって言ってた人だし、てか、もしかして知り合い?」


 「そうよ!小学校が同じで……その、中学では疎遠になっちゃったけど、仲が良かったのよ」

 「あーなるほど」


 仲がいい云々はともかく、知り合いだっていう可能性は普通に考えられることだったな。福村は中学が園田たちと離れたと言ってたし、それまでが一緒でも全くおかしくない。


 「そ、それで、その」

 「ん、どうした?」


 福村は何か言い淀むようにしてもじもじとしていた。


 「あの子とどういう関係なのよ。その、仲いいの?」


 あーそっか。まだどんな人に会うかって話してなかったな。一応顔を合わせてからのほうがいいかと思ったんだけど、知り合いならまぁいいか。


 どちらにせよ、福村には知ってもらうつもりだしな。


 「例の証拠だよ。まぁ、詳しくは三人でな?」

 「え、証拠?……ああ!そういうこと!」


 明らかに動揺している福村。そこには安堵も見て取れた。何を危惧していたんだ?


 あ、もしかして?


 「別に付き合ってるとかじゃないから」

 

 何に向けての言い訳なんだと思いながら、俺はそう言った。でも、俺の予想はおそらく当たっていたようで。


 「ふーん。な、ならいいけど」


 ならいいけどって、聞きようによっては、だよなぁ。


 ここで余計なことを言って機嫌を損ねるのも嫌だしな。


 そうやって俺は目をそらした。


 「とりあえず。入るぞ」

 「ん、そうだね」


 そう言って俺と福村は、宮島のいる席へと向かっていった。

ぜひ!下の☆☆☆☆☆から評価の方をお願いします!


 


で、宣伝なんですけど。短編書いてみました。重すぎず軽すぎないやつです。よければどうぞ!

「失声少女はかく語る」https://ncode.syosetu.com/n2335ha/

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― 新着の感想 ―
[一言] 福村、最高です
[気になる点] 自分一人だけなら動かない選択も有るけど、既に主人公の周囲には新しい人間関係出来てるんだから、もう少し能動的でないと屑どもに先手打たれ放題になるが。 [一言] 人に会う際に、もう一人連れ…
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