恐れる者
第五章ラスト!
水面下で、何かが動いているらしい。
はっきり言って、俺は何も関与していない。「この件」に関しては。
最近は「あの一件」のことも忘れかけていたし、何なら「あいつ」の名前だって久しぶりに思い出したぐらいだ。
もう、終わったことだと思ったんだが。
どうやら何かが起こっているらしい。特に目撃情報だとか、「あいつ」の噂とかが流れるのは都合が悪い。
暴かれるわけにはいかないのだ。
だけど、そんな不穏な流れはすでに出来上がってしまっているようだ。実際に会ったりしたわけではないのに、どうしようもなくそれを感じ取ってしまった。
どうするべきだろうか。いや、どうにかするべきだ。
そう思った俺は、手を打ってしまった。今思えば、かなり早計だったと後悔する。
それと同時に、仕方のないことだったと思う。
だってそうしなければ、「あいつ」の立場が悪くなければ、おそらく俺も道連れだからだ。
だからあの判断は正解なはず。
俺は不安に駆り立てられている心を隅に追いやり、自分の優位性を保つ。
それが対外的に意味をなさずとも、今この瞬間の心の平穏のために、俺は自分に言い訳をする。
大丈夫、悪いのは俺じゃない。元を辿れば、他のやつ。
この先俺は、何かしらの追加のアクションを起こすべきだろうか。俺は今一度自分の立場を再確認する。
大丈夫。今ならまだ部外者だ。関与はしたが、大したことじゃない。だってもともと、それはそういうものだったから。
少し脚色して、それを流しただけ。
そして過去の出来事は消せないが、幸いなことに「あの一件」はすでに結論が出ている。今更裁かれることはないだろう。
そうだ、俺はまだ傍観者でいられるはずだ。
だってこのままなら、きっと俺の名前は浮上してこない。
そうならないために、わざわざリスクを冒したのだ。
きっとうまくいく。あの時だってそうだった。
「大丈夫だ」
何度目かわからないその呟きは、誰の耳にも届かない。
それでも不安に駆られる俺は、そう零さずにはいられなかった。
ということで、伏線を挟みつつの第五章でした!
章題は「その救いは誰のものか」でいきたいと思います。
章としては、主要人物それぞれの方向性が定まった章となりました。
もちろんそれは迷いも含めて、ですが。
次章では、物語も進行させていきます(遅い)。
前途多難、問題はまだまだ山積みではありますが、どうぞこれからもお付き合いいただけると嬉しいです。
それでですね。ブックマーク及び評価によって加算されていくptがですね、この度何と!3万ポイントを突破しました!
この3万ポイントっていうのは、作者が密かに目標としていた数字でありまして、皆さんの応援のおかげさまで辿り着くことができました!本当にありがとうございました!
長くなりましたが、これからもどうぞよろしくお願いします!