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一人と独りの静電気   作者: 枕元
第五章 その救いは誰のものか

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34/65

その瞳に映る姿は

お ま た せ

 嵐は突然やってくる。それはもう、事前予告なんてありはしないものだ。


 予測ができる分、台風の方がましだとさえ思えてくる。


 ここで言う嵐とは、もちろん天気の話ではない。


 「おい、ちょっとツラかせや」


 朝っぱらから俺に絡んできたのは篠原だった。


 その後ろには白河もいる。


 「嫌だけど」


 そんな誘いにホイホイついていくわけもなく、俺は堂々と断ってみせる。


 「あん?拒否権があると思ってんのかよ」


 逆に何でないと思ってんだよ。何だ?考えることをやめているのか?


 「あるに決まってんだろ。んな時代錯誤なこと言ってんなよ」


 令和だぞ。拒否権ぐらいあって然るべきだ。いや、これ時代関係ないな。


 ともかく、一歩も引く気はないので語気を強めてはっきりとそう言う。


 さて、どうでるか。


 「いいのか?俺は知ってるんだぜ?昔お前が何したのかとかさ?」


 あぁ、そういやそうだった。


 今篠原は園田と付き合ってるんだったな。色々聞かされててもおかしくない。


 まぁ俺にはどうしても、園田に思惑があるって勘ぐっちゃうけどな。


 そしてそれは多分間違ってないのだろう。


 「関係ないね」


 だってそれ、事実じゃないし。


 てか今更脅しって言っても、お前ら十分暴れてるからさ、もう脅しにもなってないんだよね。


 「ふーん。もしかしてただの脅しだと思ってる?だったら遠慮なく」


 そう前置きして、篠原は周りに聴こえるように言い放つ。


 「お前確か言ってたよな?本人に聞けってな?聞いたぞ?お前が恵美のことをいじめてたってなぁ!?」


 篠原の発言に、教室がざわつく。


 まぁ、そうくるよな。なんたってお前は彼氏さんだもんな。


 「やっぱり本当だったんだ」「さいてー」


 何て言葉が至る所から聞こえてくる。


 以前とは違う彼氏という存在の言葉は、さぞ信憑性の高いことだろう。


 これでよっぽどのことでなければ、俺の罪は確定してしまうだろうな。


 少なくとも、無関係な奴らからすれば。


 さて、ここで声を上げるのは簡単だ。


 俺はやっていないと。これは誤解なんだと。


 そう言うのは簡単だ。


 だけどそれは悪手だろう。宮島というカードは、あくまで園田たち当事者にしか有効じゃない。


 結局何を言ったって、俺に対する疑惑は拭えないのだ。


 仮に拭えたとて、わだかまりは残る。


 それがいじめの本質。遺恨が本当の意味で無くなることなんてない。


 見て見ぬ振りができるなら、それに越したことはない。誰だって面倒ごとに首を突っ込みたくないから。


 見ないフリをするのも共犯って聞いたことがある。

 そんなの嘘だ。100%いじめた奴らが悪いに決まってる。


 自分可愛さにそうすることが、悪いことなんて思わない。


 そして残る結果は孤立だ。腫れ物みたいに扱われるだけ。本質的に解決は訪れない。


 辿る結果が同じなら、俺は違う道を選びたい。


 勝った負けたで語ってしまうと、園田が転校してきた時点で負けている。


 勝利条件を思い出せ。もっとも、勝利なんて綺麗なものではないけれど。




 きっと怒られるんだろうなぁ。たくさん文句を言われるに違いない。


 だけど俺は決めた。やり通すと決めた。だから間違えない。


 決してこれは、自己犠牲なんかじゃない。


 「もしそうだったとして、お前は俺にどうしてほしいんだよ?」


 告げる。何事もないように、できるだけみんなに聴こえるように。


 まるで自分は悪くないと言わんばかりに、傲岸不遜に言い放つ。


 「んなっ、開き直りやがった……」


 きっと俺の苦しむ姿が見たかっただろう。困り果てる姿を望んだだろう。


 チラリと篠原の隣のやつの表情を伺う。


 「……」


 そこには何ともいえない表情をする白河の姿があった。

 

 薄々思ってたことだけど、これはもしや?


 どちらにせよ白河がそちらにいる以上、俺の負けはない。


 「話は終わりか?」

 

 俺は座ったまま、見下ろす位置にいる篠原にそう言う。


 篠原の目には、俺の姿がさぞ気味悪く映ったことだろう。


 追い詰めるはずが、こうも堪えてないのだから。


 「最低のクズだな、お前」


 そう言い残して、篠原は教室を出た。それについていく形で、白河も。


 思い出したかのように、喧騒を取り戻す教室。しかし視線は俺に集まったままだ。


 辛くはなかった。それはもう、強がりでも何でも無くだ。


 こんな茶番に、どうして俺が付き合ってやらなければいけないのだろうか。

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あ、あと350万PVあざです!

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― 新着の感想 ―
[一言] 周りが信じる信じないと反論しないのは全く別問題だよ ここでやってないと否定しないのは黙認してるのと同じ ましてや開き直るなんてそれこそ悪手もいいとこ 自分を守ることを放棄して信じたいと思って…
[一言] 認めるのと同義の返答はいかがなものかと。 相手が勝手にそうとるだろうと予測もできるんだから、明確な否定の表出をしないのは園田とやってること同じでは。 潜在的だったその他大勢の敵をわざわざ正式…
[一言] 喧嘩をするなら真っ向から買うぞって宣言だねえ。 此処でやってないと言った所で実際はやってるのではと疑惑が残るし。 これで園田が表舞台に登場せざるえなくなるかな。 ある意味でいじめの中心人物…
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