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一人と独りの静電気   作者: 枕元
第四章 悪意と失意のその先で

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一歩

 「ねぇお兄ちゃん、やっぱり何かあった?」

 「や、別に何にもないって」


 一昨日、俺が宮島と会って帰宅してから、幸はこんな感じだ。


 「無理はしないでね?」

 「わかったよ」


 なんだか幸には、隠し事ができないようになってしまった気がする。


 多分俺が隠すのが下手とかではなく、彼女の察する能力が高いのが原因だろう。


 とはいえそれは不快なものではないし、妙なくすぐったさがあるものの、むしろ心地よいものに思えた。


 (それに、無理してないのは本当だしな)


 たしかに「何か」はあったけど、それは必要なことだった。


 俺が前を向くために、宮島との対話は避けて通れないものだったと思う。


 「じゃ、私日直だから先にでるね!」


 そう言って幸は学校へ向かった。


 (ほんと、幸には頭が上がらないな)


 俺にはもったいないぐらいに、よくできた妹だと思う。


 最近の俺は、幸に頼ってばかりだ。


 俺はそれに応えたい。どんな形でも、俺が納得できる形で、だ。


ーーーー


 自転車を走らせ登校した俺を迎えたのは、一枚の写真だった。


 俺の机の上に乗せられたそれは、一昨日宮島と店で会った時の写真だった。


 (めんどくせ)


 胸中でいつぶりだかの毒を吐き、俺は携帯を使ってその光景を写真に収めた。


 いつか役に立つかもしれない。保険のようなものだ。

 というか、今までのもの撮っておくべきだったな。


 まぁ、過ぎたことを考えても仕方ない。


 写真を撮り終え、俺はカバンに写真をしまった。


 その写真では、俺の顔が見えない代わりに、宮島の泣き顔がはっきりと映っていた。


 そこに俺は作為めいた悪意を感じた。


 (まさか嵌められたのでは?)


 一瞬そう思ったのだか、俺は即座にその考えを振り払った。


 もしあの涙が嘘なのだとしたら、もうその時は俺の負けでいい。


 何をもって負けなのか、そもそも勝負なのかは一考の余地ありだが、俺は彼女の気持ちは受け止めると決めたんだ。


 それが間違いだったら、その時はその時。全部投げ出して逃げてしまうとしよう。


 ともかくだ、別にこの写真が出回っても問題はない。仮に聞かれたら、宮島ご本人に説明をして貰えばいいのだ。


 問題はなかったと。きっと頼めば、彼女はそうしてくれるだろう。


 そもそも聞いてくるような友人はいないし、あるとすれば奴らぐらいか。


 ともかく、俺は積極的に問題を解決しにいく気はない。


 あくまで、現状維持ができるならそれでいい。


 仮に園田の罪を暴露したとて、俺にとってはなんの得にもならない。学校生活が気まずくなるだけだ。今でも十分居心地が良いとは言えないが。


 気がかりと言えば、福村のことだけ。


 昨日は学校に来ていたようだが、そうだな、一度話をしたほうがいいかもしれない。

 現状を踏まえ、問題がないか確かめたほうがいいかもだ。


 あるいは、彼女になら、なんて勝手なことを思ってしまう。


 それが許されることじゃないことも、同時に理解しながら。


 (想像以上に、どうでもいいや)


 自分の心が驚くほど揺らいでいない事実に少し苦笑い。大事なのは、大事なものを間違えないこと。


 写真の件も、白河の件も、俺にとってはそうじゃないと。ただそれだけの話だ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 相手が無抵抗だから弱いと勘違いする輩は老若男女問わずいますよね。 しかし普段怒らない人が激怒したらそれはもう怖いなんてもんじゃないのに。遊び感覚で彼をいたぶっている連中はわかっていないだろう…
[一言] 評価をしようと思ったんですね。もちろん☆5で。見てみたら過去の僕が既に押してました。どうしましょう。
[一言] 暴露しても得はないというか、現在進行中の不利益、いやがらせをなくすのに避けられないはずなんじゃが。 それも含めて喜多見の容赦しないはいち読者目線では信用度は既にないなぁ。 アホ2匹が突っか…
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